エイを斬る
私は、幼少期からエイが、好きだった。
青い海を、泳ぐエイが好きだった。
しばしば、父親とダイビングをし、エイを海底から眺めていた。
キラキラ輝く水面をバックに、エイたちはヒレをゆっくりとはためかせて、泳いでいた。
その姿はまるで、青い空を自由に飛んでいるかのようだった。
何匹ものエイが、水面を埋め尽くす光景は圧巻で、この世界に産まれてきて良かったとも思えた。
そんな、ひらひらと、どこまでも自由に飛んでいるエイを、私は愛していた。
だから、エイを何千匹も飼っている父親のことを、私は心底尊敬していた。
研究所に面した湾に、一面の網を張って、
何千匹ものエイを放し飼いにしているのだ。
この湾一帯が、うちのものだった。
「大きくなった父さんみたいになりたい」と何度も自慢げに語っていた。
だからこそ、父親の本当の生業を知った時は、心底失望した。
そして、その最悪の家業を私は継ぐことになった。
エイの自由を奪い、毒のあるオビレを斬り落とす。
ヒレも、生きたまま斬り落とす。
もはや、エイは自由に海を舞うことはできない。
必要最低限のパーツになった、それを、
必要最低限の培養水がはいった水槽に入れて、
ベルトコンベアに流す。
そして、ロット管理をして、トラックで輸送をする。
自由に泳ぐことができたはずだったエイたちは、
生きたまま機材として医療機関に運ばれていく。
生簀の水は血で真っ赤になっていた。
エイってオナホとして使われていたらしいですね