物件
会社員の男性(28)の物件にまつわる物語である。
梅雨の時期にさしかかった7月某日。
男は梅雨のジメジメした感じが鬱陶しく、苛立ちを感じていた。
そこで、男は会社の同僚と一緒に梅雨に対してのヤケ酒を呑んでいた。ただ呑むだけならまだ良かったが、男のアパートの部屋で大きな声量で叫んだり、壁を叩くなどの行為を行った。
1日終わればよかったのだが、これが梅雨が終わるまで何日も呑み続き、暴れまわった・・・・・・とうとう部屋を追い出されてしまった。
仕方がなく新しい物件を探すということで不動産に向かった。
「新しい部屋をさがしているんっすんよ~。」
「ここなどはいかがでしょうか。」
そういって、店員が紹介した物件は2LDKバス・トイレ別、駅チカ(徒歩2分)で家賃が10万円であったことと。並のサラリーマンにとっては無難な値段であったので、この物件を選ぶことに男は決めた。
引っ越しの日取りも決まり、引っ越し当日。
「あれ?変だなー。こんなところに紙貼っていたっけ?」
と業者の人が紙を剥がした。その紙はお札のような形をし、文字が薄く消えかかっているのがわかった。
引っ越し業者の人たちが手早く作業したため予定よりも早く運搬作業が終了した。
まだ日も落ちていなかったので引っ越しの片づけでもしようと男は考えた。
大型の家具は業者の方によって、設置されていたので残りは男の私物などの整理だけだった。
「ピリリリリリ、ピリリリリリ・・・・・・」
電話の着信音のようなものが部屋中に鳴り響く。
すぐに自分の携帯電話を確認するが音の正体ではなかった。
(業者のヤツが電話のコードつないだのか?)
と男性は思ったが、辺りに電話のような音の出る物は存在せず、その音は部屋の隅にあるまだ未開封のダンボールの山の辺りからから聞こえた・・・・・・。
ゾッと男の背筋が凍りつく・・・・・・
その場に立っているだけでは埒が明かないとかんがえた男は勇気を振り絞って音のする方へ向かった。
ダンボールを1つずつ確認する。
3つ目のダンボール箱に手を伸ばした時、着信音は途絶えた。
(あれ?止まった?)
3つ目のダンボール箱を開けると以前から使用していた電話が見えた。
男は電話をくまなくチェックしたが何の異変も見当たらなかった。
(おかしいな。)
不思議に思った男は手に持っていた電話をフローリングの床に置く。
「ピリリリリリ、ピリリリリリ・・・・・・」
床に置いた途端、再び電話が鳴り出す。
「コードをつないでないのに・・・・・・」
恐る恐る受話器を手にする。
「もしもし?」
「プーーーーーーーー」
耳の中に入ってくる音は通話中。のような音だけだった。
身の危険を感じた男はすぐさま霊感を持つ彼女に電話をした。
「もしもし。ミユキか?今、ヤバい状況なん・・・・・・」
「え?何?堂々と浮気してんの?」
「おい!ちょっと待てよ。何言いたいんだよ。」
「はぁ~。ありえない。」
ミユキは電話を切った。
室内で電波が届かないのかと考えた男はマンションの目の前にある公園まで走った
公園に着くとミユキからの着信が届いた・・・・・・。
「もしもし?」
「アンタ、ホントに隣に人いないんだよね?」
「そうだっていってんじゃん。さっき部屋の中で・・・・・・」
「電話の向こう側から女の人の叫び声がするんだけど。」
「・・・・・・」
「もしもし?シュン?シュン?」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「あれ?また聞こえなくなったぞ?」
「ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ」
「ミユキ?おい!ミユキ!!」
「ぅぅぅぅぅ・・・・・・ぁぁきゃぁぁああー」
翌朝。
男は新しい物件を再び探すことにきめた・・・・・・。
皆さんも物件をお探しの際は十分お気をつけてください。