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そうだ、空を飛ぼう

 人は時に唐突に何かを無性にしたくなる時がある。何かを無性に食べたくなったり何処かに行きたくなったりとそんな感じだ。俺、夜兎も今その時が来ていた。



「空が飛びたい」



 ベッドに寝そべりながら本を読む俺の唐突な一言に、床に座って本を読んでいた夏蓮が何を言ってるんだこいつ?といった表情をしていた。



「何言ってるの?頭大丈夫?」


  

 本当に言ってきたよ。そういえば夏蓮が部屋に居たことすっかり忘れていたな。今俺と夏蓮は俺の部屋でゆっくりと本を読んでいた。テロ組織の一件以来今学校は臨時休校になっていて、今日は土曜だから夏蓮も普通に学校が休みだ。

 因みに今日の夏蓮の髪はストレートだ。やっぱり似合うな。



 何で夏蓮が俺の部屋で本を読んでいるかというと、実際俺もよく分からない。急に俺の部屋に来たかと思えば「ここで本読んでもいい?」と言ってきたんだ。


 

 正直何故ここなのかと聞きたい所だが、言っても何も言わないのは長年の付き合いで分かってるので、素直にオーケーしといた。別に断る理由がないしな。



「いや、何となく言っただけだ」



 そう言って俺は立ち上がり手に持っていた本を仕舞い、廊下に出た。



「出掛けるの?」

「あぁ、お前は別に好きに居ていいからな」

「.....あっそ、行ってらっしゃい」



 夏蓮はそういうがよく見ると目線が少し下に下がりスカートの裾を少し摘まんでいる。これは少し残念という時の反応だ。

 何か残念な事でもあったのか?もしかして俺と一緒に居られなくなるのが残念なのか!


       

 ......な訳ないか。何言ってんだ俺。夏蓮はそんなキャラじゃないだろうに。



「そんじゃ行ってくる」



 俺は夏蓮にそう言って俺は部屋を出た。

 さあ行くか、空を飛びに。







ーーーーーーーーーーーーーー








 支度を済ませ俺は玄関の所で空を飛ぶ所に転移した。空を飛ぶとなると必然的に場所も限られてくる。人に見られたら騒ぎ所の話じゃなくなるからな。



 という訳で俺は今砂漠のど真ん中に来ている。いや、何故砂漠かと言われても正直俺も吃驚している。転移するときに人がいない所としか設定してなかったからまさかの砂漠だった。



 日差しが暑い、そして砂煙が目に痛い。他に行きたい所なんだが【転移魔法】も中々魔力を使う魔法だ。距離に応じてその消費する魔力も変わってくるんだ。今の俺なら地球軽く3周は行けるが帰りようと飛ぶ用と考えるとそこまでほいほいと転移はしていられない。



 面倒だしこのままでいいか。俺は念のため【気配察知】を掛けておいてから空を飛ぶ練習を始めた。先ずどうやって空を飛ぶかというと、今回は【風魔法】を使う。実は部屋で本を読みながら寝転がっていた時に頭の中で少し魔法について調べてたら【風魔法】で空を飛ぶ魔法があった。



「フリーゲン」



 俺がそう唱えた瞬間俺の足下に緑色の魔法陣が現れ、下から風が巻き起こった。

 すると段々足が地面から離れていき、体が浮き始める。おー、浮いた浮いた。俺はこれに内心興奮している。



 しかし体が浮くってこんな感じか。何か凄い浮遊感だな。俺は浮くことの浮遊感を堪能すると、いよいよ飛行を始めた。

 えーっと、先ずどうするんだ?俺は浮きながら考え、試しに風を後ろに飛ばすイメージをすると、体が前に進んだ。おー、こうやるのか。

 


 飛び方も分かった所で俺は暫く飛行を楽しんだ。これが飛ぶという事か。何か飛ぶっていいな。この風の爽快感が最高だ。何か鳥になった気分だな。



 俺はいい気分で飛行を続けていると、発動していた【気配察知】に人の反応があった。



(こんなところに人?しかも人数は一人だな)


 

 広大な砂漠に一人でいるってことはこれってあれだよな。直ぐに行った方がいい奴だよな。

 仕方ない行くか。飛んで。

 そう思い俺は反応があった所に向かう。

 折角なので飛んだままその反応の所まで行くと、案の定人が倒れていた。



 見た目はぼろぼろの服に髭を生やした50代位の男性だった。

 おいおい、このご時世にこんなもろ探検家ですみたいな格好した奴がいるか?しかも一人で、どんな確率だよ。

 


「おーい、大丈夫かー」

「うぅ.....ⅩⅩⅩⅩⅩⅩⅩ?」

「あー、何て?」



 やばい、何て言ってんだこの人。日本語しか分からない俺に外国語何て分からないぞ。聞いた所英語ではないのが分かる位だ。

 しまったな。こんな事なら英語の授業は寝るんじゃなかったな。

 どうする?ほっとくか?言葉が分かるならまだしもこれはどうすればいいんだ?俺はどうしようもなく取り敢えず立ち上がると、



「ⅩⅩⅩⅩⅩ!?ⅩⅩⅩⅩⅩⅩⅩⅩⅩⅩ!!」



 見捨てられると思ったのか男性は俺のズボンにしがみついて助けを請うように何か訴えていた。

 いや待て待て、別に見捨てるとかそんなんじゃないから!ちょっと立っただけだから!



「ちょっ、あんま引っ張るなって!ズボンが破ける!」

「ⅩⅩⅩⅩⅩ!!ⅩⅩⅩⅩⅩⅩⅩⅩ!!」


  

 何言ってるのか分からないが取り敢えずまともに話せる精神状態じゃないな。

 


「だあもう!!面倒だ!!」

「ⅩⅩⅩ!!ⅩⅩⅩⅩⅩⅩⅩーーーーーー」


 

 段々鬱陶しくなってきた俺はしがみついてくる男性を転移で近くの街に飛ばした。

 全くしつこい奴だったな。お陰でズボンが砂まみれだ。俺はズボンを軽く払うと、場所を変える為また何処か別の場所に転移した。


  

 転移した先は何処もかしこも森で覆われたジャングルだった。ここならまあ、大丈夫か。

 魔力もさっき遭難者一人を転移させたから大分消費したな。もう転移しない方がいいかもな。



 俺は早速また【風魔法】を使い空を飛んだ。

 おー、これは凄い。辺り一面緑一色だな。

 俺は緑で覆われたジャングルの景色を堪能していると、何処からか鳥の鳴き声が聞こえた。



 俺はその鳴き声がした方向を向くと、そこには群れをなした鳥達が一斉にこっちに向かって来ていた。あ、こりゃやばい。俺は急いで鳥達が向かう方向から外れると、今度は何処からか槍が飛んできた。



 うわ、危な!!俺はそれを間一髪避け、槍が飛んできた方向を見るとそこにはどっかの部族であろう原住民がいた。

 あ、やべ。【気配察知】使うの忘れてたな。今度からは気を付けなきゃな。

 自分の失態に反省していると原住民がこちらに向かって叫んできた。



「ⅩⅩⅩⅩⅩⅩⅩⅩ!!」



 だから何て?

 またしても意味が分からない言語が飛んできたぞ。今度は何だ?さっきの遭難者とは違うのは確かだが、分からないのに変わりはないな。

 どうするか、取り敢えず何か言っとくか。



「俺は別に危害を加えるつもりはない!!だから安心して帰れ!!」

「ⅩⅩⅩⅩⅩⅩⅩ!!」



 俺がそう叫ぶと原住民は何か気に触ったのか今度はそこら辺にあった石を投げてきた。

 いや何故だ。あれの何処に石を投げられる要素があったんだ。



 俺は不思議に思いながら石を避けると、原住民は今度は高らかに何かを叫んだ。それはさながら何かを呼ぶような感じだった。



 暫くするとまた何処から来たのか原住民と同じ格好をした奴がどんどんやって来た。 

 原住民は仲間が集まると俺の方を指差す。

 すると原住民達は一斉にこちらを睨んできた。



 あ、これやばい奴だ。

 俺がそう予感した瞬間原住民達は一斉に手に持っていた槍を投げてきた。   

 うわ、やっぱりやってきたぞ。俺が何したって言うんだよ!!



 俺は飛んでくる槍を避けつつ、これ以上何を言っても無駄だと判断し転移で逃げる。

 原住民に襲われ転移で逃げた先はまた何処か分からない雪山だった。

 但し雪山は雪山でも絶賛もう吹雪が吹いている遭難確定の雪山だ。

 


 いくら人が居ない所だからってこれはないだろ。凍死するわ。 



「......帰ろ」



 俺は雪山に転移した瞬間もう無理だと判断し、家に帰る事にした。



 家に帰り玄関に転移するとリビングから夏蓮が出てきた。

 


「どうしたの?何か凄い汚れてるけど」

「いや、色々とあってな」



 見ると俺の服は砂漠の砂で汚れたり吹雪の雪で濡れたりとしていて結構汚れていた。

 俺は夏蓮の問いを適当にはぐらかし、疲れたので風呂に入るため風呂場へと足を運んだ。






ーーーーーーーーーーーーーーーー








 夜になり俺はリビングでテレビを見ているとニュースで奇妙なニュースが流れていた。



『今日午前7時頃エジプトのサハラ砂漠で行方不明になっていた考古学者のインディゴ・ジョールズ氏がサハラ砂漠から遠く離れた街で発見されました。インディゴ氏は「変な少年を見た」とよく分からない事を述べていてーーーーーーー』


「あらー、変な話ね」

「あーうん、そうだねー」



 このニュースに俺は何とも言えない気持ちのまま俺はあることを思った。

 もう、暫くは飛ぶの辞めよう。

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