「接触」
「..........っうん.....」
「痛てて......どうなったんだ?」
頭を押さえながら、■■■■はフラフラと立ち上がった。
どうやら、先ほどの衝突による衝撃で頭を強く打ってしまったようだ。
自分の手に生ぬるい暖かさを感じ、頭を押さえていた手を見てみると血が付いていた。
「後で治療室に行かないとな。」
見張り台から降りると、アナウンスが流れていた。
「アーク内市民につぐ。先ほどの揺れによる被害は軽微であり、心配する必要はない。市民諸君は落ち着いて、冷静に行動してほしい。なお負傷者は近くの治療室に行き診断を受けること。」
アナウンスが流れる中、人の叫び声や動揺した声が聞こえてきた。
無理もない、今まで経験したことないような事態が起こったのだ。
たまには治安部隊の一員として、自分に出来ることをしなければ。
およそ真面目とはいえない勤務態度である■■■■であったが、彼もそれなりの思いを秘めていた。
「皆さん!落ち着いてください!先ほどアナウンスで言ったようにアークの被害はたいしたことありません!
ですので、まず自分の家族と連絡を取り、無事を確認してください。もし負傷した人がいたなら、手当か治療室へ運んであげてください!」
こうして、治安部隊と市民の協力により、混乱によるパニックは防がれた。
騒ぎが沈静化し始めたとき、またアナウンスがかかった。
「こちら、バークレー中佐だ!治安部隊は自分の持ち場の仕事が終わり次第、ただちに作戦室に向かうように!詳細はそこで教える。」
「こりゃ、治療室に行ってる時間はないかな。」
作戦室に向かうとすでに何人か集まっており、今日起きたことについて意見を交わしていた。
「なぁ、一体何が起きたんだ?ありゃ、地震とかじゃないだろ?」
「聞いたところによると、なにかがアークの近くに落ちたらしいよ?」
「もしかして、攻撃を受けたの?ここが?!」
「こちらも迎撃態勢を取ったらしいから、あり得ない話じゃないかも.....」
「あのさ、俺、今日気になるあの子に告白してo.kもらっちゃった!」
「世界の終わりだ!!派手に散ってやるぜ!!!!!!」
5番目の人はおめでとう!6番目は早まるんじゃない!!!
「よっ!■■■■!今日はびっくりしたな!」
名前を呼ばれながら肩を叩かれ、振り返ってみるとそこには見知った顔があった。
「ああ、まったくだよ。ベン!」
「ロベルトね。」
「しかもよりにもよって俺が見張りをやる時間に起きるなんて運が良いのか悪いのか。
どう思う?ドナルド?」
「ロベルトだって!!!」
ロベルトと呼ばれる少年は目に涙を浮かべながら、抗議してきた。
「いくらなんでも親友の名前を間違えるのはひどいよ!■■■■!」
「ごめん。ごめん。冗談でも言ってないとやってられなくてさ!」
「はぁ、もういいよ。お前がそういうやつだってことはもうわかってたし....。」
「悪かったって!今度レーションおごるからさ!機嫌直してくれよ!」
「分かったよ。許してやるよ。」
そんな他愛ない会話をしているとバークレーともう一人誰かが部屋に入ってきた。
「よし、全員集まっているな!聞け!お前らの中にも知っている者がいるだろうが、本日07:00時ごろアーク付近に未確認物体が落ちた!衝撃による被害は大したことはないが、問題はこの物体から発生しているなんらかの妨害電波だ。これのおかげで現在、通信系統がダウンしており早急に解決しなければならない。よってこれよりこの物体の撤去あるいは爆破作業を行うためのチームを送ることになった!」
「ならパペットを使えばよろしいのではないでしょうか?」と誰かが進言した。
パペットとは人間が遠隔操作することで動かすロボットのことだ。
危険地域での作業や災害現場での人命救助の目的で開発されたものであり、まさにこのような状況で使われるものなのだ。
「中佐、そこからは私が。」
眼鏡を掛け、白衣を着た男が前に出た。
「先ほど、中佐がおっしゃったようにこの物体...仮にアンノウンとしましょう。このアンノウンからは今も妨害電波が出されており遠隔操作のパペットでは近づくこともできません。しかもこのアンノウンはスキャンの結果、構成物質および内部構造が一切不明であり、可能ならばサンプルの採取および内部の調査を行いたいのです。そのため今回は人員を派遣することに決定しました。」
「全員分かったな!それではこれより調査に向かう人員を告げる! ジィココブ!、アメリア!、ルーカス!リリィ!ロベルト!そして■■■■!残りは引き続き通常業務に戻れ。名前を呼ばれたものはパワードスーツ着装とAliceへの接続が終わり次第、3番ゲートに集合せよ!以上だ!」
「名前、呼ばれたな。俺たち...。」
「ああ」
「アークの外か....。少し怖いよ。」
「ピクニックだと思えばいいさ、ただし景色は最悪だけど。」
「灰色の空、枯れ果てた草木、そしてどっかの誰かのガイコツが転がってる。」
「ああ、最高のピクニックになる。」
二人はそう冗談を言い合いながら笑った。
「よし!それじゃ準備しますか!」
「そうだね。調査だからと言って武器を持ていかないのはなしだぞ!■■■■!」
「分かってるよ。ロベルト。ちゃんと持っていくさ。」
「コ●ドームは武器に入らないからな!」
「くそっ!、何故わかった!」
「お前そのネタはもう3回も使って怒られただろ!いい加減よしとけって。」
「男の夜戦には必要な武器でしょうが!!」
「まだ朝だ!馬鹿やろう!」
確かに、いいジャブだ。効いたよ。頭がクラクラしやがる。
「後...急いで治療室に行ってこい。頭から血がものすごい出てるぞ。」
ああ~~だからか。そういえばそういう設定ありましたわ。
第1章 第4話「新発見!」に続く。