3 若草と枯木
おや、少年のようすが…?
狭く人気の無い、静かな倉庫街を歩く背後から若い男の声がする。
「……」
「おい待て!」
「…………」
面倒は御免と声を無視して歩くが、その脇をすり抜けた影は道の真ん中に立ち塞がった。
「無視すんなッ! 待てっつってんだろぉ!?」
「……何か用か」
上背もあり、バスタードソードを背負い、部分的ながら金属鎧まで着込んだ、歳の割には立派な体格の少年に道の真ん中を通せん坊されては進めない。
目が据わって時折震えたりと挙動が怪しいが、左右どちらに避けてもこちらに寄ってくるのですれ違えない。
おまけに関節や胸に当てられた鋼板が更に隅を塞いでいる。
にっちもさっちも行かなくなり、ため息をこぼしつジンは仕方なしに渋々の嫌々で話を聞いてやる事にした。
「何か用かだと!? よくもぬけぬけと、テメェがシリアさんを狙ってんのはバレバレなんだよ!!」
「……何を言っているんだ?」
「しらばっくれてんじゃねぇ! 受付のシリアさんだよ! わざとらしく話を延ばしやがってこのストーカー野郎が!」
少年は鎧を鳴らして地団駄を踏む。
彼は明らかに的外れな事を言っている。
「フム、それがどうかしたか?」
ジンはそれを適当にあしらう。
正気とは思えない手合いに何を言っても無意味である。
その態度を開き直りと取り、錯乱者は誤解を重ねる。
「やっぱりかこの野郎ッ!!」
無機質な目でそう言われた彼は、遂に激情に身を任せた拳を振りかぶってジンに迫る。
ジンは後ろに一歩二歩と下がるが、後退よりも前進が速いのは自明の理で、少年の右拳はジンの顔を撃ち抜かんと追走する。
だが、まさに拳が命中する直前ジンは後退を止めた。
膝を始め、股関節、腰、肩など全身の関節をロックし、大地と一体化の姿勢をとって左手を握り、腰だめに軽く構えた。
「うおぉォォォッッ!」
そして、迫り来る力任せな拳が首筋をかするほどの紙一重ですり抜ける。
非常にゆったりした動きでありながら、無駄の削ぎ落とされた左拳は、装甲に覆われていない少年の右脇のあばら骨へと辿り着いた。
肌にヒットした瞬間に少年の肉体に被弾部を中心とした衝撃の波紋が走る。
「ぐぅッ!?」
少年は肝臓に受けた衝撃による、内臓を引っ掻き回されたような苦痛でその場に倒れ伏した。
「があぁっ!? 」
とてもじゃないが、攻撃力のあるとは思えないような、緩やかな拳が自分を地に伏させたのだ。
少年は訳も分からず、痙攣する膓に悶える。
しかし、ジンは追撃の手を緩めない。
腹這いに倒れ伏し、震える少年の両腕を捩りながら背中へ乗り、脚で肩を踏みつけて何時でもどちらかの肩を折れる体勢で膝で立つ。
「あ゛あ゛ッ!?」
「黙れ」
「むぐっ!」
少年の口にその場で拾った適当な石をねじ込み、千切った青年の服で即席の猿轡を作った。
仕上げに芋虫ようになった少年の頸動脈を腕で締めて意識を刈り取る。
少年を無力化しても特に表情に変化の無いジンは顔を上げ、路地に眼光を浴びせる。
「そこにいる奴、こいつの命が惜しければ出てこい」
ジンが警告の言葉をかけたのと同時に路地に一人の気配が現れた。
「はっはっは、見つかっていたでござるか。隠行はなかなかのものと自負していたんでござるがなぁ。降参でござる」
路地から両手を上げて出てきたのは、つや消しがされた鎖かたびらの上に目立たぬ黒一色の服を着た、長身で穏やかな顔立ちに糸目の女だった。
腰には、短く、反りの無い細身の剣を黒塗りの鞘に収め、背骨と交差するように差している。
180センチメートル弱のジンと肩を並べるのだから、女性にしてはかなりの高身長だろう。
「その者の無礼は詫びるでござる。済まぬがそれぐらいにしてもらえぬか?」
いたずらをしかられたような顔に片手を持ってきて軽く詫びながら、もう片手でショートカットから尻尾のように束ねた、一房の後ろ髪が出た黒髪の頭を掻く。
「それはこれからのお前の弁明次第だ」
「説明させてもらえるでござるか、ありがたい」
「仲間だろう。ならこいつの行動を弁護してくれ。でなきゃお前達を豚箱に送る」
こいつといいながら、塞がれた口で呻く少年を仰向けに転がし直す。
「むむ、売り出し中の身としては、それは非常に困るでござるな」
「で、なんでこいつはラリってる」
「いやはや恥ずかしながら、その者は採取した幻覚作用のある毒草を寝ぼけて食べて――」
「待ちなさああああいっ!!」
その時、二つの影が小道から飛び出した。
「追いついたわよ、このあほんだらぁ!! ってなんでアンタが倒れてんのよ!?」
赤みのあるブラウンヘアをツインテールに纏めた少女が当惑する。
街中であろうと泥の付着したブーツを履き、腰に短剣を差しているということは冒険者で、この少年の仲間のようである。
灰色のローブを着た小さい方の影も幾分幼い顔の少女であり、黒に近い紺の髪が太陽光に艶を放つ。
ローブの少女は素早く少年の容態を調べ始めた。
「……混乱毒の症状は、出てるけど、大丈夫」
「無事なの!?」
「……後遺症も無さそう」
「良かった……」
仲間の無事を知り、胸を撫で下ろす少女が次に眼中に入れたのは、当然この事態の渦中のジンと呆れる長身の女である。
「それで……えっと、何があったの……?」
事の経緯を長身の女の証言を交えて説明していくうちに、少女の顔は青ざめていった。
それもその筈。
先ほど起きた事象を町の法に照らせば、良くて厳重注意。
悪くすると監獄行きか強制労働の刑に処される。
「うちの馬鹿がこんな真似しちゃってごめんなさいっ!」
「……ごめんなさい」
「済まなかったでござる」
それぞれ高さの違う、茶、濃紺、黒の頭がジンの前で縦に振られた。
「チッ……」
「ア、ン、タ、も謝るのよッ!」
「ふぐっ……!」
茶髪の娘――先ほどクレアと簡単に自己紹介した――はその身に合わぬ剛拳を正座している少年の脳天に炸裂させて昏倒せしめた。
「詫びは要らん。だが、ラリってたとしても、強盗紛いに襲いかかった理由は聞かせろ」
「それは、その、え、と……」
毒草の効き目にやられていても、被害妄想の土台が無ければ、人の鼻っ面をそう簡単には殴りにいけるものではない。
「最近、あの受付のシリアが男に尻を追いかけられているらしくて困っているのでござるよ」
クレアが言い淀んだ所に先程の長身の女が助け船を出した。
「それを聞いた拙者らはどうにかしてやりたくなったのでござるが、その時に大空へトリップしていたクウリがなにやらお主とシリアが話していた所を見て、先走ってしまった次第でござる」
「……って伊織!」
思い出したようにクレアが長身の女に振り向く。
「なんでござるか?」
「なんでござるか、じゃないわよ! アンタの足ならクウリに追いつけてたよね! なんで止めなかったのよ!? ていうか観てたでしょ!?」
「はて、なんの事でござろうか?」
「とぼけんじゃないわよ!」
「いやいや、拙者は安寧と平穏を愛する者でござるよ。クウリを放って置くわけないでござろう」
白白しい声色でまさか、といったように否定する。
「その割りには、愉しそうだったな」
「お主がかなりやるようでござったからな。体を一瞬で鋼の杭のように地に固定し、飛びかかるクウリの勢いを利用して脇腹にカウンター。なかなか見れる物では無いでござ……」
「……」
全員が、やっぱり、もしくは自爆したな、という目で口数の増えた彼女をじっと見つめる。
「しまった、でござる」
伊織は愉快そうな笑顔でペシリと後頭部をはたいた。
「この戦闘中毒が!」
「はっはっは、強き者と巡り会うのは全ての武芸者の喜びでござろうて」
嘘が露見した彼女はあろうことか開き直り、逆に正論のように清々しく言い放つ。
「……ひどい」
「フフン、いくら賢いイリスでも、判らないでござる。これは浪漫、でござるよ」
軽く鼻を鳴らして上機嫌で返す。
「で、ござろう?」
更なる糾弾を躱そうと話をジンに振った。
「知らん」
「これは手厳しい」
口ではそう言うが、飾り気のない口元に微笑を浮かべ、まるで残念そうではない。
「それよりもだ、そいつは大丈夫か?」
ジンが顎で指した少年は泡を吹いて気絶している。
「心配要らないわ。仲間に治癒師が居るし、何かあっても大丈夫。うちのには攻撃魔法使いのイリスともう一人、治癒師がいるんだから!」
「本当か?」
「……わたし」
これほど若いパーティーに二人の魔法使いがいて、目の前の小さな女の子が魔法使い。
子供の魔法使いはかなり珍しい。
魔法使い、それは不可視の魔力を対価に超常の力を行使出来る存在。
起源こそ不明だが、遥かな太古から現在に至るまで、魔法で身を立てた者達が歴史に点在している。
使える魔法は生涯に渡りたった一系統のみ。
しかし、属性にもよるが強大な制圧力を誇る魔法使いはどこでも重宝されている。
更に、魔法使いになると魔導の力を得る以外に、もうひとつ変化する事がある。
それが老化速度の低下だ。
何の変鉄もない人間の寿命が魔法使いになった途端、倍以上に延びる。
それも歳を重ねるほどに老化は遅くなる。
その高いの戦闘力と永い寿命を持つ魔法使いはメリットが非常に多いのだ。
だから帝国は試練を推奨する。
しかし、冒険者がこぞってなろうとすることはなく、魔法使いの数は大陸全人口の一パーセントにすらはるかに及ばないと言われている。
なぜなら魔法使いになるには、非常に困難な試練が待ち受けているからだ。
庶民一般にも知られているその試練とは、驚くなかれ、ただ大陸各所にある地底の洞窟に足を運び、帰るだけである
強力な魔物が出るわけでもなし、ただ本当に行って帰るだけだ。
だが、それで終わりではない。
むしろ帰ってからが真の試練である。
洞窟から帰るとまず半日で全員が血反吐を吐き始めてのたうち回り、数日間苦しむ。
魔力に適性が無いものは地獄の苦痛の中で死に至り、僅かな人間が生き延びた力と栄光を手にする。
その成功率は約六%ともいわれる。
そうなるのは洞窟に充満する魔力がヒトの身体を刺激して脳に魔法を使う回路を造るからと言われているが、なにせ魔力は不可視、無臭で観測すら成功していない。
そのため真実は解明されていない。
更には生存しただけではただの長寿の人間でしかない。
試練はひとつではないのだ。
兎に角、魔法使いとは希少で貴重な戦力なのだ。
「そいつは凄いな」
よもや魔法使いとは、とジンも素直に感心させられた。
魔法とは習熟に多大な努力を要する。
ただ漫然と使うだけではその力は伸ばせない。
その低身長を見ればいかに幼少から魔術に触れていたかが分かるのだ。
「はい。でも、寝かせておいた方がいいから宿に連れて行きます。よかったら、お詫びもしたいから一緒に来て頂けませんか?」
「いや、それには及ばない」
迷惑ではあったが、これ以上、どうこう言うつもりでもなく、町を見て地理を覚えたかったのでジンは辞退する。
「急ぎの用事でも有るんですか?」
「いや、そうじゃないが……」
否定を重ねるほどにクレアは小さくしょんぼりしていき、元気が無くなって行く。
「もしかして……ご迷惑でしたか? だったら……ごめんなさい」
尻すぼみになっていく。
「……勘違いしているようだから言っておくが、俺は謝罪なんざ求めちゃいない」
「で、ではどうしたら……」
さっきまで五体投地でもしそうだった少女は今度は期待混じりな目でジンに問う。
ここで口を閉ざしていても事態は変わらない事は分かりきっている。
仕方なしに答えを教えてやる。
「いいか、俺がした事はなんだ?
「えっと、クウリから身を守った……?」
「いいや、違うな」
「?」
「はっきり言ってまるで相手にならない。だが、俺が他の奴だったらどうなっていたかは分からん。そいつのトビっぷりなら下手したら他の奴も殴りそうだったしな。たまたま俺に目を着けたんだろう」
どこまでも無計画だったらしい少年を目の端で一瞥する。
「つ、つまり……?」
「襲われただなんて、毛ほども思っていない。俺はそいつが他の奴を殴るのを止めただけだ」
「……」
「なら仲間であり、善き友が口にするべき言葉は分かるな?」
横で伊織が身振りで促した。
クレアの両側にはいつの間にやら、二人の仲間が立っている。
ようやく主旨を理解したクレアが、その音頭をとる。
「「「ありがとうございました」」」
同時に頭を下げる三人の、謝罪の時とは違い、晴れ晴れとした声が小道に響く。
「その二人は初めから知っていたようだがな」
「えぇ!? じゃあ教えてよ二人とも!?」
「いやいや、こればっかりは自分で考えるものでござるよ」
「……わたしが言ったら…… 意味がない……」
「うぐぐ……」
正論の前に、思わず口を突いた姑息な作戦は引っ込まざるをえなかった。
「して、お主よ。物的な礼はさせてもらえるでござるか?」
既に、おおよそ行き先が決まっている身だが、別に強制されているのではなく。
「分かった」
どこに行こうと監視からは逃れられないだろう。
「着いていくから好きにしろ、と言ったのでござる、よな?」
「そうだ」
ジンの台詞に被せて問い、明確な言質をとる。
提出した行動予定をあっさり無意味にしたジンは、もっさり金髪女のヒステリックなお説教の声を幻聴した。
「ではでは、善は急げでござる」
言うが早いか、長身の彼女は倒れているクウリ少年を易々と担ぎ上げた。
「行くでござるよ」
「ちょっ、待ってよ!」
そして、戸惑うクレアを置いてきぼりにしかねない勢いで歩き出した。
「さ、拙者達の宿へ案内するでござるから、着いてきてもらえるでござるか。自己紹介もそこでゆっくりやるでござる」
「ああ、そのうちに町の案内も頼む」
「承知したでござる。まぁ、それは追い追いするでござるよ。それでは出発でござる」
ジンが向かうつもりだった方角ではない、南に歩き出した。
人波の中を五分ほど歩いた頃、ようやく元気が戻ってきたのか、移動しながら謝り倒しだったクレアもクウリを小突く余裕も生まれてきていた。
「クウリの馬鹿。いきなり人に殴り掛かる奴がどこに居るのよ……」
「……目の前に……」
「揚げ足を取らないで。言葉のあやでしょ」
「……どう落とし前をつける?」
「クウリは一日ごはん抜きで良いんじゃない?
「……甘い……鞭打ち十回ぐらいが妥当だと思う」
「うーん……ギルドナイトにも誉められるほどのこの筋肉馬鹿に生半可な打撃が効くかは微妙ね……」
クレアはクウリの背中についた筋肉を突っつき、そう洩らす。
「……なら、この人が良いと言うまで正座はどう?」
「それはやりすぎでしょ!」
なにやら自分以外の女子二人が空恐ろしい言葉を発しあうのを、軽く振り返った伊織が牽制し諫める。
「はっはっは、双方とも、拷問はやり過ぎでござる。それに、祖先の名誉の為に言わせてもらうと、正座は拷問ではござらん」
そして人一人を背負いながらも静かに、そして軽やかに歩く伊織はそれに、と続ける。
「こうして被害者が気にするなと言っているのでござる、もうこれは拙者らの悩むことではござらんよ」
「そうだけど……」
あっけらかんと笑いながら言う彼女に、クレアはどこか張り詰めた心に穴を開けられる。
「ま、猪突猛進なクウリにはいい薬でござるよ。そういえば、その若さであれほどの技術をどこで学んだのでござるか? えぇっと……?」
「ジンだ」
「おっと、これは失礼。自己紹介がまだでござったな。拙者は伊織でござる。平民でござるから姓は無いでござるよ」
「その名、極東の血か?」
特徴的で一風変わったアクセントの名は大陸の東の果てに分布する民族のそれだ。
「おや、分かるのでござるか? 本当は極東の文字で伊織と書くでござる」
足で地面の砂に名を書く。
「少し前、皇国に居た時期があった。良い国だったが、今向こうは大変だと聞く……」
「そうでござるなぁ……」
共通の話題によって歩きながらも少なからず会話が続くが、その口調は互いに過去を回顧するようだ。
「拙者は焼け出されて大陸西部にきた難民でござる。いや、誰かを恨んではござらぬ。ただ、故郷では春になるとあらゆる所で薄桃色の花が咲き乱れていたのを、幼い時分に観ていたとたまに思い出すのでござるよ」
彼女はそれは楽しそうに東の空を見つめ、しみじみと言う。
「本当に良き国でござる。残念ながら争乱の果てにその木はほぼ焼失したと聞いたでござる。勿体ないでござるなぁ……」
「……そうか。済まなかった」
苦い顔のジンからの一言。
「何がでござるか?」
「色々だ」
「?」
要領を得ないジンの答えに、後ろから聞いていたイリスとクレアも頭上に疑問符を浮かべて首をかしげる?
「それはそれでござる。それよりもさっきの話でござるが……」
「こら伊織、冒険者に過去の話はマナー違反でしょ」
クレアが伊織に釘を刺そうとしたがジンは軽く受け流す。
「……どう言ったものか……俺を一人前にしようとした大人に教わった」
「でござるか。ジン殿に教えたその御仁は、一体どれ程の修練を積んだのやら。世は広いでござるなぁ」
自分に言うかのように、からりと空に放る。
「そうだ。とてつもなく強かった」
「それは……凄いでござるな。ジン殿の腕なら仕官しても大成するでござろうに、その上を行く遥か高みのお方とは」
「……クウリが10人居ても瞬殺されそう…」
「はっはっは、イリスはいつも痛烈でござるな! まぁ、そういう拙者も似たような結果でござろうな」
「まったく、あんたってばそればっかりね」
その後もそんなどうでもいい会話をしながら歩くこと数分。
ギルドから見て南に位置し、南北の大通りに面した小綺麗な宿屋に5人は到着した。
「ここが私たちの宿、栄光への一段よ。さ、入りましょ!」
「名前負けとかは考えたら負けでござる」
クレアに誘われるがままに、その背を追ってジンは砂の侵入を防ぐための一段高い敷居を跨いだ。
宿屋を利用するのは初めてではないので勝手を知っているジンには、香辛料や煙草の匂いがあるだけで、真新しい物は見当たらなかった。
強いて挙げるとするなら空のジョッキがうず高く積まれた、一人の若い男が伏せるテーブルから尋常ではない酒精の香りが漂っている。
だが、どうやらクレアには異常なものが見えたらしい。
「なんでアンタがここに居るのよ、アンタ、自分で今日は教会の仕事だって言ってたでしょ!?」
入って左に食堂兼酒場、右にフロントを備えた造りの一階に、クレアの怒声が響いた。