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ネクネクネーコと雲の輪

作者: 秋風 稲穂
掲載日:2014/12/24

ネクネクネーコは陽気なさすらい猫。

ポカポカと暖かい場所を求めて旅をする自由猫なのです。

ポカポカと暖かい場所をまとめたポカポカ百景集を作成するために今日も旅をしているのです。


ある国へネクネクネーコが訪れた時のことです。

その国は空一面に雲が広がっていて、どこに行っても青い空すら見えない暗いところなのです。

暖かな光も浴びることが出来ないので、とてもとても寒い寒いところなのです。


そんな国をネクネクネーコは地図を見ながら旅をしているのです。

本当ならこんな寒くて寒くて、ブルブルと震えが止まらない場所なんてネクネクネーコは行きたくはありません。

ネクネクネーコは寒いところは大嫌いなのです。

しかし、ある仲の良いさむらい猫にこの国の話を聞いていたのです。

どこ行っても暖かな光を浴びることが出来ない寒い国だけど、ある丘だけの上だけは雲が全くなく気持ち良い光を浴びることが出来ると。

その丘の上だけ穴が開いたような光景は美しくて、そして何よりも周りが寒いせいかとても暖かく感じるそうなのです。

気持ち良すぎてその丘からしばらく離れなれなかったと話した友猫は、とても幸せそうな顔をしていました。


そんなに気持ちが良いのならと、ポカポカ百景集を作成するためにもネクネクネーコはこの国へと訪れたのでした。

寒くて心が砕けそうになる旅を必死に耐えながらネクネクネーコは目的地である丘へと向かっていくのです。


やっとの思いでネクネクネーコは目的地の丘へとたどりつくことが出来ました。

しかし、どうしたことでしょうか?

丘の上には話に聞いたような雲に穴が開いた光景などは見当たらないのです。

周りを見まわしてみても、雲が一面に広がっているだけなのです。

青い空も、暖かい光もどこにも見えないのです。

ネクネクネーコは地図を何度も何度も見直してみましたが、場所は間違っていないようなのです。

楽しみにしていた暖かい光を浴びての昼寝が出来ないことに、ネクネクネーコはとても悲しくなってしまいました。


そんなネクネクネーコのところに3羽の小鳥がやってきました。

3羽の小鳥はネクネクネーコの近くでピヨピヨと鳴き始めました。


『猫さんや猫さんや、そんな悲しそうな顔をしないでおくれ』

『そうですよ、そんな泣きそうな顔をしては駄目ですよ』

『一体どうしたんだい?何が悲しいのかい?』


首を傾げながら、心配そうに小鳥たちが問いかけてきます。


『それはきっとね、この丘の上に輪のように広がっていた青空が無くなったからだよ』

『ああ、そうかもしれないね。』

『きっとそうだよ、いつだったかやってきた猫さんが気持ちよさそうに寝ていたからね』


空を見上げながら小鳥たちは続けてきます。


『ああ、でもいつから輪が塞がってしまったんだろうね』

『本当にね、ああ、しかし寒いね』

『もう、暖かい場所が無くなってしまったからね、早く帰ろうか』


『猫さん猫さんや、あなたも早く帰った方が良いよ』

『そうだよ、もうこの場所に輪が広がることはないよ』

『さぁ、帰ろう帰ろう』


羽を軽くはばたかせて、3羽の小鳥はピヨピヨとネクネクネーコに鳴いてから、どこかへと飛んでいきました。

そんな3羽の小鳥からの話を聞いたネクネクネーコですが、何を言っているのか全然理解出来ませんでした。


そう、ネクネクネーコは陽気なさすらい猫。

ポカポカ百景集を作成するために旅をするただの自由猫なのです。

ピヨピヨと鳥の言葉を話してきても理解が出来るわけがなかったのです。

去っていく小鳥たちを首を傾げながら見つめていただけだったのです。


しばらく雲が一面に広がっている空を眺めていたネクネクネーコですが、ブルブルと体が震えてきていることに気づきました。

もう寒くて寒くて体の震えが止まらないほどなのです。

せめて少しでも暖かくなれないかと周りを見まわしてみたところ、丘の上に大きな木があることに気が付きました。

大きな木の近くには草花もこの国では多めに生えていましたので、この草花にゴロゴロとすれば少しは暖かくなるのではないかと思いました。

さっそく、ネクネクネーコは草花の上でゴロゴロとしてみたのです。

するとどういうことでしょうか?

寒い環境のせいか、草花は小さくしぼんでおり、水滴が葉っぱや花についていたため、とてもとても冷たかったのです。

ネクネクネーコが思わず声を上げながら、飛び起きてしまうほどだったのです。

飛び上がってしまったネクネクネーコですが、運が悪いことにさらに大きな木にも勢いあまってぶつかってしまったのです。


痛いし、寒いし、暖かい光を浴びての昼寝も出来ない。

ネクネクネーコはとてもとても悲しくなりました。

大きな涙が目からこぼれ落ちてきそうなくらいに、ウルウルとしてしまった時のことです。

大きな木の上から何かがネクネクネーコのところへと落ちてきたのです。

少しびっくりしながら落ちてきたものを見てみると、何かの草を綺麗に編み込んで作り上げている靴のようでした。

ネクネクネーコは色んな場所を旅をしてきていましたが、その靴は見たことがありませんでした。

さらにその靴はとても大きくて、ネクネクネーコの足を入れてみても余裕があるほどなのです。


ネクネクネーコは靴を眺めながら大きな木を見上げてみましたが、木の上がどうなっているかまで見ることが出来ませんでした。

それくらい大きな木だったのです。

そこで、上の方がどうなっているのか気になったネクネクネーコは、木を登ってみることにしたのです。

ネクネクネーコは木登りが得意なので、スルスルと高いところまで登っていきました。


木の頭まで登りつくと、そこにはグーグーと眠っている一匹のネズミがいました。

ネクネクネーコはとりあえずネズミを引っかくことにしました。


ネクネクネーコは陽気なさすらい猫。

猫の本能として、とりあえず無防備なネズミを仕留めてみたかったのです。


ネクネクネーコの爪がネズミの体に触れる直前で、ネズミは目を覚まして体をひねらせて避けてしまったのです。

ネクネクネーコの登場に驚いたネズミは、驚きながらチューチューと何かを言ってきます。


『待て待て、待ってくれ、殺さないでくれ』


必死にネズミは助けを求めてくるのです。

しかし、ネクネクネーコはどこにもいるような旅をする自由猫なのです。

ネズミの言葉なんて分からないのです。

ネクネクネーコがネズミを睨みながら、足を振り上げると、ネズミはよりチューチューと大きな声を上げてくるのです。


『ああ、殺さないでくれって!』


そう言いながらネズミは、いきなり空へと向かって飛び上がるのです。

ここは大きな木の頭なのです。

木から離れてしまったネズミは宙を舞ってから落ちてしまうことでしょう。

突然の行動にネクネクネーコはびっくりとしてしまいました。


ネズミが落ちていく光景を想像していたネクネクネーコですが、なんとネズミはそのまま空を上へと登っていくのです。

何もないところを登っていくネズミを見たネクネクネーコは驚きながらも、木の上へと自分の足を置いてみました。

しかし、ネクネクネーコの足はスカッと空ぶりをしてしまうのです。

自分の足と登っていくネズミを見比べてしまうネクネクネーコですが、そこでネズミが何かを履いていることに気づきました。


ネクネクネーコは木の下で見つけた大きな靴のことを思いだして、その靴をためしに履いてみてからさっきと同じように木の上へと足を置いてみました。

すると今度はまるで木の幹をつかんでいるような感覚がするのです。

少しずつ靴を履いた足だけを使ってから器用にも木を登っていくことが出来ました。

気が付けばネズミはもう見えないほど高いところまで登ってしまっているみたいです。

とりあえず、ゆっくりとネクネクネーコも見えない木を登っていくことにしました。



どこまで続いているか分からない見えない木を登っていくと、いつの間にか周りが雲だらけとなっていました。

とてもとても高いところまで登ってしまっていたのです。

白くてふわふわの雲が周り一面に広がっていたのです。

ネクネクネーコは思わず雲をさわってみましたが、スカッと空ぶりをしてしまうのです。

そこで、木と同じように靴を履いた足で触ってみると、フワッとした雲にさわることが出来たのです。


ネクネクネーコは気をつけながら、見えない木から雲へと移動してみました。

水の上に足を乗せているだけのような、ふわふわとした感じですが、ネクネクネーコは雲の上に立つことが出来たのです。

感動したネクネクネーコが思わず上へと顔を上げると、そこには真っ青な空が広がっていたのです。

そう、ここは雲の上なのです。

雲の上では、綺麗な空が広がっていたのです。

そしてそして、何よりも暖かい光がこれでもかとネクネクネーコを照らしているのです。


ネクネクネーコは思いました。

ここは何て素晴らしいところなんだと。

もう、ネズミのことなんて忘れて、さっそく昼寝をしようと体をまるめようとしました。

しかし、ここは雲の世界なのです。

特別な靴のおかげで立つことが出来ているだけなのです。

体をまるめようとすると、バランスをくずしてしまって、雲から落ちてしまうかもしれません。

そのことに気づいたネクネクネーコは、何とか、本当に何とか昼寝への思いをがまんすることが出来たのです。


このままではせっかくのポカポカと気持ち良い場所での昼寝が出来ません。

ネクネクネーコはどこか良い場所はないかと雲の上を探してみることにしました。



しばらく雲の上を歩いていると、大きな大きな人が足を折り曲げてから、座り込んでいる姿を見つけました。

あんなに大きな人が座ることが出来る場所なら、昼寝も出来るかもしれないとネクネクネーコは思いました。

その大きな人がいるところまで、心をおどらせながら歩いていったのです。


大きな人のところへたどり着くと、ネクネクネーコは聞きました。



「そこで昼寝しても落ちないの?」



突然話かけられた大きな人は驚いて、ネクネクネーコの方を見つめてきます。

その顔は雲のように白いひげを生やした、優しそうな男のようでした。

何も言わず見つめてくる大きな人に、ネクネクネーコはもうがまんが出来なくなりました。

男の返事を待たずに、男の足をよじ登ってから、体をまるめることにしました。

何となく、男の上だったらきっと大丈夫だろうと考えたのです。


いきなり自分の足をよじ登って眠り始めたので、大きな人はびっくりとしました。

眠っているネクネクネーコを改めて見ていると、足に見覚えのある靴があることに気づきました。

大きな人はネクネクネーコを起こさないように注意しながら、足から靴を外しました。

そして、大きな人がその靴を履いてみるとピッタリなのです。


ゆっくりと大きな人は立ち上がると、ネクネクネーコを自分が座っていた場所へと置きました。

その場所は雲の下には見えない木の枝葉が敷き詰められていて、雲の上だというのに落ちることがないのです。

そんな雲の上で、ネクネクネーコは気持ちよさそうにグーグーと眠っているのです。

そんな姿を大きな人は目を細めながら見つめると、ホーッと息をつきました。


恐る恐ると雲の上に大きな人が立ち上がると、次に雲の中に手を入れて、大きな棒を取り出しました。



「さて、しばらく仕事出来なかったから頑張らないとな」



棒を振り回しながら、大きな人は雲の世界を歩いていきます。



「うわっ!のぞき穴が塞がっているじゃないか」

「ああ、隣の国まで雲が広がっているじゃないか」



と悩ましい声を上げながら、雲へと棒を差し込んで大きくまわすと、雲に大きな穴が出来ました。

棒で大きく振るうと雲が切れたり、消えてしまったりと、雲の世界にとって余分な雲を切り分けているのです。



「あのいたずらネズミめ、見つけたらどうしてくれようか」



ちょっと低い声が雲の世界に響きました。



あまりの気持ち良さにグッスリと眠ってしまっていたネクネクネーコですが、目を覚まして見ると見覚えのある丘の上にいました。

首を傾げながら、周りを見てみても雲の世界は広がっていません。

しかし、空を見上げれば雲が輪のように広がっていて、輪の中から綺麗な青空がうつしだされています。

そんな美しい光景の中で暖かい光を浴びているこの場所は、確かに気持ちが良いなとネクネクネーコは思いました。

雲の世界も良かったけど、ここも良いなと思いながら、ネクネクネーコはまた眠りにつくのです。

ネクネクネーコは昼寝が大好きなので、何度でも眠ってしまうのです。



そんなネクネクネーコの近くには、ネクネクネーコの足にピッタリな靴が一足と、久しぶりの光に喜ぶ様々な動物が踊っていました。




おしまい


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― 新着の感想 ―
[良い点] 温かで可愛らしいお話でした。ネクネクネーコなど固有名詞がポップでこれまた愛らしさが増しております。 主人公は喋らないのかしらと途中まで思っていたのですが、逆に猫特有の気まぐれさが感じられ…
2014/12/26 20:59 退会済み
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