ゆっくりとゆっくりと使い方を探る
7月17日。
本日も晴天也。私は太陽と地球に感謝しつつソーラーパネルとポータブル電源をベランダに出した。検証を続けなければ。
電源の他にスマホ、ポケットWi-Fiも繋いでおく。三つの出力ポートがあるのは結構便利で、この仕様についてはかなり満足していた。それからメール等をチェックしていると、先日問い合わせた件の回答が返ってきているのに気がついた。
返答内容は、どれも条件によって云々といったニュアンス的なあやふやな文章ばかりであった。唯一はっきりと断定的に記載されていたのは「お客様がお買い上げになった品はアウトレット品との事で、当社では保証サービスの対象外になります」という海外メーカーらしい一文であった。私はこのメーカーを今後購入検討から外すリストに入れた。
不機嫌になりながらメーターを見ると、蓄電量が10%上昇しているのに気がついた。
「なんでだ?この前と天気や気温はそう変わらない気がするが……」
ともかく、故障して使えないという事は無いようでひと安心だ。機嫌の直った私は親戚からたらい回しになって来たコーヒー豆を電動ミルに入れ湯を沸かし始めた。
「この電動ミルとか、動かせるのかな」
ふと思い付いてコンセントを差しミルのスイッチを入れると、ガガガガと普段通りの騒音を出してコーヒー豆が細かくなった。
「おおおお」
考えてみれば不思議なことは何もないのだが、私はちょっと感動した。太陽に当てておいただけの黒い板から電気が生まれ、このラジオみたいな箱に蓄積され家電が動かせるというのはなんだか得をした気分になる(当然、購入費用を考えれば全然元は取れていないのは承知しているが、それはそれとして、という奴である)。
「太陽光発電で飲むコーヒー、上手い……上手い気がする」
これも気のせいなのだろうが、私はそのコーヒーを堪能した。それから繋いでいる機器を見てみると、Wi-Fiの充電が100%になっていたのでソーラーパネルからUSBケーブルを外す。
「ん?」
三本のうち一本のケーブルを抜いた時、ポータブル電源のパネルに表示されているワット数が少しだけ上昇した。
(急に天気が良くなった、という事はなさそうだが)
試しにもう一度繋ぎ直してみると、ワット数は少し下がった。つまり三つ同時に給電していたのを二つにしたから一本当たりの配分量が増えたという事だろうか。
「理屈は合っている、気がする」
なんせ学生時代はがっつり文系人間であったのでこういった事には本当に疎い。ソーラー発電向いてないんじゃないですかと言われたら、「そうですね」以外の返答ができない。
それでも、こういった実験みたいなことは嫌いではなく割と楽しめていた。それにいざ災害が起きてからいろいろ応急的に動くよりはなんとなくでも実際の発電量などを把握しておくのは良い事だろう。
時に、ポータブル電源を買って良かったことが一つあった。それは発電量が数値化して見える事だ。
主にスマホなどのモバイルの充電を考えて買ったソーラーパネルだが、発電量がわからないとどのくらいで充電が終わるかも把握しにくい。またパネルの角度や向きが適切かどうかもこの発電量で確認ができる(実際設置してみると多少の向きや角度の違いで発電量がぐっと下がることがあった)。
「扇風機なんかも回せるんじゃないか?」
リビングにおいてある扇風機を繋げスイッチを押すと、これまた普段通りに回り始めた。
「こりゃいいや。太陽様々だな」
これから本格的に暑くなる。扇風機が短時間でもタダで使える(重ねて言うが実質タダではない)のは素晴らしいと思えた。
当然いい事ばかりではないのがこの手の話で、ポータブル電源の蓄電量は少しずつ減りはじめた。ソーラーパネルに接続しているままであるのにも関わらずだ。
充電と放電を同時に行えるパススルー機能があると記載があったがやはりバッテリーへの負荷は低くはないだろう。充電しながらの家電の使用は控えた方がいいような気がして、私は扇風機のスイッチを切った。
それでも家電がいくつか使えるとわかったのは良い事だ。たぶんヒゲ反り用のシェーバーなんかも充電できるに違いない。今のご時世、バッテリーを内蔵しているコードレス家電はかなりある上手く使えば意外と多目のコスト回収ができるかもしれない。
私はそんな事を考えながらピコピコと明滅を繰り返すパネルのメーターを眺めていた。