次から次への婚約破棄
王国学園卒業パーティーの最中、王太子がいる一角で、騒ぎが起こった。
アルバート王太子は婚約者カーリー公爵令嬢に向かって婚約破棄を宣言したのた。
「カーリー公爵令嬢、お前はモブコ男爵令嬢を苛めた。教科書を破り、水をかけ、階段から突き落とそうとした。そのような心根、国母にはふさわしくない。よって婚約破棄する。そして、このモブコ男爵令嬢と婚約する」
カーリー公爵令嬢は、泣き崩れた。
「わたし、そんなことしてません。私がそんな事するわけないでしょう」
「嘘をつくな。確かに証拠はないが、お前が苛めているのは確実、いつも俺が見ていたからな」
少しうつむくカーリー公爵令嬢。
「わ、わかりましたわ。そんなことしてないけど、婚約破棄します。でもあたしと婚約しておいた方がいいよ。考え直してもいいですからね」
「考え直すか!」
そして、次の令嬢に顔を向ける。
「トウルガー侯爵令嬢、貴方も国母には出来ない。いつもモブコ男爵令嬢をいじめぬいていたな。そのような心根の女性は嫌だ。だから、君とも婚約破棄する」
ドウルガー侯爵令嬢は、いきなり腰が入った鉄拳を放った。王子は紙一重でなんとかかわす。
「あたしは苛めてない。訓練しただけだ」
「いきなり殴るな。それ以前に貴族令嬢が殴るな、訓練?お前が殴ると大怪我するぞ そんなんが婚約者だと困る!」
トウルガーは、肩をすくめた。
「わかった。じや、婚約破棄な。ま、元サヤ戻りたいなら早くしろよ」
「いやだ。そんなわけあるか!」
さらに別の令嬢に王子は、顔を向ける。
「ナーガ侯爵令嬢、君のような守銭奴は国母にはふさわしくない。モブコ男爵令嬢に横暴な金利で金を貸したそうじゃないか。借金を免除しろ」
「なにをおっしゃってますか? 借金は借金。必ず返して頂きます」
「ええい、俺の予算から返す」
「わかりました。では、婚約破棄承ります。でも、撤回するならいつでもいいですよ」
「お前みたいな守銭奴、誰がするか!」
ここで、モブコ男爵令嬢に向かいあう王太子。
「ここで、やっと言える」
と、王太子が言葉を続けようとすると、貴族令嬢の大群がやって来た。驚く王太子。
「な、なんだ」
令嬢たちは口々に自己アピールを始めた。
「婚約破棄なさったんですね。なら、後のことが心配です。国の運営があるんですから。私と婚約してください。政治には自信あるんです」
「わたしとも婚約してください。わたし、経理には自信あるんてす」
「わたしは槍が使えます」
「私は八か国語できます」
「あ、あたし、男のひとと直ぐに仲良くできます」
「交渉できます、任せて」
揉みくちゃにされる王太子。これを見ていた三人は、あーあ、と呟いた。
「やっぱりこうなってしまったのね。王子、大丈夫かしら」
「王家、権力もお金もあるし、女神の加護も持ってる。しかも、王太子はイケメンで性格もイイ。そりゃ、婚約したいっつう有象無象多数、婚約破棄したら息巻いてやって来るわ」
「大体、あたしたちが牽制してたから、何とか3人で婚約者収まってたのに。この国の歴代国王、基本ハーレムだものね。陛下なんか、正妃で五人、愛妾て十人いるんだから。しかも、女性から求められて仕方なく」
「あ、陛下がお目見えになられたわ」
冷たい空気をまとって国王が王妃たちとやって来た。そこで王太子は情けない声を出す。
「ち、父上」
ふむ、と、国王はうなずき、宣言した。
「ここで、王太子と婚約したいものはすべて婚約を許す。希望者は、後で王室関係者に報告せよ。なお、現在の婚約は継続してもよい。その際の違約金その他は王家が全て負担する」
歓声が令嬢たちから上がった。
え、と、絶句する王太子。思わず質問する。
「父上、こんなことで良いのですか? 大体、大体、王妃は一人、本来なら愛人もないですよね。第一、婚約ってせいぜい二人まででしょ、何十人も無茶ですよ」
国王は息子の訴えを一笑に付した。
「そりゃ他の貧乏国の噺だ。この国は今の所、軍事、経済、外交的に非常に安定しており問題ない。それに男にとってハーレムは夢。せっかく許可しとるのだ。喜べ」
宰相も気難しい顔で答える。
「財務状況もかなりよいてす。むしろ予算かかなり余っております。王太子の)予算や資産も余り過ぎて困ってます。それこそ婚約者を、十人位増やしてもも構いません。あと、うちの令嬢たちは学園に通っていることもあり、一定レベルの知識や作法は完璧。それこそ誰でも王妃位こなせます。まあ、王妃教育をベースに教育カリキュラムをつくっていますから。むしろ、なぜそうしないか他の国がわかりませんな。教育は国の力だと言うのに」
笑って国王は答える。
「しかもお前、ワシに似てモテモテじゃあないか」
王妃の一人が呟く。
「まあ、そうですわね。あの頃は学園の令嬢の殆どかあなたに恋い焦がれて、かなり無理して婚約してましたからね」
「それって、何又かかけてたってことてしょう? いいんですか? 」
王太子の言葉に国王は笑う。
「え、向こうから破格の条件でやってきたからな。もちろんいやなやつは断った。何、婚約だ。嫌なら解消すればいい。ワシも婚約者をちぎってはなげ、ちぎってはなげしてもんだ」
「いろんな意味でね」
と、他のお妃の一人が意味深に国王をにらんだ。妃たちの間に緊張感が走る。国王は妃たちの反応を知ってか知らずか、笑っていた。
「なに言ってるんてすか。私は妻は一人で良いです」
「うむ、まあ器が小さいとはおもうが、お前に任せる。お前自身で解決しろ。お前なら簡単だろ」
と、数多の令嬢たちを見た。
国王と王太子の会話に令嬢たちは歓声をあげた。
「流石国王様。必ずや王太子の心をものにしてやりますわ」
「あ、魔法で洗脳しよう」
「よし、枕営業よ」
「胃袋ガッツリ掴むわよ」
「しばらく逃げれば婚約破棄出来ないわよね。逃げよう」
「うちのおばあさまの国から口聞いてもらお。外交問題にするならそうそう破棄出来ないよね」
「おじいさまの方から働きかけてもらおうかしら。教皇様から口ききしてもらえたら大丈夫よね」
好き勝手言う令嬢たちに、王太子はキレた。
「貴様ら! 必ずや婚約破棄してやる! そして、モブコ男爵令嬢と結婚して見せる」
そして、王太子の戦いが始まった。
あらゆる軍略、戦略、調略、政略、経済戦、心理戦、を繰り広げ、その戦いは激しかった。国内外を巻き込んだ騒動は、それでも一年で終息をみた。殆どの関係者が満足する形て。
しかし、犠牲がなかった訳ではない。
疲れた様子の王太子に、カーリーが声をかける。
「で、結局こうなった訳ね。王太子殿下もご苦労様です」
「ああ、一番苦労をかけたな」
カーリー公爵令嬢は王太子に労いの言葉をかけた。大概の婚約者を戦略、調略、政略的に退けたのは彼女の功績が大きい。
「ま、私としては体動かせたからよかったわ」
「まあ、君の隣は安心できるな」
ドゥルガー侯爵令嬢が豪快に笑う。圧倒的な武力によって軍略的に手助けしたのが彼女てある。
「儲けさせて頂きました。本当に感謝いたします」
「契約通りだろう。まあ、私の個人資産も増えたしな」
こう言うのはナーガ侯爵令嬢。経済的な戦いでえげつない勝利を得たのは彼女の力が大きい。
「私、役に立ちました」
と、笑顔を見せるモブコ男爵令嬢。人当たりがよく、人心を操ることにおいては、意外な才能を見せた。
「ああ、君のおかげだ」
あと、彼女は魅了魔法の使い手ということに王太子は気づいている。とはいえ、彼女が好ましいことにはかわりない。
「じゃあ、お願いしますね、婚約者様」
四人を代表してカーリー公爵令嬢が言う。僅かな犠牲とは彼女たちを再び婚約者にする事。まあ、モブコ男爵令嬢も婚約する事になったのだから問題ない。のか?
「ああ任せろ、だが、婚約はしない」
四人はそれぞれの反応を示す。
「や、やっぱりあたし、王太子、不快にさせました?」
意外とカーリー公爵令嬢は自己評価が低く、その為突発的事態には比較的弱い。今も王太子に捨てられると思っている。
カーリー侯爵令嬢は、いきなり蹴りをかましてきた。彼女は本能で動く。
「ダメてすよ、王太子、契約は契約。違約金必ず取りますからね」
結構頭が硬いのがナーガ侯爵令嬢。契約など結ぶとそれしか見えない。
「あららら。どうしましよ。おとーさまにいわなくちゃ。あと、おーさまとかお妃様とか、あ、友達のミーやアレンとかにも、あと、じーやにも」
モブコ男爵令嬢は天然である。
王太子は、あきらめたように宣言した。
「いや、すぐに全員結婚する。ちゃんと責任はとる」
四人は半端なく喜んだ。カーリーは気品のある満面の笑みで。ドウルガーは王太子をどつく。ナーガは、少しはにかんだ笑顔を見せ、モブコは天真爛漫な笑顔を見せる。
それを見て、王太子は、まあ、仕方ないな、と思った。彼女たちとなら父親のような家庭は作らんと、心に誓いながら。
「ほんとは、ハーレム趣味じゃないんだけどな」
結婚後、比較的穏やかとはいえ、四人の中に順列を決めようとする争いが起こり、王太子は苦労するが、それはまた、別の話。
……王国中興の王、彼は色々な政策を、四人の王妃と行ったとされる。なお、国王のなかでは王妃が二番目に少なく、一人しか娶らなかった甲斐性なし王と同列にあつかわれることとなる。
以下設定。
王国。転生者か作った国。有能な女性でハーレムを作ったので、歴代国王はハーレムを作るのが慣習となっている。
また、教育に力を入れているので、特に王国学園に入った者は基礎能力が他国の剣聖や賢者、聖女等の最高レベルのスキルを所持する。その為単純な国力では、他国の追随を許さない。よくある悪役令嬢ものの、大国をグロス単位でまとめた超大国のイメージ。
国王。顔、スパダリ。頭、スパダリ。体力、絶倫。メンタル、スパダリ。スキル、ハーレム、鈍感。若い頃から色々武勇伝をかましてきた。王国学園の主席で、やんちゃなことも多数行ってきた。しかし学園の倫理教育のお陰で何とか一般常識的な所に落ち着かせる。奥様方とは仲が良いが奥様同士は非常に仲が悪く、冷たい雰囲気がたちこめている。ちなみに子宝にも恵まれているが、十八人の子供のほとんどが女の子で男の子は三人。ふたりはまだ一桁の年齢。
アルバート王太子。顔、よし。頭、明晰。体力すごい。メンタル、鋼。スキル、オールマイティー。
常識人を自称する王子。とりあえずの婚約者を三人用意された。父親のハーレムみたいな冷たい家庭は嫌だと思っている。しかしまさか婚約破棄後、即婚約を迫る令嬢が出てくるとは思ってなかった。少なくとも釣書を出してくると思っていたため、初動で躓くこととなる。
実は三人とも情が移っており、でも一人には決められないと、婚約破棄した。彼女らの才能を、世に放とうとする意味もあった。モブコ男爵令嬢は、魅了魔法を使っていたのは理解していたので婚約破棄しやすいと思った。しかし、意外と有能で、一生懸命でありながら天然なので情が移った。
成長著しく。この騒動のお陰で人間が膨大におおきくなった。ちなみに体重的な意味ても
カーリー公爵令嬢。顔、傾国の美女。頭、国士無双。体力、普通の兵士位には。メンタル、脆い。スキル、把握。
公爵令嬢で、王太子の幼な馴染み。完璧令嬢。実は小心者のため、あらゆる状況に対して予測し、準備を万全にする段取りの女神。それでもたまに不安になる。王太子はそんな彼女を励ます係。基本彼女の策はほぼ完璧なため、この騒動を終結する事が出来た。
小心者のため、本来は表に出たくないが、王太子の為にがんばるあくらいは彼が好き。
ドウルガー侯爵令嬢。顔、イケメン。頭、筋肉の神。あとはヘロヘロ。体力。筋肉の神。メンタル、軍神。あとはヘロヘロ。スキル、完全軍略。
侯爵令嬢。元帥の娘。戦うことに関しては無双。とりあえず手が出る。反面、他の事は苦手で、生活能力まるでなしとされている。ただし、無人島に島流しにあった時は必ず生き残れる。何とか隣にたてるのは王太子のみ。王太子は、密かにこいつ俺が娶らんと結婚出来ないと思っている。
あと、たまにデレる。
実は王太子大好き。でも表に出せるのは幼児レベルの感情表現。
ナーガ侯爵令嬢。顔、絶対零度。あとめがね。頭、経済の神。残りそこそこ。体力、お金大好き。何でも出来る。それ以外はヘロヘロ。メンタル、お金大好き。実は優しい。スキル、砂粒から無限の富。
冷酷な金貸し。金の為なら何でも出来る。どんな事情があろうとも顔色一つ変えずに平気て取り立てる。子供のころ、親が巧妙な詐欺にひっかかり、苦労したのでこうなった。あと、法律を守っていたので救われたこともあり、融通が効かない。
実は陰ながら学校や病院、孤児院などに色々な援助をおこなっている。こういった事はあまりいいことではないと思い込んでおり隠している。
王太子は、最初苦手だったが、たまに見せる優しさや何気ない笑顔に情が移った。
あと、実は料理が上手いので王太子の胃袋はガッツリつかまれている。
ビジネスパートナー、ビジネスパートナーと呪文のように唱えているくらい、王太子が好き。
モブコ男爵令嬢。顔。お花畑。頭、お花畑。の下に陽電子頭脳。体力、弱々。だけどその気になれば二週間位はへっちゃら。メンタル、やだ、怖い、と虫もころせぬふりして龍と対峙できる。スキル、魅了、危機回避。
実は隣の国の工作員。王国の領土に侵攻、制圧する陰謀の一貫として潜入。両親を人質にされており、何とかがんばる子。
王太子に魅了魔法が効果ないので警戒していたが事情を理解しても受け入れる王太子のことがすき。
有象無象の令嬢たち。顔、パーフェクト。頭パーフェクト。体力、パーフェクト。メンタル、パーフェクト。スキル、各種特化方あり。
王国学園卒業者。よくある悪役令嬢作品の主人公レベルの能力。あの手この手で王太子の婚約者の座を狙う。すべての騒動の内情を描くとなると文字数がいくらあっても足りないので割愛。ただし、全員ざまあはなく、(犯罪者や他人に被害をあたえている連中は別)ハッピーエンドとなっている。まあ、王妃教育をほぼ全員終えているようなものだから、レベルは高い。
なお、学園卒業の男はほぼ全員スパダリクラスの能力値を持つ。そりゃ、大国になるわな。
単純にインフレさせてみたかった。
よくある転生者のハーレムものと婚約破棄がくっつくとこうなりました。