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これが本当のチートな理不尽ってやつか

「どっからでもかかってきな!」


 

 俺を挑発させようとしてるのか、スカラは自信満々に言ってくる。

 そんなのに乗るわけないだろ。

 それに対し、俺は無言のまま先ず冷静にスカラを【鑑定】をかけようとする。

 だが、【鑑定】で見ようとしても、何故かスカラのステータスが表示されない。


 

(どうなってんだ?何でステータスが出ない)



 この事態に俺は顔色を変えずに内心驚いていると、【鑑定】をかけたのがバレたのか、スカラは俺に忠告してくる。



「私のステータスを見ようとしてるだろうが、無駄だぜ。神にはそういうの効かねぇから」

「なんじゃそりゃ........」



 そんなテンプレいらないだろ......。

 案の定というか、予想外というか、一番あってほしくなかったことに、俺は苦い顔をする。

 ステータスが見れたなら【削除魔法】でスキルを消そうと思っていたのに、早くも予定が狂ったな。

 


 スキルを消すのは諦め、俺はこのまま戦おうとすると、短気なのか痺れを切らしたスカラが先に動いた。



「来ねぇならこっちから行くぞ!」



 そう言うと、スカラは俺に向かって飛び出す。

 この時、俺はしっかりとスカラから目を離さなかった。 

 目を逸らしても、瞬きもしていない。

 ちゃんと警戒はしていた。

 なのに、そう言った瞬間、スカラは俺の目の前(・ ・ ・)にいた。


 

「っ!?」



 どんな速さだよ。

 もしかして、あいつも転移が使えるのか!?

 迫るスカラに反応出来ず、俺はただ固まっていた。

 気が付けば、スカラの拳が俺の腹に届こうとしていた。

 


「どらぁ!!」

「ぐっ!!?」



 美人な見た目とは思えない気合いの声と共に、スカラの拳が俺の腹に直撃する。

 拳が重い。

 腹から骨がみしみしと音を建てる 

 これまでにない痛みに、俺は声にならない声をあげ、後ろに吹き飛ぶ。



 まさか、あいつも転移が使えるのか。

 吹き飛ばされる最中、俺はなんとか踏み止まろうと【風魔法】を使い吹き飛ぶ勢いを殺そうとする。

 そして、なんとか【風魔法】を使い踏み止まれた俺は殴られた腹を抑えながら顔を歪ませる。



 くそ、骨が少しやられてるかもしれないな。

 腹に手を当てながら、俺はスカラの位置を把握しようと顔を上げる。

 だが、既にスカラは最初の所に居なく、ここまで来ていた。



「アッハハハハハハ!!」



 戦闘狂丸出しな楽しそうな笑みを浮かべながら、スカラは俺に追撃を加えようとする。

 このまま二撃目を喰らうのは不味い。

 俺は迫り来る拳を咄嗟に転移でかわす。



「お?」



 降り下ろされた拳は空振りに終わり、俺が突然居なくなったことに、スカラは驚いた様子をしている。

 このままやられっぱなしでいるわけにはいかない。

 俺はさっきのお返しに、後ろからスカラを殴りに掛かる。


 

疾風拳(ヴァンナックル)



 風を纏った拳はスカラの後頭部目掛けて真っ直ぐ伸びていくが、拳がスカラに届くことはなかった。

 スカラに直撃しようとした直後、スカラはまるで分かっていたかのように体を捻らせヒラリと拳をかわす。



 まさか、かわされると思っていなかった俺は驚きの表情をするが、そんなことを思っている暇はない。

 捻らせた勢いそのままスカラはまた俺の腹に向かって蹴りを入れようとする。 

  

 

「遅いぜ!」

「くそっ!」



 余裕な口振りをかましながら、スカラは俺の腹を蹴り上げる。

 かわされると思っていなかった俺は反応が遅れ、少し浅く蹴りを喰らったまま転移で一旦距離を取った。



 浅くとはいえど、先程のパンチで骨をやられたせいでかなり痛い。

 俺は乱れた呼吸を整えつつ、しっかりと魔法で傷を癒す。

 すると、視線の先ではスカラが何やらこの一連の流れから満足そうに頷ずいていた。

 


「いやー、お前中々強いなー。私の拳もろに受けて平気なんて」

「別に平気じゃねぇよ」  


  

 お陰で骨に少しヒビが入ったわ。

 嬉しそうに言うスカラに、俺は僅かに怒りを込めながら言う。

 これが肆神の、神王の次に強い神の力か。

 これは、かなりやばいな。

 今だ未知数なスカラの力に、俺は背中に嫌な汗を掻く。 

 どうする、どうやったら勝てる......。

 


 様々な思考を巡らせ策を考える俺とは反対に、スカラは未だ気分良さげに言う。



「それにしても、お前転移系スキルも持ってんのかー。かなり面倒だな」

「お前も使ってるだろ」    



 嫌気がさしながら俺は言うが、俺の言葉にスカラはよく分からないとばかりに首を傾げた。



「何言ってんだ?お前。私は転移なんて出来ないぞ」

「.......は?」   



 当たり前のように言うスカラに、俺は驚きを隠せなかった。

 一瞬思考回路が固まったような感じがしたが、直ぐに元に戻る。

 え、おい、ちょっと待て......。



「あれ、転移じゃないのか?」 

「当たり前だろ。普通に動いただけだ」

  


 あれの何が普通なんだろうか。

 衝撃過ぎる事実に俺は絶句する。 

 おいおい、まじかよ......。

 正直これは俺にとって衝撃過ぎた。

 これまで色々あったお陰で、俺のレベルは上がりに上がっている。



 だからこそ、そう簡単には負けないだろうと思っていたのに、まさか視認出来ない奴がいるなんて。

 無駄話が過ぎたのか、スカラは徐に片手を上にあげる。



 すると、その手の上に小さな光が現れ、そこから巨大な大剣が出てきた。

 長さはスカラと同じ位の大きさがあるだろうか。

 自分と同じ大きさの剣を片手でぶんぶん振り回しながら、スカラはにやりと笑う。



「こっからもうワンテンポ上げていくぞ」



 まじですか......。

 これでもやばそうなのに更に上げてくるのか。

 完全に戦いの主導権を握られ、俺は口許ををひくつかせる。  

 だが、武器か......。

 振り回される大剣を見ながら俺は暫し考え込むと、あることを思い付いた。



「いいぜ。やれるもんならやってみろ」

「上等だ!」

  


 俺の安い挑発にスカラは簡単に乗り、大剣を振り上げながら突っ込んでくる。

 目が馴れたのと、大剣を持っているせいか、微かにスカラの動きが見える。

 

 

「ひゃっはー!!」



 最早戦闘狂というよりただの狂人。

 美しい外見とはかけ離れた叫び声。

 スカラは大剣を軽々と操り俺を斬りに掛かるが、転移を繰り返し紙一重で避けていく。

 反撃が追い付かない。

 転移で避けるのがやっとだ。



 何も反撃出来ずに俺はただ逃げに徹し、タイミングを伺う。

 まだだ、まだその時じゃない。

 


「おいおい、避けてるだけかー!!」



 大剣を振り回すスカラから挑発の声が聞こえるが、今の俺には関係ない。

 タイミングを見計らいつつ、俺は避け続ける。

 転移の連続で魔力がどんどん減っていく中、俺は来るべき時を待つ。

 そして、そのタイミングはとうとうやってきた。



(きた!!)



 俺が狙っていた瞬間、相手が真っ正面から剣を降り下ろしていた時。

 今度は転移で避けず、俺はスカラを待ち受ける。

 


「喰らえゃ!!」



 避けないと悟ったスカラは大剣を思いっきり降り下ろす。

 降り下ろされる大剣に怯むことなく、俺は真っ直ぐスカラを見つめ、勝利の言葉を叫んだ。



「消えろ!!」


  

 叫んだ直後、スカラの持った大剣は音もなく消えていった。

 これで隙が出来た。

 突然持っていた大剣が消え、驚いたスカラはバランスを崩す。

 大剣が消えたことで大きな隙を作ったスカラに、俺は大きな一撃を与えるべく、両手をスカラの腹に向ける。



必中の束縛(ターゲット)



 隙が出来たスカラの腹の前に魔法陣が現れる。

 すると、突如スカラは固まったように動かなくなった。



「なんだこりゃ!?体が動かねぇ!?」



 身動きがとれず動揺するスカラ。

 そりゃあそうだろうな。

 そういう魔法なんだから。

 動けなくなったスカラだが、これもいつまで持つか分からない。

 


 いつか無理矢理壊されそうだ。

 とっとと決めてしまおう。

 そう思い、俺はスカラの両手で出現させた魔法陣に向かって拳を構える。



「知ってるか?この魔法は動きを止めるだけじゃないんだ」

  

  

 そう言うと、俺は魔法陣に渾身の一撃を叩き込む。



「吹っ飛べ!!」



 魔法陣に拳を叩き込んだ瞬間、魔法陣から叩き出されるようにして、炎と風の竜巻が勢いよく噴射された。

 


「うぉ!?ぐっ!.........ぐぁぁぁあぁあ!!!」



 炎と風の竜巻はスカラを包むようにしてまとわりつき、連れてかれるようにして、山の中まで吹き飛んでいく。

 山の方ではスカラが落ちてドゴンッ!!という落下音が山中に響く。

 木々が何本もへし折れ、土煙を上げている。



 あ、山壊しちゃった。

 スカラが吹き飛んでいく方を見て、俺は少しやってしまったと思った。

 あまり壊したくないと思ってたんだが、まぁいいか。



 取り敢えず、これで勝てたし。

 勝負が終わり一段落したところで、俺はホット落ち着く。

 まだ倒れたか分からない(・ ・ ・ ・ ・)のに。

 この時、今の自分の考えが如何に愚かか、思い知らされることになる。

 


 ホッと一息ついた瞬間、身体中に鳥肌がたった。



「っっ!?!?!!」



 身の毛がよだつような今まで感じたことのないような感覚。

 まるで後ろから刃物を突き立てられてるような、そんな感覚だ。

 まさか..........。



 嫌な予感がし、俺はゆっくりとスカラが吹き飛ばされた山の方を見る。

 土煙を上げながら静まり返っている山の中。

 その静寂は一瞬にして消えていった。



 突如土煙を上げていた場所から、爆発にも似た衝撃が起こり、更に大量の土煙を上げる。

 中から体は汚れているが、傷が見当たらないスカラがこちらにゆっくりと向かってきた。



「今のは中々効いたぜ」



 満足げに言うスカラだが、俺には何の冗談かと思った。

 おいおい、どうなってるんだよ........。

 例え倒せてないとしても、無傷はないだろ。



「バケモンかよ.........」



 理不尽過ぎるこの展開。

 流石の俺も思わず呟く。

 軽い絶望を感じていると、スカラは顔をにやつかせながら聞いてきた。



「なぁ、お前レベルいくつだ?」



 唐突な質問に俺は暫し無言になったが、警戒を強めながら簡潔に応えた。



「.......318」

「まじかよ!?そのレベルでここまでやれるのか!」



 俺のレベルが色々な意味で予想外だったのか、スカラは更に上機嫌になる。 

 レベルは最近見て気づいた。

 レッドドラゴン戦以来見ていなかったから、久々に見て驚いたが、今となってはどうでもいい。  

 俺は上機嫌なスカラを尻目に何か他に方法はないかと考える。



 上機嫌ついでに教えてくれたのか、スカラは自分のレベルを教えてくれた。



「私のレベルは523だ。そんな私にお前はそのレベルでここまでやれたんだ。十分すげぇよ」

「嘘だろ.......」



 スカラの口から告げられた規格外過ぎるレベルに、俺は考えていた思考を止める。

 レベルが違った。次元が違った。

 はなから勝てる勝負じゃなかった。


 

 驚きのレベル差に、俺は何も言えずただただ呆然としていると、急にスカラの周りに変化が起き始めた。 



「気付いてたか?この戦いでまだ私はスキル技を一つも使ってないんだぜ?」

  


 ぞわぞわと髪の毛を逆立てるスカラの言葉に、俺はハッとなる。

 確かに、思い返せばこれまでスカラは拳で殴るか剣で斬るかしかしていない。

 魔法やスキルを使ったところなど一度もなかった。



 どうする、どうやってこの場を切り抜ける......。

 一度は諦めかけたものの、俺は最後まで諦めず再び打開策を考える。

 見ると、スカラの周りのおぞましさは徐々に増していき、それに比例して髪の毛がどんどん逆立っていく。



「俺が負けを認めるのは?」

「なしに決まってるだろ」


  

 だよなー。 

 一部の希望を乗せて発した俺の言葉は、スカラによって無惨に散る。

 どうする、反撃するか?

 いや、真っ正面からいったら返って危険だ。

 魔法で遠距離から?

 いや、今下手に手を出して怒らせたらアウトだ。

 迫り来るタイムリミットに俺は段々焦りが生じ、思考が鈍ってくる。



(万事休すか.......)



 何も思い付かないまま俺は固まっていると、突然横からリーナが出てきて、俺の前に立った。



「スカラ様!もうお止めください!それ以上やればこの世界に甚大な被害が生まれます!」


 

 このスカラから醸し出る危険な感じをリーナも感じたのか、リーナは止めるように呼び掛ける。

 もう打つ手がない俺にとっては、このリーナの呼び掛けで止まって欲しいと思ったが、今のスカラは言葉程度で止まる程甘くはない。



「何を言おうがもう無駄だ!!」



 その瞬間、恐ろしい気配を感じさせていたスカラの身体は突然発光する。

 ピカンッと一筋の光が見えたと同時に、俺は自分の中の本能が赤信号を告げ、咄嗟にリーナに抱きつく。



「リーナ!」



 リーナに飛び付いた俺は、転移でその場から離れた。

 転移で離れた直後、その居た場所の半径数キロが消滅した。

 

おまけ


【破壊の理由】


「スカラって破壊の常習犯なんだよな」 

「言い方があれだが、まぁそうだぞ」 

「治そうとは思わないのか?」

「無理だな」

「即答するなよ」 

「私が治すというより、世界をもう少しましにした方が早い」

「だから神になったとか言わないよな?」

「え?そうだぞ」

「そうなのかよ.......」



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