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天変地異ともいえる光景でした

 ゲルマが居るであろう場所に転移すると、目の前には広い海が広がっていた。



「ここが、そうなのか?」

「みたいだな」



 疑問に思うリーナに俺は頷く。

 目の前には広い海、後ろには中央にあるであろう巨大な火山がそびえ立っている。

 前にメルの時に行った島とは大分違うが、ここもここでまさに常夏の島って感じだ。



「ゲルマの野郎!探し出して血祭りにあげてやる!!」



 俺が少し周囲を見回していると、気が立っているスカラは怒りの声を出しながら一人探しに行こうと歩み出そうとしていた。

 それに気づいた俺は、咄嗟にスカラの鎧の後ろを掴む。



「ちょっと待て」

「うぉっと!?な、なんだよ」

「何処に行く気だ?」

「決まってんだろ。ゲルマの野郎を探しに行くんだよ!」



 少し苛立ち気味にスカラは応える。

 言うとは思っていたが、まさかここまで馬鹿とは。

 呆れる程の単純さに俺は軽くため息をついた。



「お前自分の体見てみろよ。そんな状態で行ってどうすんだよ」

「こんなのかすり傷だ!!」



 そんなわけないだろ。

 強がるスカラに俺は内心思う。

 あんだけ俺の攻撃喰らったんだ。

 こんな状態じゃ本調子の一割も出せないだろ。

 無理にでも行こうとするスカラを俺は止めようとする。



「今は待て、闇雲に行ったってしょうがないだろ」

「だが、ゲルマも見たところだと相当な手負いだった。なら今のうちに探すべきなんじゃないか?」

「それもそうね」



 リーナの助言にサラも賛成する。

 先程目にした通り、ゲルマは深い傷を負っている。 

 だから、回復される前に見つけて叩くべきだ。

 一見正しいとも言えるこのリーナの意見に俺は首を振った。



「いや、ゲルマのことだ。あいつなら俺らがここに来たのなんてもう勘づいてるだろ。途中で罠でも仕掛けられたらそれこそ終わりだ」



 【空間魔法(効果範囲 特大)】でなら、ゲルマの居場所も分かるが、その途中にある罠までは分からない。

 転移で一気に行く手もあるが、今の俺たちの状態が悪すぎる。


  

 渾身の一撃(フルブラスト)は反動が解けた後も体が重く感じるのは残る。 

 俺も万全じゃない。

 スカラも元気に見えるがボロボロ、リーナとサラじゃ戦力不足。

 仮にスカラの傷を回復させるとしても、ゲルマは倒したその後が面倒だ。



 どうせ、ゲルマの次は俺だと言って勝負を再開するに決まっている。 

 片を付けるなら、俺の手か、今の状態のままでスカラがどうにかするか、この二つだ。

 


「じゃあ、どうすんだよ。これじゃあ、ゲルマの思うつぼだろ」



 ある程度落ち着きを取り戻したのか、俺の説明を聞いてスカラは聞いてきた。

 スカラに聞かれ、俺は少し頭を捻る。

 多分ゲルマには気づかれてる。

 だが【空間魔法(効果範囲 特大)】では、ゲルマはまだ動いていない。



 一か八か奇襲をかけるのは早計だ。

 出来れば安全な方をいきたい。

 ならここからゲルマを一撃で始末出来ればいいんだが、そんなの早々いいものなんて......。

 あまり良い考えが浮かばず、俺は少し唸る。

 せめて、火力の高いスキルを使える奴がいればなぁ。



 考え込むうちに、俺は何気なくスカラの方をチラリと見た。

 俺と目が合ったスカラは何故か逆に睨まれたが、そんなことより俺は簡単なことに気づいた。

 あ、そういえばいたな。ここに馬鹿みたいな火力を持ってる奴が。



「スカラ、お前この島ごと破壊って出来るか?」



 いきなり突拍子もないことを聞かれ、スカラは一瞬驚いた顔をしたが、次第にバカバカしいとばかりに息を吐いた。



「出来るわけないだろ。気分が乗ってるならともかく、こんな状態で島ごと破壊はきついぞ」



 そんなことも分からないのかといった感じで、スカラはやれやれと首を振る。

 うざい、控えめにいってうざい。

 俺はこの馬鹿に馬鹿にされた感じがとても勘に触ったが、出来ないに関しては想定済みだ。



 本来なら一発殴っておきたいところだがここは我慢するとして、先ずは論より証拠。

 俺はやれやれと呆れているスカラに合図もなく魔法をかけた。



「これならどうだ。ハイテンションアップ」



 俺がそう唱えた瞬間、突如スカラの周りに強い淡いオレンジ色の光が現れた。

 光がスカラを包み、スカラは包まれると同時に言葉を途切らせ少し停止したような状態になる。



 あれ?失敗したか?

 光がスカラから消えても、スカラは無言のまま棒立ちになる。

 どうしたのかと思い、俺は話し掛けようとスカラに近づくと、やがてスカラの体は徐々にプルプルと震えだし、



「うぉおおぉおぉぉぉぉおぉぉお!!!!」



 大きな雄叫びをあげた。

 突然スカラから発せられた巨大な叫びに、俺とリーナとサラは反射的に耳を塞ぐ。 

 それと同時に、スカラからあの山を半壊させた時と同じ気配が放出された。



 だが、その量はあの時より遥かに上で、今まで感じたことのない気配になっている。

 なんて声だ。常人なら軽く鼓膜が破れるぞ。

 スカラの声に反応するように近くの草木は揺れ、波が荒々しく波打つ。



 最初の雄叫びより声量は大分ましになり、俺はこれでいけそうかとスカラに聞いた。



「おいスカラ、これでやれるか!?」

「ははは!!これならやれるぞ!!てかなんだこれ!?こんなになったの生まれて初めてだ!!やばすぎて、もう抑えらんねぇ!!!」



 結果は大成功。

 というか、大成功過ぎた。

 テンション上がりすぎて自分じゃどうにもならないとか、完全にやり過ぎたな。

 


「リーナ、サラ!!俺に掴まれ!!」

 


 爆発寸前なスカラを前に、俺は後ろの二人に呼び掛ける。

 事のやばさが分かっていたリーナとサラは直ぐに俺の肩に手を置き、俺は島から離れた空中に転移した。



 島から離れ、安全な場所に避難してホッとした俺が目にしたのはーーーーーーーまさに天災と呼べるものだった。 



ズドォォォォオオォオォオォオォオン!!!!



 転移した瞬間、スカラが居た地点を中心に、吸い込まれていくように木々や土、岩が浮き上がり、砕け、塵と化していく。

 波動のように広がるそれは、やがて島までなく広大な海まで包み込み、ドームのように半円を築いた。


 

 まるで、天変地異が起きてるみたいだ。

 口許をひくつかせながら俺は眺めていると、衝撃がこちらにまで伝わり、俺達は目を腕で隠しながら一旦島から目を離す。

 少しして衝撃が収まり、目を開けて俺が次に目にしたのはーーーーーー島なんてない広大な海だけだった。



 ない、島の破片はおろか、そこにあったであろう痕跡すらない。

 破壊された部分を海が埋めるように波が動いているだけで、初めて見る人からしたら、ここに島があったなんて想像もつかないだろう。



「な、なにこれ.......」

「これは、すさまじいな......」



 この光景には、サラとリーナも開いた口が塞がらないようだ。

 ハイテンションアップ。名前の通りテンションアップの上位互換の魔法なんだが、まさかここまでの威力を発揮するとは。



「ここが島でよかった.......」



 消えた島を見て、俺は思わず口にする。 

 もし、ここが大陸だったり、人がいるところだったら、えらいことになってたな。

 人がいたら最初からやらないかもしれないが。

 幸い、ここは大陸からかなり離れた島だ。

 被害は少ないだろう。



「これを後で私達が元に戻すのよね........」

「しょうがない。これも私達の仕事だ。それに、寧ろスカラ様からすればまだ壊す規模は小さい。気長にいこう......」



 消えた島を見ながら、サラはこれからのことを思い思いため息をつく。

 それにはリーナも同じ気持ちなのか、諦めた顔をしながら前向きに考えている。

 自分で考えた作戦だからか、何か申し訳ない気持ちになるな。



「まぁ、その、頑張ってくれ。全部終わったら俺もこの世界の人から記憶を消しておくからな」

「すまない」 

「ありがとう」



 苦笑いになりながら気遣いをする俺に、二人は暗い顔でお礼を言う。

 せめてこれくらいはしてあげよう。見てて少し辛い。

 暫く消えた島を眺めていると、突如海の中から赤い何かが見えた。 



「ぷはぁ!!いやー、スッキリしたぜー!!」



 破壊に集中し過ぎて海にでも落ちたんだろうか。

 スカラは上機嫌な様子で海から浮き上がる。

 人がこんな思いをしてるというのに、何であいつはあんな嬉しそうなんだ。

 もう、あいつには【テンション魔法】を使うのは止めよう。

 この組み合わせは最凶過ぎる。

 


 気持ち良さそうに体を伸ばすスカラを見ながら、俺は固く決意した。

 そして、スカラの絶対破壊スキルの前に呆気なく死んだゲルマに、俺は軽く同情の念が覚えた。



「呆気なかったな」

「そうだな」 

「でも、いいんじゃない?これはこれで早くけりが付いたし」



 予想以上の呆気なさに、俺とリーナは少し拍子抜けするが、サラはこれも有りなんじゃないかと呟いた。

 スカラの破壊スキルは、他のスキルや魔法による防御や耐性を一切受け付けない絶対破壊スキル。

 先ず確実に生きてる筈がない。



 結局何しに来たんだと思うくらい呆気ない死に様に、俺は未だ海の水面で機嫌を良くするスカラを見ながら何ともいえない気持ちになっていると、



「ーーーーーーーーーーよくも、やってくれたな。神谷夜兎ぉ.......」



 別のところから声が聞こえた。

 また聞き覚えのある声に俺は咄嗟に声がした方を見る。

 すると、突如目の前の空間が歪み、空間に暗い穴が空くと、そこには怨念の混じった恨めしい声で俺の名を呼ぶゲルマがいた。

 .........生きてるじゃん。

おまけ


【破壊】


「スカラが島を消滅させたあれって、あれが最高の威力なのか?」  

「あれだけなら、間違いなく最高だな。別の奴ならもっとやばいが」

「え?まだ上があるのか?なら、何であん時使わなかったんだよ」

「あれは、感情が昂ると勝手に出るんだよ。それに他のは正直傷が酷すぎた。やるには体が持たねぇ」

「そういえば、世界を何個も破壊してるんだもんな」

「もう何回壊したか忘れちまったぜ!」

「威張んな」



ーーーーーーーーーーーーーー


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