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荒らすだけ荒らして帰りやがった

 捜査を開始してから暫く。

 俺達はとうとう探していた人物がいるであろう場所を特定した。

 


「ここなのか?」

「みたいだな」

 


 おっさんに確認をとると、おっさんはその場所を見ながら頷く。

 本当にここなのか?  

 俺は疑いつつもおっさんと同じ建物を見る。

 廃れた壁や屋根、周りの人気はゼロ。

 完全に刑事ドラマで見るような廃墟そのものだ。



「おい、おっさんの探してる人って何なんだ?ヤクザでもやってるのか?ここそれ系の連中が拷問するときに使うような場所だぞ」

「いや、関係があるとは聞いたが、本人は違うはずだ」



 関係がある時点でアウトだろ。

 おかしいなという顔をしながら頭を悩ませるおっさん。   

 絶対こんなかでなにか起きてるってこれ。

 鉄板ネタでいえば、この中で俺達が探してた人拉致されてるパターンだぞ。



 考え込むおっさんの隣で俺は確信していると、俺とおっさんの後ろにいたスカラが話し掛けてきた。



「なぁ、ここになんかいんのか?」



 こいつ絶対なにも分かってないだろ。

 疑問の声をあげるスカラを見て、俺は思う。

 本当にこいつ一緒に来た意味があったのだろうか。

 これまでのことを思い返し、俺は軽く顔を歪ませる。



 探す範囲を決める時に面倒だからと辺りを壊そうとするし、

 おっさんが聞き込みをしようとすると手伝いとかいって殺気放つし、

 暇だといってどっか行こうとするし、無駄に面倒をかけるばかりだったな。



 探す最中他人に視認出来ないようにしといてよかった。

 でなければ今頃死体の山が出来てただろう。

 最悪の被害を回避でき、俺は少しホッとすると、気を取り直してあの廃墟の中を探ってみることにした。



「調べてみるか」



 そう言いながら、俺は目を瞑り、意識を廃墟に向ける。

 こういうのは【空間魔法(効果範囲 特大)】を使えば直ぐに分かる。

 別に【気配察知】でもいいが、より正確に把握するなら【空間魔法(効果範囲 特大)】の方がいい。      



 【気配察知】は集中力がいらず、直ぐに発動出来るが細かな動作までは分からない為、こういうときには向かない。

 使いやすいのが利点だからな。

 

 

 意識を集中させ、俺は廃墟の中を探ってみると、中の案の定な状況に、俺は軽く笑えてきた。

 数は全部で23人。全員何かしらの武器は持っている。

 そして、そのなかに一人だけ手足が縛られてるのが一人。

 うわぁ、まじで拉致られてる。



「いるな」

「なに!?いたのか!!」

「顔は分からんが縛られてる奴が一人いる。多分そいつだろ」



 中を探った俺の結果におっさんは驚きの声をあげる。

 まさか本当に拉致られてるとは。

 軽いノリで関わるんじゃなかったな。 

 廃墟の様子も分かり、どうやって助け出そうかなと俺は考えていると、スカラがなにやら構え出した。



「よしわかった。ならあの建物壊せば解決だな!」

「げっ!?」



 いきなりぶっ飛んだ発言におっさんは驚きながらスカラの方を向き、少し距離を置く。

 見ると、スカラは既に体勢を作っており、俺はそれを見てすかさず止めた。



「やめい」 



 スカラの腕を抑えながら俺は静かに止める。

 見た目はゆったりだが力は本気だ。でないと止まらない。

 現に今俺の手は少しずつ押し返されている。

 

 

「なんで止めるんだよー」

「止めるに決まってるだろ」

「そうだぜスカラ!頼むからそれは止めてくれ!!」

「その方が手っ取り早いだろ」


  

 なにを頭のおかしいことを言ってるんだ、こいつは。

 止められてスカラは不満そうな顔をするが、そんなことさせるわけがない。

 俺達、特におっさんからの必死の訴えにスカラは渋々と腕をあげる力を緩め始め、俺は呆れながら言う。

 


「なんでそういう考えになるんだよ」

「あれごと壊せば中の奴も一瞬で殺れるだろ」

「それじゃあ俺らが探してた奴まで一緒に死ぬだろ。ていうか、殺すな」

「それで死んだらそいつはそれまでの奴だ」



 こいつやっぱりなにしに来たのか分かってないだろ。

 脳筋過ぎる発言に俺はつくづくそう思う。 

 


「とにかく、破壊するのはなしだ。いいな?」



 俺に言及されスカラは「ちぇ」っとまだ不満といった態度をとるが、一応は納得したようだ。

 スカラの破壊も免れ、俺とおっさんは安堵する。

 おっさんもここまでの捜査でスカラの危険性を理解したようで、小声で「助かった.....」と呟いている。 



「んで、どうやって助けるんだ夜兎」

「直接行った方が早いよなぁ.....やっぱり」



 気を取り直して聞くおっさんに、俺は仕方ないとばかりに息を吐き廃墟の方に歩みだす。

 とっとと終わらせていくか。

 そう思いながら俺は歩いたが、途中俺はスカラに警告するのを忘れスカラの方を振り返った。



「スカラ、お前はここで大人しく....あれ?」  



 注意しようと振り返った俺だが、そこにはスカラの姿がなかった。



「どこ行ったんだ?あいつ」 

「あれ?いつの間に」



 おっさんもスカラの行方を知らないのか、辺りをキョロキョロと見回す。

 いったいどこに行ったんだと考えた俺だが、直ぐにどこだか見当がつき、顔を固まらさる。

 俺と同じタイミングでおっさんも気付いたのか、同じように顔を固まらせ、ゆっくりと顔を見合わせた。

 まさか...........。   



 ぎゃあぁぁああぁぁぁあぁぁぁあ!!



 するとその瞬間、廃墟の方から男の悲鳴が聞こえた。

 誰の悲鳴かなんて分からないが、誰が起こしたのかは丸分かりだ。



「.......やばいな」



 悲鳴が聞こえ、俺は急いで廃墟の中に行く。 

 ほんの一瞬目を離しただけで、どうしてこうなるんだよ。

 このままじゃ拉致られた奴とその犯人グループの命が危ない。

 廃墟が血に染まる前に止めなくては。



 俺は慌てて転移で廃墟の中に入ると、そこにはスカラを中心に周囲を囲む厳つい男達と、スカラの前で地面に転がりながら腕を抑えて転がっている一人の男の姿があった。



「お前なにしてんだよ」


 

 囲まれてるスカラを見て、俺は直ぐに転移でスカラの元に移動すると、スカラが何気なしに言った。



「いやな、とっととその中の奴を助けに行くかと思ったんだが、何か来た瞬間こいつが気持ち悪い笑みを浮かべながら私に手を伸ばしてきたから払ったんだが....何かこうなった」



 なるほど、ようするにスカラに手を払われ骨が砕けたか。 

 そりゃあ、露出度の高いビキニアーマーなんて着た奴がいきなりくれば痴女にでも見えるかもしれんが、なんとも運の悪い奴だな。  

 目の前で転がる男に同情の念を送ると、今度は周囲のヤクザ達が俺を見てざわめき始めた。



「お、おい、今度は急に男が現れたぞ.....」

「しかも、あの頭のおかしい奴と知り合いか?」 

「ど、どうする......」



 どうやらいきなり俺が転移で現れて動揺してるようだ。

 まぁ、そうなるのも無理はないか。後で記憶消しとこ。

 ざわつくヤクザ達を他所に、俺はお探しの人物がどこにいるのか探すと、奥で椅子に座られ縛られてる男がいた。     



 あいつか。

 口な塞がれてるが、目は見えてる。

 こちらを見ながらなんか助けを求めるのがよく分かるな。

 お目当ての人物を発見し、俺は取り敢えずヤクザ達に交渉をかけた。

 


「そこにいる奴を今すぐ渡せばこっちはなにもしない。だから大人しく渡せ」



 椅子に縛られてる奴を指差しながら、俺は告げる。

 早くしないとお前らの命がなくなるぞ、スカラの手によって。

 素直に渡してくれと俺は願っていると、突如木刀を持った男がヤケなり襲ってきた。



「ふ、ふざけたことぬかしてんじゃねぇ!!」 



 大声をあげながら木刀を振り上げる男に対し、俺は対処するため動こうとしたが、そうする前にスカラが前に出て逆に殴りかかろうとしていた。

 

 

「やれるもんならやってみろ!!」


 

 いや、なにしてんのお前。

 木刀の男にカウンターをかけるようにスカラは殴ろうとするが、止めるべく俺は二人の間に入った。 

 スカラのカウンターが入る瞬間、俺は片手で木刀の男に【首トン】をし、片足でスカラの手を地面に蹴り飛ばす。

 【首トン】により男は気絶し、スカラの拳は地面に逸れ、地面にドゴォン!!と大きな穴が空いた。



「いってぇなぁ、何すんだよ!夜兎」

「それはこっちの台詞だ。殺すなってさっき言ったろ」



 あのままいけば今の奴確実に死んでたぞ。

 


「ちゃんと加減はしたぞ!」

「嘘つけ。見ろ、地面に穴空いてるだろ」

「地面が柔かっただけだ!」



 横暴すぎだろそれ。

 俺に蹴られた手をもう片方の手で擦りながら言うスカラを見て、思う。

 そんなこといったら地球全部が柔くなるぞ。



 スカラの言葉に俺はアホかといった顔をしてると、少し違和感を感じた。

 なんかやけに静かだな。

 そう思った俺はヤクザ達の方を見る。

 すると、地面が陥没したからか、それを見たヤクザ達は口を開けたまま呆然としていた。



 まぁ、無理もないよな。

 漫画じゃあるまいし、こんなことが現実に起こる筈がない。

 ヤクザ達の反応を当然に思いながらも、俺は再度告げる。

 


「これで渡す気になったか?」



 その俺の一言で我に返ったのか、ヤクザ達は一斉に持っていた武器を構え警戒しだした。



「お前ら気を付けろ!何をしたのか知らんが数で戦えばどうってことねぇ!!」



 どこからかリーダーらしき声も聞こえ、ヤクザ達は一層警戒心が増す。

 おいおい、まだやめる気がないのか。  

 馬鹿に程があるヤクザ達の対応に俺はえーっと思うのとは反対に、スカラは何か嬉しそうな顔をしている。


 

「この私にここまで真っ向から来ようとする奴が、こんなにもいるとは......。地球は凄いんだな、夜兎」

「ただ馬鹿なだけだろ」



 嬉しがるスカラに、俺は冷めた顔をする。

 【破壊神】相手にこんな勇敢にも、というより無謀にも向かっていくのは異世界広しといえどここぐらいだろうな。

 他人の力量も分からないんだから。

 


 さてはて、どうするかな。

 いかにスカラに手を出させずこいつらを全滅させようかと俺は悩んでいると、斜め前の奴が懐からいきなりあるものを取りだし俺達に向かって突き出した。

 


「死ねやっ!!」    



 野太い汚い叫び声と共にそれは引き金を引かれパァン!!と音を響かせる。

 拳銃か。相手の持っているものが拳銃だと確認した俺は気にせずそのまま突っ立っている。

 放たれた弾丸は俺の前を通過し、スカラの頭部に直撃した。


 

「ん?今なんか当たったか?」



 だが、そんなものがこいつに効く筈もなく、まるでハエでも止まったかのような反応を示す。

 拳銃が全く効かないことに一同は驚き、恐怖のあまり撃った男はスカラに向けてそのまま銃を乱発し始めた。


 

「ば、化けんもんが!!」



 パァンパァンと何回もの発砲音が廃墟中に鳴り響くが、その全てがスカラにとっては無力。

 やがて拳銃の弾も尽き、カチッカチッと引き金を引く音だけしか聞こえなくなった。

 撃ち終わったみたいだな。



 拳銃を持ったまま放心状態になった男を見て俺は確信したが、同時に一つ不思議に思った。

 スカラの奴やけに大人しいな。

 さっきはあんなに喜んでいたのにまだ一度も自分から手を出してないぞ。



 いったいどうしたんだと思い、俺はスカラの方を見てみると、スカラは顔を俯かせぷるぷると肩を震わせていた。  

 勿論それは恐怖とかではない。嬉しさのあまり震えているのだ。



「どうしたんだ?スカラ」



 肩を震わすスカラに俺は話しかけると、スカラは若干震え声になりながら言った。



「ま、まさか、私にここまで敵意を剥き出してくれる奴等がまだ異世界に居たなんて.......」

「す、スカラ?」



 様子がおかしいスカラに俺はまさかと思い、恐る恐る声をかけると、スカラは俯かせていた顔を思いっきり上げた。



「こんなに嬉しいことはねぇ!!」



 嬉しさを通り越して、最早異常ともいえる満面の笑み。

 長らく自分に向かってくる敵がいなかったからか、感激とばかりにスカラは嬉しそうにする。

 そして、それと同時にスカラの髪の毛がぞわぞわと逆立ち、異様な気配が放たれた。

 この気配には感じたことがある。   



 スカラから放たれる異様な気配に俺は顔をひきつらせた。

 これは俺がスカラと戦った時や、ゲルマが潜伏した島を破壊した時にも感じた奴と同じだ。

 つまり、今からもうすぐここは吹き飛ぶことになる。



「落ち着けスカラ、冷静に考えろ。この世界の人間は俺よりも何十倍も弱い。謂わば虫けら同然だ。虫けらだぞ、虫けら。そんな奴らにそんな感情的になっていいのか」

「戦いは数だって昔聞いたことがある。今回はそれだろ!」



 いや、違う。それ絶対違う。

 多分俺以外の全人類連れても勝てないから。 

 しかも、その言葉どこで覚えたんだよ。まるっきりこっちの言葉だろ。

 ご都合主義なスカラの発言に俺はツッコムが、刻一刻とタイムリミットは迫っている。



 どうする。今更ヤクザ達を逃がすのは無理だ。

 かといって【テンション魔法】を使っても今のスカラには効果は薄い。

 どうする、どうする.......。

 考え込む俺だが、もう時間はない。

 

 

 俺とスカラの会話を見ていったいなにが起きてるんだと戸惑うヤクザ達を他所に、とうとう気配が頂点に達した。



「さぁ、戦いの始まりだ!」

「くそっ!!」



 スカラを中心ピカッと一筋の光が現れたと同時に、俺はスカラに手を当て咄嗟に上空に転移させた。

 転移させたことで光は一瞬だけ止み、少しの間が空くと、今度は地響きが響き渡る。

 突然なる地響きにヤクザ達はざわつくが、次の瞬間更なる光景を目にすることになる。



 天井にピキピキっとヒビが入り、突如天井が崩壊した。

 天井が崩壊し、全員が上を見上げると、そこには眩い光や、塵と化していく天井、そしてその中心にいるスカラ。



 しまった。もっと上に飛ばせばよかった。

 被害はゼロとはいえ、ギリギリ過ぎて何か怖いな。

 見慣れた俺はともかく、ヤクザの方は口を開けたままピクリとも動いていない。

 やがて光も消え、塵と化した天井と静けさがだけがこの場に残った。



 暫く呆然としていたヤクザ達に俺はもう一度聞いた。



「渡してくれるか?」

「「「「「「........はい」」」」」」



 俺の言葉に、ヤクザ達は両手を上げて降参の意を示す。

 見ると、捕まっていた奴はとっくに気絶してたみたいだが、まぁ死なないだけましか。

 これで目的の人物も手に入り、後はこいつらの記憶を消せば終わりだ。



 俺は後の始末を終わらせるため【削除魔法】でこいつらの記憶を消した。



「なら先ず、お前らにはここでの記憶を消させて貰う」



 突然の俺の言葉に一同は「はっ?」っとなったが、問答無用で俺は【削除魔法】を発動させる。

 発動させると、ヤクザ達は一斉にバタバタと倒れていき、やがて全員倒れた。

 ついでに記憶と一緒に眠って貰った。

 これで起きた後はいつも通りだな。



 やることをやり終え、俺はふぅっと息を吐くと、丁度スカラが戻ってきた。



「いやー、まさかあそこで出ちまうとは思わなかったぜ。.......あれ、なんでこいつら倒れてんだ?」

「全部終わったからだよ」



 疲れたように言う俺の言葉にスカラは「まじかよ!?」と驚いた顔をする。

 


「なんだよそれー、私のこのやる気を返せ」

「知るか。自分でどうにかしろ」



 もうこっちにはこいつを構ってやる気力はない。

 素直に帰れ。

 相手にしてられないという風に扱う俺だが、この昂った気分をどうにかしたいスカラは戦いの相手をヤクザから俺に移した。


 

「ならお前が私と戦ってくれ!!」

「いや、なんでそうなるんだよ」



 こっちはもう速やかに帰るか、おっさんの奢りで寿司を食べたいんだが。

 戦いたいというスカラの申し出に俺は断ろうとするが、スカラはそんなこと気にせず始めようと構え出した。



「よし、そんじゃあやるぞ!」

「はぁ!?ちょ、ちょっと待て!!」



 突然始まろうとする戦いに俺は焦り待ったをかけようとするが、スカラは止まろうとしない。

 今にも始まろうとする戦いの最中、スカラは俺に向かって拳を振り上げた。



「くらえ「ちょっとスカラ!!勝手に僕の世界に行ってなにしてんのさ!!」」



 だがその途中、突如スカラの右手首からメトロンの怒鳴り声が聞こえだし、スカラはピタッと動きを止めた。

 いきなり声が聞こえ、俺はなんだ?と思っているとスカラはゲッと顔を歪ませ、渋々と右手首に着けていた腕輪のようなものに触れた。



 するとそこからスカラの目の前に小さな映像が映し出され、映像の中には怒りの表情のメトロンが映されていた。



「よ、ようメトロン。どうしたんだ急に」

「どうしたんだじゃないよ!!仕事放り出してなにしてんの!?しかも勝手に人の世界に入り込んで、なんかあったらどうするの!!」



 メトロンに言われ、スカラは気まずそうに顔をそらす。

 今まさになんかあったな。

 ついさっきスカラが壊した天井や地面を俺は見つめる。

 スカラが目をそらしたことでメトロンはまさか思いと察したのか、スカラをじっと見つめながら問い質す。



「スカラ、もしかしてもう何か壊したりしたの?」

「い、いや、なにもしてないぞ」

「本当に?.........」



 疑り深い目でみるメトロンの目にスカラはさっとそらす。

 嘘が下手だな。会話のやり取りを見ながら俺は思っていると、メトロンはスカラに疑いながら言った。



「.......ちょっと画面移動させてみて」

「さぁ!!もう帰るとするかなぁ!!」



 メトロンの提案にスカラは遮るように大声をあげる。

 


「夜兎!今日はありがとな!!また来るわ!!」

「ちょっとスカラ!まだ話は!」 

「そんじゃあな!!」 



 そうと決まれば早々とスカラは何処からか転移用の玉を取りだし、それを地面に投げつけ、去っていった。

 嵐のように去っていき、俺は少し呆然としたが、周りを見渡して思う。



「これどうすればいいんだよ........」

「どうやら終わったみたいだな」



 この惨状に俺は呟くと、それと同時にどこからかおっさんが出てきた。

 多分今までずっと機会を伺いながら隠れてたんだろうな。

 全部終わり、おっさんはこの有り様を見て、「ひやー」っと感嘆の声をあげる。



「凄いなこれ」

「全部スカラがやったんだよ」



 荒らすだけ荒らして帰って行ったお陰で、廃墟が更にボロくなったな。

 多分これも天使が治してくれるんだと思うが、まぁ治さなくても元々ここには人が来ない。

 どっちでもいいか。



「俺らも行くか」

「こいつらどうするよ?」



 行こうとする俺におっさんは眠ったヤクザ達を見ながら言う。

 そうだなぁ、一応移動させておくか。

 そう思い、俺は一人一人手を当てどこか適当な場所に飛ばしておいた。

 縛られていた奴はおっさんが担ぎ、俺達は廃墟を後にする。



「よっしゃ!そんじゃ帰るか!」

「約束忘れるなよ」

「任せとけ!!とびっきりなのを奢ってやる!!」



 気分良さげにおっさんは笑顔で応える。  

 後は天使に任せよう。

 この時はそう楽観視した俺だが、後日リーナからメールで『あんまり仕事増やさないでくれ.......』と念の籠った文字が送られ、少し申し訳ない気持ちになるのだった。

 

おまけ


【範囲特定】


「さて、先ずどこから行くか」

「範囲を絞った方がよさそうだな?」 

「範囲を絞るのか?」

「あぁ、そうだ」

「なら、任せろ」

「え、任せろって....ちょっと待て、何で手を上にあげてるんだ」

「範囲を絞るためにある程度ぶち壊す」

「やめい」



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