運命かどうかなんて誰にも分かりません
話が進まん......。
最近更新が遅くてすいません。
リアルが少し多忙で投稿が遅れるかもしれませんが、これからもよろしくお願いします。
欠けた山、削れた大地。
最初は自然豊かであったであろう山の形が、まるで抉り取られているかのような風景。
その上空で、スカラは何かを探すように辺りを見回していた。
「くそが、あの野郎どこ行きやがったんだ?」
若干苛立ち気味に、ぶつぶつと文句を言いながらスカラは呟く。
スキルの力を解放した瞬間、スカラの目には夜兎がリーナを抱えて消える姿がはっきり見えていた。
だから、スカラには夜兎が死んでいないことが分かっている。
きっと何処かに隠れているんだろう。
そう思ってスカラは夜兎を炙り出すためあちこちを破壊して言っている訳なんだが、一向に見つからない。
「遠くには行かねぇと思うんだけどなぁ」
自分から逃げればどうなるかと、最初にスカラは夜兎に念を押していた。
それに夜兎の近くに天使もいたことだから、この意味がどういうことかなんて分かっている筈だ。
「だー、くそ。考えても埒が明かねぇ」
夜兎が見つからないことに段々苛立ってきたスカラは、夜兎に聞こえるよう大声で叫んだ。
「とっとと出てこねぇと!!ここら一帯消し飛ばすぞ!!」
「俺ならいるぞ」
スカラが叫んだその時、背後から声が聞こえた。
突然声が聞こえ、スカラは後ろを振り向くと、そこには何やら自信満々に立っている夜兎の姿があった。
まさか、本当に出てくるとは。
自分で言っておいて来るとは思っていなかったスカラは少し驚きの顔を見せたが、直ぐに嬉しそうな表情に変わった。
「おいおい、わざわざ声をかけるとは随分と余裕だな。不意打ちでもかければよかったんじゃねぇか?」
「そんなことしなくても俺がお前をぶっ倒すには変わりはねぇよ」
ついさっきまで追い詰められてた男の言葉とは思えない言葉に、スカラは面喰らったが、「はっ」と鼻で笑った。
「さっきのあれを見てまだ理解してねぇのか?お前じゃ私には勝てねぇよ」
「ならやってみろよ。やれるもんならな」
煽るような物言いで夜兎は言う。
なんとも安い挑発ではあるが、単純なスカラを刺激するには十分だった。
「おもしれぇ!だったらもう一度受けてみな!!」
その瞬間、スカラの髪がぞわぞわと逆立ち、先程と同じ状況をつくる。
それを見た夜兎は特にどうも思わないといった感じで仁王立ちしていると、待っていたとばかりに口許をにやつかせた。
「あのなぁ、俺が何も考えずにのこのこやって来ると思うか?」
「あん?」
夜兎の言っていることが分からず、スカラは疑問の声をあげる。
疑問に思っているスカラに、夜兎は答えとして静かに告げた。
「お前のそのスキル、封じさせて貰う。ーーーーテンションダウン」
夜兎がそう呟いた瞬間、スカラの体に変化が訪れた。
「な、なんだ!?」
突如としてスカラの周りに淡い青の光が現れ、スカラを包む。
突然現れた光にスカラは動揺していると、途端に体をガクッと下がらせた。
「ち、力が入らねぇ。なんだよ、このやる気がでねぇ感じは..........」
【テンション魔法】によって下げられたスカラの気分と技の威力。
ぞわぞわと逆立っていたスカラの髪も元に戻り、心なしかぐったりしてるように見える。
これなら勝てる。
改めて魔法の威力を確認した夜兎はそう思う。
「こっからは俺の番だ。さっきの借りは返してやるよ」
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時は同じく、天界のとある場所で二人の男女が何やら話し合っていた。
「もうそろそろね」
「そうだな」
女の方がそう言うと、男は同意とばかりに頷く。
二人が居る場所、そこはまるで異世界の城で王が玉座に座るような場所で、男女は仲良く座っていた。
「まさか、こうなるとはな」
「これも、運命なのね」
何処か、寂しそうで、空しい雰囲気を出しながら、男は天井を見上げる。
それに同調するように、女の方は悟ったような顔をする。
「今頃スカラは暴れているころだろうな」
「かなり壊れるみたいだけど、あそこの住人には影響がないから大丈夫よ」
苦笑いしながら言う男に対し、女の方は当たり前のように呟く。
ここにテレビや映像を写し出す魔導具はない。
スキルで戦いの様子を見ている訳でもない。
なのに、まるで全て分かっているように言い方をする彼等。
そこに、背中に翼が生えた一人の男の兵士が、慌てて二人に駆け寄る。
「神王様!!大変です!!【無限牢獄】から、奴が脱走しました!!」
「やっぱりか......」
神王と呼ばれ、男は分かっていたかのように目を瞑る。
「あなた」
「分かってる。脱走した奴だが、多分大丈夫だ」
「は?」
男の軽はずみな発言に、兵士は理解出来ず固まった。
【無限牢獄】、そこは数ある罪人を処罰する場所。
そこに入った者は二度と出ることはなく、無限の苦しみを受けることになる。
そこに入る者は当然それ相応のことをした連中ばかりだ。
その中の一人が脱走したというのにこの反応、兵士が固まるのも無理はない。
言葉足らずな男の言葉に兵士はどうしたらいいか分からずにいると、女がフォローを入れてきた。
「あなた、彼はまだ新人なのよ。それだけじゃ分からないに決まってるでしょ」
「ん?あ、あぁそうだったな。すまん」
彼が新人であることを忘れていた男は申し訳なさそうにし、再び兵士に向かって告げた。
「脱走した奴は直に捕まる。だから、それまで待機だ」
「はっ!畏まりました!!神王様方!!」
男の言葉に兵士は気合いの入った声で敬礼する。
だが、その気合いの入った男の言葉に対し、女は一つ注意を加えた。
「『方』ではありませんよ。私達は二人で一つなんですから」
「あっ!?申し訳ありません!!」
「もう、行っていいぞ」
「はっ!!」
自分のミスに気づき、兵士は慌てて頭を下げ、その場を離れた。
二人はそれを静かに見送る。
実は、神王というのは一人ではない。
正確には二人で一つの神なのだ。
故に、この男女二人は神王であり、一つの神である。
兵士が去っていたことにより再び部屋が静かになると、女は途端に心配し始めた。
「大丈夫かしらね。あの子」
「大丈夫だろ。あいつなら」
心配する女とは逆に、男は毛ほども心配してなさそうにひじ掛けに肘を乗せる。
「あれぐらいどうにか出来なきゃ、この先やってけない」
「.........それも、そうね」
男の言葉に納得し、女は心配するだけ無駄だと思い、軽く息を吐いてから背もたれに寄りかかる。
「果たして、この運命はどうなるのかしらね......」
斜め上を見つめながら、女は呟く。
この神王が呟く『運命』。
それが良いものか悪いものかは分からないが、更に動き出すときは、まだまだ先のことである。
おまけ
【モブ】
“主ー”
「どうした?ロウガ」
“最近僕モブな感じがするんだけど、どうしたらいいのー?”
「お前、モブなんて言葉どこで覚えたんだよ」
“いいから応えてよー”
「そうだなー、ぶっちゃけ俺には分かんないな」
“そうなのー?”
「だって俺、主人公だし」
“主、一発殴っていい?”
「いや、お前殴れないだろ」
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