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クラスの失踪

いつも誤字、脱字報告ありがとうございます。

毎回毎回なにかしらあって、申し訳ありません。

こういう時くらいは感謝の意を込めなくては。


やっと異世界組の時間軸が同じになります。

 ここは地球でもない、天界でもない、異世界【アナムズ】。

 天上院輝(てんじょういんひかる)率いるクラスメイトはここまで様々な試練を乗り越えてきた。



「もう何日経ったんだろう...」

 


 城の見晴らしのいいテラスで、天道美紀(てんどうみき)は一人小さく呟く。    

 


「またここにいたのですか、美紀」

「ルリ...」



 後ろから声をかけられ、美紀は振り向く。

 そこには、この国の王女であるルリアーノが静かに歩きながら、美紀の下へ歩み寄る。

 美紀はルリを見るも、すぐに前を向いた。



「ここからだと全体が見えるから」



 美紀は時間が空いた時は、毎日ここに来ている。いつ天上院が帰ってきても分かるように。

 天上院が国を出てから半年以上が経つが、いまだに彼は帰ってきていない。

 最初はそれを聞いた美紀は涙を流しながら『どうして、どうして....』と塞ぎこんでいた。



 だが、同じクラスメイトの支えと、ルリアーノからの言葉により、こうして立ち直ることができた。

 今ではこうして、美紀は天上院を待ち続けている。

  

 

 ただ待ち続けているわけではない。

 美紀はこれまでかなりの修行をつけてきた。美紀だけでなく、クラスメイト達も同様に修行を重ね今日に至るまで生き抜いてきている。



「もう半年以上も経ちますね」

「そうだね.....」



 美紀の横に並び、ルリアーノは一緒に外を見る。

 もうそんなに経ったのか。この世界の暦が地球と変わらないから分かりやすく、美紀は心のなかで思う。



 するとちょうどその時、下からなにやらカキンッ!カキンッ!といった金属音と叫び声が聞こえる。

 見てみると、訓練場でクラスの男子達が特訓をしていた。



「まだまだやるぞ!!お前ら!!」

「当たり前だ!!」

「俺はもっと強くなる!!」

「そして、彼女をつくる!!」

「やるぞ!!」

「「「おぉー!!!」」」



 相変わらずだな。

 色んな意味で燃えている彼らを見て、美紀は思わず笑みを浮かべた。

 異世界召喚されてから約一年半、彼らや他の皆も努力をしてきた。



 理由はそれぞれあるが、そのかいあって全員レベル100以上、美紀に至っては他より頭一つ飛び抜けて121だ。



 そして、魔族の侵攻もこれまでなかったわけではない。

 それほど大きな動きがなかったのもあるが、天上院が不在の間不安はあったものの、ここまでなんとか乗りきってきている。

 皆強くなったが、魔王を倒しに行こうとは誰も言わない。

 なぜなら、魔王を倒すときは天上院が来てからだと、全員思っているからだ。



「皆さん、頑張っていますね」

「そうだね、それもこれも、天上院君のお陰かな」



 彼が国が出るまで残していったものは、美紀達にとっては大きいものだった。

 訓練の厳しさや、魔族やモンスターを倒すことへの恐怖、不安。

 最初は誰もが萎縮するものなのに、天上院だけは違った。


 

 これらがあったのにもかかわらず、天上院は美紀達の前に立ち続けた。

 常に他より最前線で戦い、諦めないその姿は美紀やクラスメイト達に大きな勇気を与えている。

 本人は謙遜するだろうが、美紀達からしたら天上院こそが真の勇者だ。



(早く帰ってきてね、天上院君......)


 

 胸の内でそう願う美紀。

 するとその時、



「ん?あれは、なんですか?」



 ルリアーノがなにかを見つけたのか、城壁の向こうをじっと見つめた。

 ルリアーノの言葉を聞き、美紀も遠くの方を見てみると、なにやら空中に小さな黒い点が見える。

 目を凝らしてよーく眺めると、その黒い点は徐々に大きく広がり、やがてそれはなにかの大群であることが分かった。



「あれって.....」



 間違いない、モンスターだ。

 距離は相当離れてるから分かりづらいけど、モンスターの大群が押し寄せてきている。

 


「ルリ、皆を城壁の外に集めて」

「分かってます」

「私は先に行ってるから」



 この程度で動揺なんてしない。モンスター大群が来るのはよくあることだ。

 ルリアーノに迅速に指示を伝え、美紀は一足先に城壁の外へ転移した。

 天上院君がいない間は、私が、私達が守る。

 美紀はそう意気込んだ。






――――――――――――――――――――






 城壁の外に着くが、まだモンスターの大群はあまりよく見えない。

 城から眺めていてよかった。これなら、早めな対処ができる。



(偵察に行こう)


 

 モンスターはまだ遠い。もう少し近くで見てみようと美紀は転移で近づく。

 ある程度近くまで来て見つからないように岩陰に隠れながら、美紀はモンスターの様子を伺う。

 どうやら、敵は全部空を飛ぶタイプモンスター。

 蜥蜴にトンボの羽が生えた少々気持ち悪いモンスターだが、美紀はこいつらを知っている。



 これなら私達で十分対処できる。

 数は大量にいるが、今の私達なら倒すのは十分可能だ。

 確信した美紀は皆に伝えようと一旦戻ろうとした時、――――――――大群の目の前に一人の人物が立った。



「え?」



 まさか、あんなところに人がいるとは思わなかった。

 薄汚いローブを着ているせいで顔は分からないが、とにかく早く助けなくては。

 そう思い美紀は転移で行こうとしたが、突如体が停止したように固まった。



(あ、あれって......)



 突然、ローブの中から一本の剣。

 片手で上へと掲げられたそれに、美紀は見覚えがあった。

 忘れもしない。あの人のものだから。



 その瞬間、掲げられた剣に目映い光が結集していく。

 光を吸収しているが如く、剣は徐々に光の強さを増していき、まるで剣が伸びたかのようにまとわりついた。



 長く、長く、どこまでも長く。

 やがてそれは、天を突き抜けるほどの大きさとなり、巨大な光の柱ができあがる。

 近くにいた美紀は眩しさに目を細めたが、注目してるのは剣ではなくローブの人物の方だった。



 もはや、モンスターの大群なんてどうでもいい。知りたいのはあの人物が誰なのかどうか。

 美紀の目にはもうローブの人物しか映っていない。



 その人物は剣を横に構え―――――優しく水平に流した。



 そこからは一瞬だ。

 水平に流された剣から伸びた光はモンスターの大群を呑み込み、浄化されていくように消滅していく。

 衝撃で辺りは土煙や風が巻き起こる。

 剣が振り抜かれると、役目を終えた光は瞬く間に消えていった。



 光が消え、そこにはもうモンスターの姿はない。まるで最初からそこにいなかったかのように、跡形もなく消えていた。

 圧倒的な光景ではあるが、今の美紀の視線はローブの人物に釘付けだ。

 

  

 衝撃で風が巻き起こったせいか、フードが取れ、姿が露になる。

 その人物の素顔を見て、美紀は目を見開いた。

 この世界では珍しい黒髪に、誰もが魅了する整った顔立ち。

 自分や仲間の前に立ち、いつだって皆の目標でいてくれた、美紀の大切な想い人。



「......天上院、君」



 この美紀の口から無意識に出た小さな言葉に応えてくれたのか、天上院は近くにいた美紀に気づいた。



「やぁ、美紀。元気そうだね」



 自分を見て懐かしそうに天上院は微笑む。

 その笑顔、声、目の前にいるのが天上院だと理解していき、美紀の心臓の鼓動が速くなるのを感じる。

 天上院を見て放心していた美紀だが、次第に目に涙が溜まり、駆け出した。



「天上院君!!」



 嬉しさと喜びを胸いっぱいに広げ、美紀は転移で天上院に思いっきり抱きついた。

 いきなり抱きつかれ、天上院は少し戸惑ったが優しく美紀を受け止め、



「ただいま、美紀」



 ただいまの挨拶を告げる。



「お帰り、天上院君」



 涙を流しながら、美紀は迎える。

 言いたいことは色々とあるが、今はこの喜びを感じていたい。

 美紀は暫く天上院に抱きついたままでいた。

 


「あー!天上院!!」



 すると、ルリアーノからの要請で駆けつけたクラスメイト達が天上院を見て声をあげた。

 あの光を見て、急いできたのだろう。息が少し荒れているが、帰ってきたリーダーを目にし疲れを忘れ全員で駆け寄った。



「お帰り!天上院君!!」

「今までどこ行ってたんだよ!!」

「修業はどうだった!?強くなれた?」



 帰ってきて嬉しいのか、皆嬉しそうに天上院を囲む。

 久しぶりに見た仲間の顔に、天上院も笑みを浮かべ、全員に告げる。



「皆、ただいま!」

「「「「お帰り!!」」」」

 


 挨拶の次に、天上院は謝罪を述べた。



「皆、今まで連絡もなしにごめん。こんな遅くなっちゃってごめん」 

「いいよ!いいよ!」

「気にすんなって!」

「俺らもお前がいない間に強くなれたからな!」

 


 暖かいクラスメイト達の言葉に、天上院は感激を覚える。

 抱き寄せていた美紀も笑顔で頷き、天上院は手に持っていた剣を天に向かって突き上げた。



「皆!!長い間待たせて悪かった!僕達は強くなった!もうあんな思いはさせない!もう魔族の好きにはさせない!―――勝つのは僕達勇者だ!!」



 天上院の熱の入った言葉に全員「「「おぉおぉおおお!!!」」」と拳を突き上げる。

 これですべての準備は整った。

 


「行こう!!魔王を倒しに!!」



 その時だった―――――――――



「っ!?」 



 突如として、天上院達の足下に魔法陣が現れた。



「お、おい!?」

「これって......」

「もしかして......」



 出現した魔法陣を見て、何人かは声を出して顔を見合わせる。  

 他の人は、声を出さないものの驚愕の表情をしていた。 

 なぜなら、この魔法陣には見覚えがあるからだ。



「天上院君......」

「うん......」



 天上院と美紀もこの魔法陣を見て勘づいた。

 特に、転移系の魔法を使う美紀からしたら、一目瞭然だろう。

 この魔法陣は――――――天上院達が異世界召喚された時と同じ魔法陣だ。



 この魔法陣は一度掛かると動けない。

 天上院達は身動きが取れず成す術なく魔法陣に捕まり―――――その場から姿を消した。



 異世界召喚から、約一年半。

 天上院率いる勇者一行は、この異世界【アナムズ】から行方不明になった。

おまけ


【説得】


「美紀大丈夫かなー?」

「最近部屋に籠ってたのを王女様が引きずり出したらしいけど、どうやったんだろうね?」

「きっと王女様の熱い言葉が天道に届いたんだろうな」

「あいつら仲良かったし」   

「ふんふーん♪(ルリから天上院君の使いかけタオル貰っちゃったー)」 



※おまけは作者の悪ふざけの場なのでお気になさらず。



――――――――――――――――――



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