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第3話 商人のルドルフ

本日は、ちょっと変わった毛色の変わったお話。

とある商人のお話をお送りいたします。


舞台はちょっと離れて、ナインテイル。

彼の思い出話に少しだけ、耳を傾けていただけると幸いです。


やあ、はじめまして、だったよね。

うんうん。紹介状は読んだよ。

はるばるサツマの街から来てくれて嬉しいよ。

僕の父さんの兄さんの嫁の妹の夫の息子の親友の娘の夫の弟。

それで合ってるよね。

いやいや、気にしてないよ?

僕が10年前にこのロングコーストの街に店を構えた途端に、

顔も知らない親戚がいきなり尋ねてくるようになったことくらい。


ついでに、君がどう見ても人間族にしか見えないのも…あ~、ああ。

それで間に親友が挟まってたんだね。

誰が書いた紹介状かは知らないけどやるなあ。ま、いいや。


そう、見ての通りさ。僕は猫人族なんだ。珍しいだろ?

仮にもナインテイル自治領の城下町に大店を構えられた〈大地人〉の猫人族なんて、

僕の他は40年くらい生きてる僕でも聞いたことないし。


…いやいや。そんなにおだてなくてもいいよ。

僕だって知ってるさ。

これでもナインテイルとイースタルを行き来する、交易商人だもの。

世間の風の冷たさは、凍えるほど知り尽くしてるし、

僕ら猫人族がどう見られてるかくらい、よ~く、知ってる。


商売なんぞできるはずがない畜生とか、他の異種族と比べても亜人みたいで

気持ち悪いとか、猫人訛りが下品とか、僕も昔はよく言われてたし。


それにね、これはこれで悪いことじゃあなかったんだよ。

僕らは種族みんながとびきり亜人っぽかったせいで普通の街には

定住が難しかったから、僕らの家族はみんな字が読めるし計算だってできる。

実は腕だって立つんだよ?

僕でも特に〈緑小鬼〉の1匹や2匹くらいは何とかできるし。

ていうか、旅から旅で暮らそうと思ったら

それぐらい出来ないと生き残れないんだけどね。


まあ、そんなわけで、旅暮らしの貧乏芸人一家の生まれだった僕は、

こうしてナインテイルでも屈指の大商人に一代でなりあがり、

幸せに暮らしましたとさ。

おしまい。


…え?聞きたい?なんで?

騙されたのは癪だけど、どうせだから、転んでもただでは起きたくない?

面白いね、君。じゃあいいよ。話そう。


この僕の、商人ルドルフの成り上がり物語。はじまりはじまり~。


『第3話 商人のルドルフ』



いきなりだけど、前半ははしょるね。


15歳で芸人じゃあ一生猫なのに負け犬ってことに気づいて、

一座の金目の物あらかた持ち出して行商始めたけど、

正直30代も目前のあの頃までは、しょっぱいままだったし。


まあ、才能はそれなりにあったと思うんだよ。

全部うっぱらっても金貨300枚にしかならなかった状態から初めて、

野垂れ死にもしなかったし、財産だって金貨で1万枚まで膨れ上がってた。

失敗したり色々損をすることも多かったけど、それでも頑張ってたよ。

まあ、それでも旅から旅の行商人のままだと

一生猫なのに負け犬だなあとは思ってたかな。

だからさ、賭けに出たんだよ。それで勝った。

そうして、とりあえず今の店を手に入れた。


え?賭けって何をしたかって?

それを教えるなら、まず色々説明しないと分からないかな。


君は、一応商人の端くれだろ?だったら分かるよね。

金も経験も何もない行商人が最初に選ぶ商売相手。

…そう、その通り。〈冒険者〉さ。

まあ、今の〈冒険者〉はあの頃とは色々違うけど、昔は良く言ってたよね。

最初の商売相手には、〈冒険者〉を選べって。

うんうん。懐かしいなあ。

彼ら、交渉ってもんをしなかったからね。

必ず同じ値段で売ってくれるし、買ってくれる。

商品の質にけちつけたりもしないし、盗みも騙しもしない。

とりあえずの相手にはうってつけだ。

…まあ、時々化物みたいな凄腕の〈冒険者〉の商人に物凄い勢いで、

儲けが出るぎりぎりまで買い叩かれたりもしたけど。

ま、それはさておき。

実はさ、彼らって、僕ら大地人相手に売り買いするものって限られてるんだ。

分かりやすく言うと、僕らが自力で何とか手に入れられる程度のものか

使い道のあんまり無いモンスターから取った素材くらいしか売ってくれない。


でもね、実際の〈冒険者〉はそんなちゃちなものを鼻で笑えるくらい

とんでもないものを持ってるし、もし何とかしてそれを取引できることになったら、

絶対に嘘はつかないし、足元を見たりもしないんだ。

15年ほど商売をやってて、僕はそれに気づいた。

それが、僕の成り上がり物語の第1章だったんだ。


さて、本題に戻ろうか。

10年前、このロングコーストの姫君がご病気で倒れられた。

どうも大陸の方から来た酷い熱病でね。どうやれば治るのかは分からなかった。

領主様付きの〈施療術師〉も〈森呪遣い〉もお手上げで、とうとうお触れを出した。


なんでも良い。娘を助けられた者には、望みの褒美を与える。


いやはや、凄い騒ぎだったよ。

ナインテイル1の調剤師が貴重な素材をふんだんに使って、すごい薬を作ったり、

領主様付きの施療術師より腕の良い施療術師がヒゴから来たり。

でもダメだった。


そこで、僕の登場だ。


あ、もちろん僕には薬を作る技術もとんでもない魔法も無いよ?

あるのは必死に貯めた金貨1万枚くらい。

僕がやったことは、それで出来る範囲で凄く簡単なことなんだ。


ナカスに行って〈冒険者〉に向かって依頼を出したのさ。

〈天上の雫〉(アムリタ)求む。報酬は金貨1万枚ってね。

あのときの受付の人の驚いた顔は、見ものだったよ。


〈天上の雫〉って知ってる?そうそれ。

大昔にアルヴが作ったっていう、吟遊詩人の歌とかに出てくる奴。

一口飲めばあらゆる病を癒し、死人でも蘇るって言う、すごい通り越して嘘くさい薬。

これでも旅芸人の一座の出だったからね。そういう話にも詳しかったんだよ。


いやさ、うまく行ったらもうけもの、くらいの気持ちだったんだよね。

〈冒険者〉は嘘つかないから、もし存在するなら偽物掴まされることは無いだろうって。


…うん。まさか依頼出して半日で自分で作って持ってくる

〈冒険者〉が現れるとは思わなかった。

最近聞いたところによると、今、ヤマトの

〈冒険者〉には30人くらいはいるらしいんだよ。

〈天上の雫〉作れる人。いや本当に。

アキバの〈円卓会議〉の評議員様とか。

流石に貴重なものだから、凄く高い。

作れる人から買うと3回分の一瓶で金貨8000枚くらいするって。

…いやあ、相場を知らないと苦労するよね。うん。


それで、〈天上の雫〉を受け取ったあと、一応試して見たんだ。

ナカスまで僕の護衛で付いて来て、途中でモンスターと戦って大怪我して、

本当に死に掛けてた猫人族の傭兵に、ほんの一口分けてあげた。

いやびっくりしたよ。本当に元気になるんだもん。

かすり傷どころか10年分の古傷も残らない状態で。

ほら、僕の家の執事。それがそのときの彼。

命の恩人だからって今も仕えてくれてる。ありがたいよね。


ま、それで色々確信したから、これぞアルヴの伝説の秘薬、

〈天上の雫〉でございって触れ込みで領主様のところに持ち込んだ。

大丈夫だと思ってたけど、外れだったら縛り首確定だったね。

胡散臭い行商人でおまけに猫人族って時点で。

本当のところ、〈天上の雫〉が使われたのは、

本当に最後の最後、あらゆる他の手段を試してダメで、

姫君が今にもお亡くなりになりそうになってたときらしいんだ。本当にギリギリ。

で、その今にも死にそうだった姫君はたった一口で病気どころか

病に臥せっていた間に弱った足腰まで回復して、起きて立ち上がったんだってさ。

残りの1回分は瑠璃の瓶に詰めなおされて今でも家宝扱いだって。


…金を大半使い果たして街一番の安宿に泊まってたところに、

領主様のところから親衛隊がやってきたときは、流石に命の覚悟をしたね。


ま、それで物凄く感謝されて、好きなものを何でもくれるって言うから、

とりあえず街で店を構える許可と、薬の代金として金貨を10万枚要求したんだ。

あっさり許可もくれて、代金も払ってくれたのは、流石はご領主様って感じだよね。


んで、それを元手に始めたのが、今、僕がいるこの店ってわけさ。


まあ、それからの10年は、わりかし平和に暮らしてたかな。

10歳以上年離れた嫁さん娶ったのを皮切りに、

やたら僕を頼って来て定住した一族のせいでロングコーストが

猫の街なんていわれるようになったとか、

古くから街にいる人間族の商人の嫌がらせとか色々あったけど、

それくらい何とかできないと、成金は務まらないしね。

そんなわけで僕は店とキャラックを中古で一隻手に入れて、交易商人になった。

猫人族ってのもあんまし気にならなくなってたかな。

なんだかんだ言っても今でもロングコーストのご領主様は僕の味方だしね。

お触れを出したのは先代だけど、今のご領主様も

あの時助けた姫君を娶った、婿養子なんだ。

そりゃあ頭も上がらないよね。それに半年前のこともあるし。


そう、実は押しも推されぬ大商人の地位を手に入れたのは、たった半年前なんだよね。

半年前。例の革命のあとのことさ。



僕はさ、交易商人として月に2度はイースタルに行ってる。

大抵はマイハマとナインテイルの各地を行き来して、

交易品を売り買いすることが多いかな。

…うん、ウェストランデだとナインテイルの猫人族でおまけに成金って

びっくりするほど扱いが悪いんだよね。

もう同じ商人どころかそもそも善の勢力って見られてない感じ。

まあ、それに比べればマイハマは大分マシだったよ。

アキバも近かったお陰で異種族の〈冒険者〉が行き来してたから、

種族の差で扱いが悪くなることもあんまりなかったしね。


で、まあマイハマとナインテイルをせっせと往復してお金を稼いでいたんだけど、

そこで例の革命が起こった。

君、革命のことは知ってるよね。そう、〈冒険者〉が、帰れなくなった事件。


あの後、〈冒険者〉は変わった。

やたら強いのはそのままだったけど、人間くさくなって、交渉が通じるようになった。

まあ、最初は〈冒険者〉は僕らのこと、なんか何してもいい存在みたいに

思ってたみたいなんだけど、それはそれ。

交渉ができる。これ大事。

なにしろそれが、僕に御用商人になる道を示してくれたんだから。


マイハマで交易品を売り終わった後、僕は船でアキバに向かった。

そして、金貨を3万枚ほど持って、買い物にでかけたんだ。

今の〈冒険者〉は交渉ができる。その一点に賭けてね。


行ったのは、アキバでも一番のドワーフの刀匠がいるって工房。

そこで僕は金貨3万枚を出して、言ったんだ。


「金はある。もしよければ僕に〈冒険者〉の使う、

 素晴らしい刀を売ってくれないだろうか?美しいお嬢さん」って。


え?ああ、そうなんだよ。

そのドワーフの刀匠ってのがどんな頑固な爺さんかと思ったら、

若い女の子だったんだ。

僕としては毛皮も無い女の子って言われても困るだけなんだけど、

人間族の基準だと可愛いんだと思うよ。

ドワーフ族の基準だとちょっと華奢かな。

まあ、〈冒険者〉って不老不死だし、

年齢と性別が持っている力に一致しないもんだしね。

今はそれはいいや。

そう、交渉が通じるなら、今までは決して大地人には売らなかったような、

素晴らしいものだって交渉次第じゃ売ってくれる。

そう思って、言うだけ言って見たんだ。

元々僕はそういううまく行ったら大もうけって話、大好きだし。


うん。うまく行ったよ。


僕は無事、そのドワーフの工房で刀を買ったんだ。

金貨29800枚もする、凄い刀。

それでも店にあるなかじゃ、そこそこくらいの刀だってのにはびっくりしたけど。

もちろん僕が使うわけじゃない。

っていうか〈冒険者〉以外じゃあ古来種かナインテイルの〈大地人〉一の剣豪、

ムサシ様くらいしか使いこなせないだろうね。あれ。


え?見たことある?ああ、そう言えばご領主様が特別に公開してるんだっけ。


凄いよね。抜くとそれだけで雷光をまとい、輝きを放ち続ける刀とか、初めて見たよ。

領主様も驚いて、ロングコーストの宝にするって言ってたしね。


ただ、やっぱり〈冒険者〉と僕らの価値観って全然違いすぎて面白かったな。

いやさ、刀を買う時にさ、別の刀の値段の基準聞いて見たんだ。参考に。

あの刀よりどう見ても地味な、確かに綺麗だけど普通っぽい刀の方が

金貨49800枚もするのはどうしてかなと思って。そしたらさ、言うんだよ。


「〈斬鋼刀〉…〈雷光刃〉より攻撃力…切れ味がいい。

 それに〈雷光刃〉は…ダンジョンでも光るから…

 モンスターに…見つかる…ちょっと不便」って。


言われたときはびっくりしたよ。

〈冒険者〉にとっては武器って完全に実用品なんだなーって。

どんな凄い武器でも彼らにとっては下は〈緑小鬼〉から

上は〈火炎魔竜〉までぶったぎるためのものでしかない。

とにかく切れ味と持っている魔法の力が全部。

見た目に拘る奴はかなりの変わり者。

そんな扱いだったんだ。

まあ、だからこそあんなに強いのかな?


分かると思うけど、僕らにとっては武器なんて

凄いものになればなるほど、お飾りになっていく。

そんな凄い武器持ってる人が武器持って戦ってる時点で、ほぼ負け戦確定だし。

だから、凄い武器ほど年に1回取り出して恭しく振るくらいの儀礼用とか、

美術品扱いで貴族様の家や腰を飾るためのものになる。

モンスターと戦うための実用品は、無骨で無粋な一般品で充分だし。

でも、〈冒険者〉は違う。本気でその凄い代物を武器として振り回す。

多分だけど、今まで貴族様が報酬として〈冒険者〉に渡した

家宝の武器とか鎧とかも、実際に使われまくってるんじゃないかな。

最悪使いすぎでもう壊れてたりしてね。

…いや、実際ありそうだなあ。それ。


ま、とにかくあれを仕入れて売ったお陰で、僕も御用商人になれた。

そっちは実務は別の一族にやってもらってるけどね。

儲かるけど、面白く無いから。



3度目の話は、君も多分知ってるんだろう?

船いっぱいのサトウキビの茎をアキバに運んで、大もうけした話。

僕が『砂糖長者』って呼ばれるようになった由来になった話だしね。


もともとサトウキビの茎って、ナインテイルでも南の方で作ってるんだけど、

そっちの人はさ、昔から嗜好品としてサトウキビの茎を齧るって風習があったんだ。

果物とか食べるみたいに。僕もやったけど、甘くて美味しいんだよね。割と。


で、まあそれと2回目のアキバ訪問が僕に大もうけのヒントをくれた。


2回目にアキバに行くときは、あのムサシ様も一緒だった。

なんでも、僕が仕入れてきた刀を見て、えらく感動したらしい。

全財産の金貨5万枚持って、私もアキバに連れて行って欲しいって言ってきたんだ。

流石にナインテイル各地で領主様方相手に

剣術指南役続けてきてたお陰で、かなり持ってた。


で、例のドワーフの刀匠のところに連れて行って、

刀を見てもらうことになったんだ。

うん。凄かったよ。

どうもムサシ様から見ると、まさにお宝の山って感じだったみたいでさ。

僕がダメだしした〈斬鋼刀〉の価値を一発で見抜いたのは流石だと思ったけど。

で、まあそこから先はムサシ様と刀匠と二人でって感じで、

僕はアキバの街を見て回ることにした。

なんていうか、空気が違うんだよね。

前はもっと淀んでいた気がしたんだけど、それが薄まってた。

活気もあるし、笑ってる人もいた。

なんでかなと思ってあちこち見て回って、僕はそれを見つけたんだ。

物凄い〈冒険者〉の行列が出来てた。まあ、〈大地人〉も少しはいたけど。

んで、その先には一軒の店。


「いかがですかー!クレセントムーン4号店新作のクレープはいかがですかー!」


そう、食べ物を売ってたんだ。

しかもびっくりするくらいの値段で。

普通の食べ物の10倍はしてたんじゃないかな。

君、クレープって知ってる?

一応うちの厨房にいる料理人にも確認したけど、そんなに難しい料理じゃない。

料理人としての修行を少しでも受けた人間なら、

レシピがあれば誰でも作れるくらいの難易度なんだってさ。

おかしいだろ?そんなものが、びっくりするような値段で売ってるんだから。

材料だって卵と小麦粉、生クリームだし、高いものも使ってない。

それで10倍の値段だよ?ぼったくりだと思わない?


…え?思わないって?

なるほどなるほど。君、結構頭良いんだね。

その通りさ。

少なくとも、あの日、あの時であれば、アレは全然高い買い物じゃあなかった。

なにしろ、あれはまだ〈冒険者〉の秘密だった頃の料理の一つだったからね。


買って食べたときには本当に美味しかった。

これなら僕なら普通の100倍の値段でも捌ききれるって思ったね。

で、こっから先は磨き続けてきた商売の勘が働いた。

そのクレープって、甘かったんだよね。

なのに果物は入ってなかった。一番安いのだったし。

生クリームと、生地だけのシンプルな状態。なのに甘い。

そこで閃いたんだ。確証は無かったけど。


これ、サトウキビの茎の味がするって。


よ~く周りを見てみると、僕が食べたクリームは、

そのクレープって奴には全部入ってた。

つまり基本中の基本の食材らしいんだ。

そのときは、本当に小さな家門が独占してたみたいだけど、

秘密ってのは絶対いずれ漏れる。

その秘密を売り買いするタイミングが商売の秘訣って奴だってのは、

君にも分かってるだろ?


そして、サトウキビの茎ってのは、ヤマトじゃあナインテイルでしか取れない。

もしも秘密が漏れれば、サトウキビの茎は絶対に売れる。

それこそ5倍でも10倍でも。ね?

…ま、サトウキビの茎ならイースタルのあちこちを回れば、

最悪損はしない程度で捌ききる自信もあったけどね。


後は、大体君の知ってる通りじゃないかな。

ま、僕がサトウキビの買い付けに行ってる間に

その家門が料理の秘密って奴をアキバ中に

完全にばら撒いたお陰で需要が爆発して

僕の荷物に50倍の値段がついたのには、笑いが止まらなかったけど。


ちなみにその秘密をうまく使ったのか、その小さな家門はちゃっかり

〈円卓会議〉の評議委員になってたんだよね。

よっぽど頭が良い奴が家門にいたんだろうなあ。


え?ムサシ様?ああ、あの後そのままアキバに住み着いたらしいよ。

何をしてるかは、僕もちょっと知らない。



ま、これで僕の〈冒険者〉に支えられまくった成功譚は大体終わりかな。

いや、今でも続いてるのかな。アキバの街は面白いよ。

あらゆる新しいものが次々作られてるし、行くたびに発見がある。

アキバに一族を1人置いているんだけど、

その子も会うたびに面白い話聞かせてくれるし。


確か僕の妹の夫の息子の妻の父親の弟の娘の夫の娘だったかな?

君と違って、親友とか幼馴染とか入ってないから、ちゃんと猫人族だったよ。

メイドの修行をしたんだけど、ナインテイルじゃどこも雇ってくれないにゃ

ってんで僕のところにきたんだよ。

僕の屋敷で働かせるか、どこか仕事を紹介してやって欲しいって

紹介状には書いてあったから仕事を紹介してやるって言って、

アキバに連れてって放り出した。


嘘は言ってないよ?

アキバの街のメイドの募集って基本的に種族と年齢不問で、

猫人訛りが酷くても大丈夫だし。

〈冒険者〉の求人の元締めやってる〈大地人〉向けの口利き屋に連れてって、

好きなの選んで行って来なと言ったときは目を丸くしてたけどね。

最終的にアキバ最大の騎士団で雇われた辺りは、

真面目に修行してたんだろうなあ。


…ああ、そうそう。

君、やる気があるんなら、アキバに行ってみるのもいいんじゃないかな?

君の事は気に入ったから、片道だけでいいならマイハマまで船に乗せてあげるよ。

君だけなら金貨1000枚で。

君が乗ってきた荷馬車ごとなら金貨3000枚かな。

ちょうど今度、アキバで天秤祭って言う〈冒険者〉のお祭りもあるらしい。

僕も出来るだけナインテイルの品物を積んで出かけるつもりさ。で、どうする?


…分かった。商談成立だ。

君が、成り上がれることを祈ってるよ。

祈るだけなら、タダだからね。

いかがでしたでしょうか?


今回のお話は本編に少しだけ、絡めてみました。

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