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神という名のただのラスボス

 夜兎がリーナと軽く絶望し合っている同時刻、自室でメトロンは一人頭を抱えていた。



「うわー、何でこんなことになったのかなー」



 ソファーの上で頭を抑えながらゴロゴロと転がるメトロン。

 何故ここまで思い詰めてるのかというと、先日スカラと共に神王に呼ばれた時のことが原因だ。



 話した内容は色々あるが、結果から言うと、神王にメトロンがこれまでした行いはバレていた。

 「自分の担当世界に別世界の人間を送ったな?」そう言われた時、正直メトロンは生きた心地がしなかった。



 神王は温厚な人で知られているが、それでもメトロンはバレたことが恐ろしかった。

 顔は青ざめ、背中に冷や汗を流しながら、言い訳さえも出来ない。 

 これからどんな罰を受けるんだろうか。

  


 恐怖や不安、焦りがごちゃごちゃと混ざる心中の中、隣ではスカラが何てことなさそうにしていたが、メトロンに隣を向く余裕などない。



 いったい何をされるんだろうか。

 ただただそれだけを考えていたメトロンだが、神王の判決は意外なものだった。



 なんと、神王はメトロンを軽い雑務を与えるだけで他はお咎めなし。

 それに加え、スカラと夜兎の戦いを容認したのだ。

 この結果にメトロンは言葉が出ない程に驚き、スカラは「流石神王様ー。太っ腹だな!」とヒューっと口笛を吹きながら喜んだ。



 いつもならこの失礼極まりない態度のスカラに、メトロンは一言もの申すところだが、余りの驚きさに何も言えなかった。



 何故許してくれたんだ?

 メトロンはそう思って理由を聞いてみたところ、どうやら神王も夜兎のことが気になっていたらしい。



 人間にして神に近い力を持つ存在。

 この異質な存在には神王も興味があったようだ。

 だから、その実力と性能を測る為に、スカラとの勝負を許可したとのことだ。



 だが、これでもスカラは肆神の一人。

 当然制約をつけてある。

 じゃなければ、勝負の途中で地球が破滅しかねない。

 この制約にはスカラも異論がないようで、すんなり決まり、勝負が決まったわけなんだが、それでもメトロンは不安だった。



「絶対なにか裏あるよ~」



 危険分子とも言えるスカラを態々勝負させるなんておかしすぎる。

 実力が見たいなら他の神にでもすればいいのに、これには他の目的があるに違いない。

 

     

 そう考えたメトロンだが、考えれば考える程悪いことしか頭に浮かばない。



「もしかして、罰が軽いのは建前で、本当はスカラと決闘させることによって地球を破壊させる気なんじゃ!?」



 一応、制約の一つには【地球を破壊するような攻撃を地球に直接向けてはならない】とあるが、スカラはルールなんて守らないルールブレイカー的存在だ。

 途中で忘れてやっちゃうに決まってる。

 


「そして、あわよくば僕の世界も.......」



 ネガティブ思考が進むと、まともな判断も出来ないんだろうか。

 段々暗い憶測がエスカレートしていき、メトロンの頭の中に嫌な未来が見え始めている。



「あー、終わった.........」



 もう自分に未来はない。

 沢山の暗い将来が頭に浮かんだせいか、メトロンは頭を抱えたまま動かなくなり、今にもチーンとご臨終の音が聞こえてきそうだ。

 


「くそぅ!もうどうにでもなれ!」  



 すると、やけになったのかソファーから思いっきり立ち上がり、盛大に叫ぶ。

 考えても拉致があかない。

 もう、世界が壊れようが壊れまいが関係あるか!



 果てのない暗い妄想に嫌気がさし、自暴自棄になるメトロン。  

 そして、近くにあったパソコンに近づき、少し乱暴気味に電源を付ける。



「ゲームやろ」



 もう何も考えたくない。

 考えることを放棄したメトロンは現実から逃れる為に、新たに始めたゲームをやり始める。

 暗い未来を感じたメトロンだったが、果たして神王がそんなことを考えてるかは、誰にも分からない。






 

ーーーーーーーーーーーーー



 





 スカラに会ってから二日後。

 とうとうこの時がやってきてしまい、俺は軽くため息をつく。



「まじでやるのかー.........」



 日本の何処かの山々が連なる場所の上空で、俺は嫌そうな顔をする。   

 場所は転移で適当によさそうなところを見つけたからそこにした。

 人がいなければなんでもいいからな。



 スカラとの勝負に嫌そうにはするが、不思議と緊張感がない。

 それは俺よりも重症の奴が隣にいるからなんだろうな。

 そう思い、俺は横目でリーナを見る。

 


「はぁ、とうとうやってきてしまったぁ........」



 俺の隣では、心臓発作でも起こしてるのかと言いたくなるくらいに、【天使化】状態のリーナは心臓に手を当て深く深呼吸する。  

 不安過ぎて胃でもやられたのか。

 それぐらいリーナはきょどっていた。



 こういう時って誰か一人がそうなってると周りは冷静になると言うが、本当だったんだな。

 


「大丈夫か?」

「も、問題ない」



 心配する俺に、リーナは緊張の顔から無理に笑顔を作るが、顔がひきつり過ぎて全然大丈夫そうに見えない。  

 余程スカラの評判が悪いのか。

 真面目なリーナに楽に考えろと言っても無理だろうから、今はそっとしておこう。



 こんなんで大丈夫なんだろうか。

 別の意味で不安になる俺に、メルは励ましの言葉を送ってきた。


 

「頑張ってください!マスター。マスターなら【破壊神】なんて軽くいけるです!」 

「だといいけどな........」


  

 どこにそんな自信があるんだろうか。

 リーナとは逆に楽観視過ぎるメルに俺は苦笑いする。

 ここには丁度いいやつがいないんだろうか。

 極端な二人に挟まれ、俺はそう思っていると、時間が来たのか、目の前に前に見た魔法陣が出てきた。



「どわぁ!?」   

「あっ」



 目の前に現れた魔法陣からは、案の定スカラが出てきたが、見えたのは一瞬だった。

 魔法陣から吐き出されるようにして出てきたスカラは、上空から山の中に真っ直ぐ落ちていく。


  

 俺はそれを目で追いながらスカラが落ちた方を見る。

 綺麗に落ちていったなー。 

 呑気にそんなことを思っていると、山の中から汚れた格好のスカラが飛んできた。 

 


「くそ、不意打ちとはやってくれるな.....」

「いや、なんもしてねぇよ」



 やられた感を出すスカラに、俺は冷静に突っ込む。

 そっちが勝手に落ちただけだろ。

 変な言い掛かりは止めろ。

 髪に乗った葉っぱを払うスカラを見ながら俺はそう思うと、ここで一つ聞いておきたいことがあり聞いてみた。  

 


「なぁ、一応聞いとくが、お前どうやって俺のこと知ったんだ?」

「あぁ?そりゃあメトロンから聞いたに決まってんだろ。あいつが私と対等に渡り合える奴がいるって言ったんだ」


  

 当たり前のように言うスカラに、俺はやっぱりなと思う。

 神で俺のことを知ってる奴なんてメトロンしかいない。

 予想はついていたが、これではっきりした。



「メル」

「はいです」

「前にメトロンの部屋にあったパソコン。あれにもう一度侵入出来るか?」

「一度入った電子機器は全て余裕です」

「もう一度荒らしてこい。それとそのパソコンや他の場所に移れるなら使える情報は全部かっさらってこい」

「了解です!」



 そう言うとメルの声が一切しなくなった。

 行ったか。

 メルが行ったことを確認すると、俺はふっと鼻で笑う。

 人のことを売った奴には制裁を下してやる。

 


 俺を売ったことを後悔しろ。

 ふふっと黒い笑みを浮かべながら、俺は内心微笑を浮かべる。 

 本当なら、俺が直接行きたいところだが、何故だが転移であの部屋には行けなかった。



 なにか特別な魔法でも仕掛けられてるのかもしれない。

 だからメルに行かせた。

 幸い、メルの方は行けるみたいでよかった。 

 まぁ、俺が行けたとしても、今は無理だけどな。

 そんなことをしたらスカラが機嫌を損ねて地球が破滅する。

 それだけは避けなくては。



「そんなことより、早くやろうぜ。こっちはうずうずして仕方ねぇんだ」

  


 さっきから我慢していたのか、スカラはやりたそうに手をばきばきと鳴らす。

 殺る気満々なご様子に、俺はさっきまでの気分が一気に吹き飛ぶ。

 あー、とうとうやるのかー。 



「それでは神谷夜兎。健闘を祈っている」

「あぁ」

  


 リーナはそう言うと、俺から離れていく。   あいつは観戦はするだけで、手助けはしない。

 そういう趣旨で着いてきてるからな。

 別れを告げるリーナに俺は返事をするが、目はしっかりとスカラを離さない。

 じゃないと、さっきから感じる殺気にやられそうだ。 



「さぁ、楽しませてくれよ」

「何処の悪役の言葉だよ.....」



 この神らしからぬ悪役感満載な台詞。

 完全なるダークサイドなポジションのスカラは、にやっと笑いながら殺気を放ち続ける。

 全く、戦闘狂にもほどあるだろ。

 戦闘狂なスカラに俺は少し呆れ、体制を整える。



「やるだけやってやるよ」

「勝負の始まりだ!」



 腹を括る俺に、スカラは勝負の火蓋を切る。

 今ここに、邪神でも魔王でもない、最凶最悪なラスボス的存在との、戦いが始まる。

 




おまけ


【制裁】



「さーて、今日もやるかなー」 

カチッ

「うん?知らないメール?なんだろう」

カチッ

「あれ?なにこれ?ウィルス?ちょ、どんどん広がってくんだけど!?どうなってんの!?」

『やーい、引っ掛かったー』

「こ、これは!?........」

『データは頂いた。またなとっつぁん』

「あ、あの野郎ーーーー!!!」



ーーーーーーーーーーーーー


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