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砂漠に降る銀の月~花の刻印があるスルタンの妃は盗賊と出会う~  作者: 高瀬さくら


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70.そして……

 ファリドとの別れは簡素だった。

 

 また会える、そう互いに信じている。

 二人の子ども達が去る背中を見つめる。


「ファリドね、きっと大丈夫よ」

「どうして?」

「だって、すごくしっかりしていたもの」


 まあ、ずっと一緒だったからなあとラズールは頷きかけて、不穏な思いつきに黙る。


(――なんか邪魔虫になりそうな……)


 その片鱗を既に見え隠れさせてなかったか? 

 ラズールは一言だけ漏らす。


「ちょっと甘やかしすぎじゃねぇか?」

「そう? いい子よ」


 シャーラは、ラズールに先んずるように泉に足を浸す。


 からかうように笑うシャーラを見て、ラズールはシャーラの腰を抱き上げ、驚いてしがみついてくる体を引き寄せながら、泉に降りる。


「どうする? 戻った先で、ジジイになっていたら」

「一緒に歳を取るなら平気」


 一歩一歩、シャーラを抱いたまま、泉の中を進む。


「死んだら?」

「一緒に死ぬなら……」


 そこで言葉を切り、シャーラは首を横に降る。今まで見たことがないくらい、優しく綺麗に笑う。


「そうじゃなくて。一緒に、生きるの」


 その顔つきに、ラズールは置いて行かれたような気分になる。


 不安げな顔から、いきなり自立した大人の女性の顔をシャーラは見せていた。

 



***



 水路は、暗い洞窟の中に続いていく。


 先は見えない、ただ闇が広がっている。けれどこの先は怖くない、二人の未来の可能性が垣間見えたのだから。


 この先も安易な道じゃない。


 でも、何度でも自分の力で、シャーラと共に切り抜ける。



 ――アミナとシャーラの母親に、石碑の前に埋めた指輪に誓った。



「ずっと一緒に。ラズール」


 ラズールは暗闇の中、柔らかい感触を強く抱き、手探りで唇を寄せた。






【Fin】

最後までお読みくださいまして、ありがとうございます。

これは、初めて書いたオリジナル小説となります。


未熟さを感じて一度下ろしましたが、再度読んでみたらさほど悪くなかったので、少々の修正をして載せました。ここまで読んでくださった読者様に多大な感謝を捧げます。


なおいくつか参考文献はありますが、執筆後半でイラムについて調べている時に出会った資料を紹介します。


・『アラーが破壊した都市―砂漠の都ウバール発掘』ニコラス・クラップ著、朝日新聞社:ドキュメンタリー映画の製作者である作者がウバール(イラム)発掘までを描いたノンフィション。

イラムについて調べるために読んだ本ですが、まるで冒険活劇のような面白さに一気読みです、私の話よりよほど面白いと思います。


・『シバの女王―砂に埋れた古代王国の謎』ニコラス・クラップ著、紀伊国屋書店:イラムはシバの女王の王国ではないか、というところから始まるシバの女王探しのノンフィクション。こちらも冒険活劇のように面白いです。


ちなみにシバの女王は古代イエメンの伝説の女王ビルキース説や、シバの女王の別名はバシャマというところから、本作の予言者の名前を借りました。


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