第四話
あれからすぐに決闘の話は学校中に広まった。
そんな中僕は無事、村瀬以外の男の友人もできた。
その男子の名は原野輝義という名前で、異能は水刃だ。
日頃から女子にモテたいと言ってうるさいが、仲間思いの良いやつである。
僕は今、村瀬と原野と共に教室で昼食をとっていた。
「いやー、この後は身体能力測定だな。」
「体術とかの測定もやるんでしょ?」
「全5段階で評価するらしいよ。二人は身体能力高いほう?」
上から原野、僕、村瀬である。
「うーん僕は結構自信あるよ。中学時代は結構問題児が周りにいたから。」
「俺は普通だなー。俺は喧嘩したこともないし。強いて言うなら、高原中の奴らに一回だけ絡まれたぐらいだし。」
高原中という言葉に、村瀬君が強く反応する。
「原野も高原中に絡まれたことがあったのか!?」
「村瀬もか!!俺たち仲間だな。」
「そういえば二人は何中なの?」
「俺は〇〇中だな。高原中のヤンキーがよくいて、毎日びくびくして過ごしてたのを覚えてるぜ。村瀬は?」
「俺は〇〇中だ。高原中とはそんな近くないから普段から関わることはなかったけど、噂はよく耳にしていたな。久神はどうなんだ?」
「僕は何だったっけ?確か有名な先輩に、土倉多門って人がいたよ。喧嘩ですごく強かったらしいよ。俺も半年ぐらい仲良くしてたからなー。懐かしいよ、中学時代が。」
一応言っておくが凶禍に入っているからといって、中学校に行けないわけではない。
現に俺は中一の半年間だけではあるが、中学に通っていた…学校の名前は忘れたけどな!!
「土倉多門ってあれじゃね?」
「あぁ、絶対そうだよな。」
ひそひそと目の前で話している。
村瀬が意を決したように聞いてくる。
「久神の通ってる学校って高原中じゃね?」
それはあり得ない。
あの程度が関東ヤンキー最強って論外だろう。
「ありえないでしょ、それなら絡んできたやつらをしめただけで停学になったりしないよ。」
おそるおそると聞いてくる。
「ちなみにどんなことをやったんだ?」
「例えば一人のヤンキー気取った生徒が「顔面変形させてやるぜ。」とか言ってたから、馬乗りになってこっちが顔面変形させてやったんだ。今となっては恥ずかしい思い出だなー。」
なんか喧嘩自慢をしてるようで恥ずかしい。
すると村瀬が心配そうに聞いてくる。
「俺らにも同じことはしないよな?」
何を当たり前のことを言ってるんだろう?
「君たちが僕に手を出してこない限り、そんなことはしないよ。」
原野が焦ったように話題を変えようとする。
「そういえば今日、二人は火神ハーレムたちと決闘だな。」
「へぇ、彼女たちは二つ名を持ってるんだね。それにしては早くない?二つ名は決闘をしたりして付けられるものでしょ?」
二つ名とは何だろうか?
僕の考えを読み取ったのか、二つ名の説明をしてくれる。
「二つ名っていうのはとても強かったりする奴に畏怖の意味を込めて付けられるものだ。六星天座の凶禍とか聖魔典とかにもそういうのがいるだろう。」
「あっ、言っておくと久神にも二つ名つけられてるの知ってる?」
僕はその言葉に目に見えて驚く。
「二つ名は『白銀の美王』。彼女たちの火神ハーレムより圧倒的にましだな。」
「まぁあれは侮蔑の二つ名だからな。」
その言葉に疑問を抱く。
「二つ名って畏怖の意味合いで付けられるんじゃないの?」
「まぁほとんどはそうだが、まれに侮蔑を込めて二つ名を付けられることもある。」
「ちなみにどうして侮蔑なの?」
その言葉に村瀬が反応する。
「そんなの決まってんだろ。御剣のお嬢様は人を常に見下してるし、義妹と幼馴染は火神の言うことが絶対だと思ってる。しかも授業中だろうとなかろうとところ構わずいちゃつくし。」
おぉ、ブラック村瀬が出てきた。
だが言いたいことは分かる気がする。
しかしその後に、原野が予想外の発言をぶっ込んでくれる。
「それで相対的にお前の評価が爆上がり中だ、久神。」
「はっ、はーーー。」と思いっきり声を上げてしまう。
周りの注目を集めてしまったので、「すいません。」と頭を下げて謝罪する。
「お前はあいつらよりもルックスが良いし、誰の迷惑にもなっていないからな。だが俺も理解しがたいことがある。なぜ村瀬の好感度も上がるんだよ。」
最後の発言がなければとてもかっこよかったのにな。
女子たちの目線がどんどん冷めていっているのに原野は気づいていない。
仕方ないと思いつつもそのことに触れてやる。
「原野、女子からの好感度爆下がり中だぞ。お前はもう少しデリカシーを考えたほうがいい。」
そう優しく注意すると、周囲の女子から再び声が上がる。
「あぁ、久神君優しすぎ。」
「私もあんなふうに優しく注意されたい。」
「いや、私は踏みつけられたい。」
やばいな、この学校の女子たち。
そう思ったのは仕方がないことだろう。
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昼飯を食べ終えて、身体能力測定の授業が始まった。
50メートル走や持久走などを七割五分を評価4で残りを評価5で終える。
そして残りは教師との体術測定になった。
ちなみに言っておくと一つ一つの種目をやったら、回復の異能を持った教師が毎回体力を復活させてくれる。
だから体力がなくて、最大限のポテンシャルを発揮できないなどということはない。
原野が体術測定をしている部屋から出てくる。
そして次に村瀬が入っていく。
「どんなに感じだったー?」
「いや、先生が強すぎて。最初にお腹にストレートを決めようとしたんだけど、足を引っ掛けられて転ばされた。あれは完全に油断してるけど、出し抜けることはないと思う。俺は評価3にマルを付けられたな。とにかく怪我しないよう気をつけろよ。」
そんなことを話していると、村瀬も部屋から出てきて僕の番がやって来る。
「それじゃあやりますか。」
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<side鈴木伽耶>
私は今、自クラスの体術測定をしている。
体術測定で一般人が評価4以上をとったら間違いなくそいつは天才だ。
今年の体術での逸材は間違いなく、新入生総代である火神迅とその幼馴染の黒田紫音だろう。
その二人はこの体術測定で評価4をとったらしい。
そう1-Dの担任である阿波崎が言っていた。
ちなみに私と阿波崎はこの第二異能力者育生高校を卒業した同期だ。
そして今も交流が続いてる数少ない友人の一人だ。
「さて、次は久神か。あいつは窓から飛び入ってこれる時点で身体能力は高いだろうな。体術以外の測定は評価3以下が無いのか。まさに天才という奴だな。」
そこで久神が入ってくる。
「よろしくお願いします。」
「あぁ、好きに攻撃して構わんぞ。」
そう言った瞬間、私の顔面に向かって左足でハイキックを放ってくる。
まさか女性の顔に攻撃をしてくるとは思っていなかったので、少し反応が遅れる。
顎にあたる直前久神の足首を掴み、右足を払って転ばせる。
(まぁ、学生だったらこの程度か。これは評価3だな。ん?こいつ、なぜ笑ってるんだ?)
友人と共にいる時とは違う、感情を剥き出しにしたような狂気的な笑みだった。
私は一連の動作を全て見ていた。
だが反応できなかった…おそらく普通の人間の肉体ではできない動きだったからだろう。
久神の左手が床についた瞬間左腕の力だけで体を回転させて、みぞおちに足を振り上げるようにして蹴りを入れてくる。
「グハッ。」
挑発するように久神が言う。
「あれ、この程度か。期待外れだな。武術の巧みさなら多門君のほうがあったぞ。まぁいいや、先生これで終わりですか?」
生徒にここまで言われて引き下がれるほど、耄碌していない。
「私もまさか無自覚で油断していたとはな。次からは本気でいこう。私に一発入れてみろ。そうしたら単位を少しくれてやる。」
そう言うと久神の目の前に高速で移動する。
私の人生史上今までにないほどの激しい戦いが始まった。