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プロローグ6
俺の1番古い記憶は、母親に首を締められているシーンだ。
「や、めて。お母さん……」母の細い指が俺に食い込む。対して、それほど苦しくはない、加減していたのか、真偽はわからないが、それを思う時、そうする事にしている。蒸し暑い、たぶん夏休み。ランニング、で短パン。俺の格好。外でセミがないていた、あれってさ求愛らしいな。ヤりてー、ヤりてーって叫んでるらしいな。人も蝉みたいな生き方ならば良かった。産み落とされ、7年地中で過ごし、SEXして死ぬ。シンプルでいいじゃないか。
で、俺を締めながら母親が謝り泣いている。その時の俺は、母さんも大変なんだ、だったら死んでもいいかなと思っていた。
結局俺は助かったけれど、母親はそこから精神をやられてしまった。
今ではそんなのは、変質したけれど。日がな病室でぼんやりしている母親を、俺を殺そうとした母親を、とても愛していたんだ。とてもね。




