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電力分散化計画

8月4日。


夜勤を終え帰宅する。まだ9時台だというのに酷く暑く、仕事場でかいた汗の上にもう一枚汗のコーティングができているようだ。こんな日はさっさとシャワーを浴び、ビールを飲んで寝るに限る。


アパートに戻り、ソーラーパネルとポータブル電源を繋いでから(重要なタスクだ)、私はそれほど広くないバスルームに全裸で飛び込んだ。


「ん?」


照明が点かない。パチパチと何度か入り切りしても再び点灯する気配は無かった。


「長く使ってた電球だから切れるのは仕方ない、が……」


この暑い中家電量販店に電球を買いにいくような気力はもう残されていない。やむなく私は浴槽にぬるま湯を貯めながら腰にタオルを巻いて押し入れに向かった。


(コイツならいけるかな)


何のへんてつも無い懐中電灯を取り出す。ストラップ部分をフックにかけ洗面台の鏡の所から吊るしてみると、多少暗いが逆に落ち着くような雰囲気のバスルームになった。


「とりあえず今日はこれでいいか」


夏用の入浴剤をいれた浴槽に身を沈め、疲れと汚れを取りながらぼんやりと点かなくなった照明を眺める。


(夕方にでも買いに行くか……)


しかし今臨時で使っている懐中電灯でも、もう少し明るさを増やし位置を調整すれば問題ないような気もしてきた。自分はあまり長湯をするタイプでは無いし、何より今の我が家には充電式乾電池をタダでチャージできる手段がある。また一つ電力会社に支払う金が減らせる要素を思い付いて、ちょっとテンションが上がってきた。


「確か、昔買った充電池があったよな」


たっぷりのぬるま湯でサッパリした私は缶ビールを片手に再び押し入れに向かう。奥の道具箱を漁るとほどなくして単3充電池とその充電器が出てきた。


これは確か十年ちょっと前の大震災の時に買った物だ。当時何回か使ったが、だんだん周りに乾電池を使う機器が減りいつの間にかしまいっぱなしになっていた。


(まだ使えるものか?)


一時間ほど充電してから、テレビのリモコンに入れてみるとしっかりチャンネルが変えられた。さすがメイドインジャパン。懐中電灯に使う分には問題無さそうだ。





ポータブル電源で充電池をチャージしながら仮眠を取った私は、出勤前に涼しくなった駅前に向かった。家電量販店ではなく、ディスカウントストア大型店舗の方だ。


浴室で使うとなると、湿気によるダメージが怖い。最初は壊れてもいいような安いライトを二つ買おうという判断をした。


「安い、安すぎる」


防災グッズ売り場には、予想以上に安い価格の携帯ライトがどっさりあった。確かに落としたら割れそうなプラスチックの商品だが一個250円とか破格すぎやしないだろうか。


(この価格帯の商品の耐用年数とか、全くわからんな)


あまり時間がない。私はその安いライトを二つ購入した。


「電池は……単3を三本か」


今手持ちの充電池は四本。二つ点灯させるには二本足りない。電池売り場に行ってみると、持っている同じブランド(リニューアルして数世代新しくなっていたが)の商品があった。二本セットと四本セット。


「二本でいいか……いや一本あたりの単価は四本セットの方が安いぞ」


悩ましい。昔の電球タイプは二本の電池(3V)で使用できたのだがLEDタイプは二本では電圧が足りず三本直列がスタンダードとなっているのは知っている。しかし乾電池の売り方は昔通り偶数パックだ。使い捨ての乾電池なら同じものを買い足せばいいのだが、充電池をローテーションで使うとなると話が違う。


四本セットを買えば二本余る。更に四本セットを買えば十二本になり3の倍数で運用できるがこのライトに使うだけだと六本は普段寝かせる事になる。


(ううむ)


他に家で単3電池を使うものはあんまり無かった気がする。時計を見てから私は二本だけを購入し職場へ向かった。足りなければまた買えばいい。




かくして、浴室の照明を携帯ライト二つにした訳だが天井近くの壁にマグネットで設置し左右から照らしたところ明るさ的には問題無かった。電池も一ヶ月くらいは充電が保つようだ。ちゃんと忘れないように定期的に充電する習慣をつければ大丈夫だろう。


湿気はやはり怖いので普段はマグネットから外して浴室外に置場所を作った。どうせ裏のスイッチを押さなければいけないので、いちいち壁につける手間については諦める。


なんだったらタダで風呂の湯も沸かせないかなと思うのだが今の設備ではコーヒー一杯分の湯を沸かすのが精一杯だ。ベランダ発電ではちょっと難しい野望だ。まあ無理せずのんびりやることにしよう。





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