結局はこうなるんだな
最近投稿ペースが遅くなっている......。
いつか、戻したいな...。
「落ち着いたか?」
「「はい.......」」
俺が仲介に入ったことにより場は収まり、さやと黄花は俯きながら小さく返事をする。
全く、人が寝てる間になにをやってるんだか。
呆れる俺に、二人はしゅんとしている。
「いやはや、変なことになったね」
「お前が原因だからな」
他人事のように言う夏蓮に、俺はそうツッコム。
話を聞けば、夏蓮が変なことを吹き込まねばこんなことにはならなかった。
人で遊ぼうとするからこうなる。
「というか、誰が男好きだ、誰が。変な想像するなよ」
「違うの?」
「当たり前だろ」
なんでそこで信じてるんだかこの人は。
疑うさやに俺は即答すると、さやは安心したように息を吐いた。
「よかったー。夜兎君が男好きじゃなくて」
「よかったね」
ホッとするさやに夏蓮はポンッと肩に手を置く。
どこで間違えたらそうなるんだか。
喜ぶ二人を見て俺は頭を抑え、はぁっとため息をつく。
「それで、黄花はなにしに来たんだ?用があったんだろ」
俺がそう聞くと、黄花は思い出したのか「あっ」と言った途端、急に暗い表情をしだした。
忘れてたんかい。
「実は、家の子達のことなんですけど」
家の子達といえば、あの小狐達のことだろう。
夏蓮が芸を教えて、なぜかそれに目覚めてしまったのだが、どうかしたんだろうか。
「あれ以来、夏蓮様から教わったあれを大層気に入ったらしく、毎日練習してるんです」
それを聞いた瞬間、俺は夏蓮の方を向いたが、それと同時に夏蓮は一気に視線を逸らした。またお前か。
語る黄花の表情は疲労に満ち「注意しても全然止めてくれないし.....」と小さく愚痴を溢している。
ストレスが溜まっているのだろうか。可哀想に。
「最初はまだよかったんです。でも、やっていくうちに熱が入ったのか毎日夜遅くまでやろうとするし、なんかやっているときの気迫が怖いし......」
相当苦労したのか「もう、嫌です......」と両手で顔を覆い、今にも泣きそうだ。
本当に可哀想だな。そんなことになってたとは。
「なので、どうにかあの子達に止めてもらうために夜兎様に知恵をお借りしたいと思いまして」
事情を聞き終え、俺は先ず夏蓮を見た。
流石にこれは夏蓮もまずいと思ったのか、気まずそうに目を逸らしている。
「分かった。どうにかしよう。なっ?夏蓮」
「.........はい」
ここまで言われたら反論も出来ない。俺に念を押され、夏蓮は観念した。
「ありがとうございます。夜兎様」
「元はといえばこっちの責任だ。礼を言うことじゃない」
頭を下げる黄花にそう言うと、さやに目を向けた。
「どうせなら、さやも来るか?」
「え?、ど、どこに?」
「可愛い狐が沢山いるところ」
話に追い付けてないさやに、夏蓮は短く説明する。
可愛い狐が沢山いるところと聞いて、さやは興味を引かれたのか行きたそうな顔をしているが、同時に少し遠慮がちになった。
「えっと、私も行っていいのかな?」
「どうぞ、ご一緒に来てください」
遠慮がちになるさやに、黄花はどうぞどうぞと促す。
話は決まった。後はあれを渡すだけだ。
そう思った俺は、さやにあるものを手渡そうとする。
「さや、手を出してくれ」
いきなり、手を出せと言われ、さやは「手?」と言いながら言われるがままに両手を差し出す。
その手の上に俺は、なにも持っていない手をかざす。
すると、なにも持っていない手から突如銀色の腕輪がポトリと落ちてきた。
「これ.......」
「一つしかないのは不便だろ」
俺がさやに贈ったのは、夏蓮と同じ魔力を底上げする腕輪だ。
造り方は前と同じで、一度【魔導具生成】のスキルを造ってから作成する。
まぁ、また制約でスキルは消えたけど。そこはしょうがない。
これがあれば黄花のような妖怪が見えるようになる。
さっきから同じ腕輪を二人で持つのは面倒だろう。
手品のように出すそれに見ながら、さやは驚いているが、これでもう大丈夫だな。
「それじゃあ、移動するから全員掴まれ」
全員に指示し、三人とも俺の肩を手で掴んだ。
どこまでかは分からんが、まぁ夏蓮がいればどうにかなるだろ。
そう楽観視しながら、俺は小狐達がいる異界に転移した。
ーーーーーーーーーーーーーーー
.........なんじゃこりゃ。
転移して先ず最初に、俺は思った。
この光景には、さや達もびっくりしているようで唖然とし、見慣れた黄花はため息をついている。
周りは木々に囲まれ、中央には古びた神社。
その中で一つだけ異質さを放っているそれに、俺達はただただ呆然としていた。
「いくよー!せーっの!!」
「「「はい!!!」」」
一人の号令により、全員が息ぴったりに合わせて動く。
その動きに無駄はなく洗練され、まるで幾度となく特訓を重ねてきたような迅速さだ。
驚異的なシンクロ、華麗な動き。
この一連の動作で作り出されたのは、三、四人で手を繋ぎ横に限界まで広がる組体操でお馴染みのあれ。すなわち、扇だった。
ただ、扇は扇でも、人の上に人が乗って一段目二段目と重なっている、めちゃくちゃでかい扇だ。
あれもあれだが、その前にさぁ......。
何て言えばいいか分からず、俺は言葉に詰まる。
人間離れしたこの扇にも驚きだが、先ずその前に驚くべきところがある。
「...あれ、誰?」
指を差しながら、俺は問う。
今扇を作ってるのは、小狐達じゃない。
幼稚園か小学校低学年くらいだろうか。着物を着た小さな子供達が組体操を行っている。動きが異常だけど。
あんなのここには居なかったよな。
そう思う俺に、黄花はげんなりした様子で応えた。
「あれは、家の子達です」
黄花の言葉を聞き、俺は「え?」となり黄花の方を向く。
あれが、あの狐達なのか?どう見てもただの子供だろ。
にわかに信じられない話に俺は疑ったが、その時一人の子供がこちらに気づいた。
「あ、黄花様!!」
その言葉を皮切りに、他の子供達も続々とこちらに気づいた。
「あ、ほんとだ!」
「人間さんもいる!!」
「連れてきてくれたんだ!!」
なんか集まってきた。上段から順に降りながら子供達は俺達の周りを囲みだす。
よく見たらこいつら、頭に狐の耳、お尻に尻尾がある。黄花と同じだ。
「この子達も私と同じ人型に変化出来るんです」
そう言うと、黄花はパンッと手を叩き、子供達の視線を集めた。
「皆さん、一度狐の姿に戻ってください」
「「「はーい!!」」」
黄花の指示に子供達は元気な声で返事をすると、子供達の体が一斉に光だした。
うわ、眩しい。
一人だけならまだしも、数十人一辺にとなると眩しく、あまり目を開けられない。
光に包まれた子供達の姿は徐々に小さくなっていき、光が消えた頃には小さな狐へと変化を遂げた。
本当に狐に戻った。
そういえば、前に助けた狐のステータスに【変化】があったな。
変化の姿を見せられ、俺は納得をする。
いきなり姿が変わり夏蓮とさやは驚いていたが、すぐに慣れ二人ともしゃがみこみ小狐を撫でたりと遊びだす。
「人間さん!!またあの遊び教えてー!!」
とうとう言ってきた。
一匹が夏蓮にせがむのを見て、俺はそう思う。
他の狐達も口々に「教えて教えてー」と合唱の如く騒ぎ出し、俺は夏蓮にそっと囁いた。
「説得頼むぞ」
「はいはい」
気乗りしないのか夏蓮は嫌そうに呟いた。
「ごめんね。それは出来ない」
夏蓮に断られると、小狐達は「えー!?」「なんでー!!」と言いながらまた違う意味で騒ぎ出した。
駄々をこね始められたな。
嫌だ嫌だと喚く小狐達に夏蓮はどうにか諦めて貰おうと、説得を試みる。
「えっとね、みんな、あれがそんなに気に入ったの?」
「うん!!」
「とっても!!」
「そっかぁ......でもね、あんまりやっちゃ駄目」
「なんでー?」
「楽しいのにー?」
「駄目なものは、駄目」
躾をするような強めな口調で夏蓮は言う。
それには小狐達も夏蓮の言葉が効いたのか、悲しげにペタンと耳が折れた。
これは上手くいきそうだ。小狐達の反応を見て俺はそう思っていると、今度はつぶらな瞳になる。
「おねがーい」
「だめー?」
キラキラ光るような純粋な眼。
今にも泣きそうな悲しげな顔で懇願され、夏蓮は首を横に振れずに「え、えと...」と戸惑っている。
あ、やばい。なんかこれどっかで見たことあるな。
無人島でもこれと同じような展開をメルとでしたのを思い出し、俺は横で不安そうにしてる黄花に話しかけた。
「これは、少しまずいな」
「どうしましょうか」
どう返したものかと困っている夏蓮を見ながら、俺と黄花は相談する。
「最悪、俺がこいつらの記憶消すけど」
「いや、それは酷すぎませんか.......」
初めからなかったことにすれば、万事解決な気もするが。
記憶を消すのは気が引けるのか、黄花に止められ俺はどうするかと頭を捻る。
「だ、だから、あれを教えるのはもう駄目で......」
「やっていいでしょー?」
「教えてー」
そろそろやばいな。甘えた声ですり寄られ、夏蓮の声にはもはや先程の覇気はない。
もう持ちそうにない。このままでは夏蓮が折れてオーケーしてしまいそうだ。
「やっぱり、記憶消した方が早くないか?」
「一旦そこから離れてください、夜兎様」
なんか考えれば考えてくうちにそう思えてきた。
悩む俺と黄花だが、なにやら隅の方で賑やかな声が聞こえる。
あれ?そういえばさやは?
小狐と遊んだとこから見てないと思い、俺はさやの方を見てみると、
「はーい、そっちいったよー」
「わーい!」
なにやら一匹の小狐と遊んでいた。
なにしてるんだ?こちらに背を向けなにかをしているさやが気になり見ると、ボールを使って遊んでいた。
ゴムボールだろうか。それを転がして小狐と遊んでいる。
なんか微笑ましいな。
それを見て面白そうと思ったのか、また何匹かさやの下に集まり出していた。
「さや、それどうしたんだ?」
「これ?今日夜兎君家行くときに、もしロウガちゃんと遊ぶときに使おうかなって思って鞄に入れてきたの」
そんなの持ってきてたのか。
小狐達がコロコロと転がしながら遊ぶそれを指差し、さやは言う。
ボール遊びが面白そうに見えたのか、次々と他の小狐が集まり出し、遂には夏蓮と話していた小狐達までもが向こうに行ってしまった。
気づけば、全員がボールに夢中になっている。
「あははー!!」
「おもしろーい!!」
「前のよりこれの方がいい!!」
どうやら、完全にお気に召したようで、夏蓮は腑に落ちないのか「えー...」と言いながらなんとも言えない顔をしている。
子供の気は変わりやすいというが、本当に一瞬で変わったな。
「もう、これでいいんじゃないか?」
変な組体操よりも確実にこっちの方がいいだろう。
「みんなー、喧嘩しないで順番にね」
「「「はーい!!」」」
優しく注意するさやに、小狐達は元気な返事をする。
流石さや、早くもこいつらの心を掴んだな。
こうして、小狐達の遊びの主流はボールに変わった。
後日、新しいボールを持っていこうと神社に行ったところ、「今度はボール遊びが止まらないです...」と疲れた様子の黄花が出てきて、俺はもうなにやらせても変わらないだろうなと思うのだった。
おまけ
【超次元】
「最近子供達がまた変な遊びを覚えたんですよ」
「変な遊びって、どんな?」
「ボールを使った遊びでして、ボールに炎を纏わせて蹴ったり、ボール増えるように見せたり、なんか巨大な手を作り出したりと、なにやら不思議なものです」
「それは超次元なやつだな」
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