つぅかぁ ~傲慢な王子は心の声を聞きたくない~
魔女視点で物語は展開します。
よろしくお願いいたします。
「喜べ。そなたとの婚約を解消してやるから」
そう言葉を発したのはこの王国の第一王子、サラス。
「仰っている意味が分かりません」
そう返答したのはサラスの婚約者、リューシュア。
ここは王宮のサロンの一室。豪奢なカウチソファーに踏ん反り返るように座ったサラスが、両手を鳩尾に揃え姿勢正しく立っているリューシュアを不敵な笑みで見上げている。
おいおい。部屋に待機している使用人が聞いていい話なのかと狼狽え始めているじゃないか。
コホン。
そしてアタシは……この世界に生きる偉大なる魔女キュワム、御年千二十五歳。十年前に祝福魔法を掛けてやったガキが色々やらかしているのを遠見の双眼鏡で覗き見中さ。
「何故だ? 嬉しいだろう? 彼と婚約できるぞ?」
「彼? 彼とは?」
「隣国の第三王子のマルセイだよ。惚れ合っているのだろう?」
眉間に皺を寄せ心底嫌そうな顔を向けるサラスに、溜息をひとつ吐きニコリと微笑むリューシュア、軽くあしらう彼女の態度は火に油を注ぐ事になりそうだ。
「そのような事実は御座いません」
「嘘を吐くな! 皆が噂しているぞ!」
「本人が否定していると言うのに関係の無い赤の他人が流した噂話に振り回されてどうするのです」
「そなたとて……赤の他人だ!」
シンと静まり返る室内に使用人の息を飲む音が響いた。
「赤の他人でも婚約者で御座います。それにこの婚約は政略的な意味合いを持つものなので惚れた晴れたで解消する事は出来ません(国王陛下が決めたことだからどうしようもない……)」
おっと、これは不味いね。
「……えっ? 今何と……?」
「ですからこの婚約を解消する事は出来ないと……(こうなったら陛下に頼んで辞めさせてもらおうかしら)」
目を見開き驚愕した顔をしたサラスが、いきなり立ち上がりサロンを飛び出していっちまった。やれやれだね。残されたリューシュアは呆然と立ち尽くしてしまっているよ。
無理もないか……サラスの頬に光る涙を見てしまったからね。
今から十八年前、このターシバル王国に王子が誕生した。
この世界には古くから紫の瞳と白金の髪を持って生まれた者は優れた才能を持つ証だと言う伝承があった。なんでも創世主の加護を持って生まれたとかなんとか……。
まさしくこの王子がその特徴を持って生まれてきたのさ。
サラス・レオーラ・ターバルと名付けられた王子は、伝承の通り何をさせても抜きん出ていて他の者の追従を許さなかった。そして老若男女問わず魅了する程の美貌も兼ね揃えていたから周りは大喜びだった。
誰もが傅き名高い王になると毎日のように褒め称えた。
挫折を知らない権力を持ったガキが周りからこれでもかと持ち上げられればどうなるか? 答えは我儘放題の暴君になるってもんさ。
「無能な奴らを全てクビにしろ!」
「この僕が言っているのだから間違いないのだ!」
「貴様らはこんな簡単な事も出来ないのか? はぁ……僕の側近候補から外せ!」
日に日に暴君化しているサラスに周りは段々と嫌気がさして来ていた。だが、次期王に背くことは出来ない。心の声を隠し媚びへつらう貴族たちが溢れかえっていたのさ。
そんな中、国王からアタシに依頼が来た。傲慢王子の将来を心配して祝福を与えて欲しいとの事だった。
「魔女なんかの祝福など必要ない! とっとと帰れ!」
「サラス! 魔女様になんて失礼な事を!」
「申し訳ございません! どうかお許しください」
案の定、このアタシに対しても傲慢な態度を崩さなかった。とんだ命知らずのガキだったさ。
「この坊やと二人だけにしておくれ」
アタシは会場に居た連中を外に出しサラスと二人きりになった。
「僕はお前なんかの力を借りずとも何でも手に入れる事が出来るのだ!」
「ほう、例えば?」
「地位も財産も名声も全てだ!」
「それはどうだろうか?」
「誰もが僕の素晴らしさを知っていると言うのに……お前は無知で無能な魔女だ!」
痛みを知らない阿呆は平気で火にかけたポットを素手で掴むと言うのは本当のようだね。
「お前に丁度いい祝福があるよ」
「要らないと言っている!」
「王様からお代は頂いているからね。取って置きのヤツをあげるよ」
アタシは髪を一本抜き取り呪文を唱えながら魔力を流す。髪は黒い煙になってサラスの耳に吸い込まれるように消えていった。
「うっ……あああぁぁぁ! なっ何をした!?」
「ふふふ。知りたいかい?」
パチンと指を鳴らすとザワザワとした声が響いてきた。
(一体どんな祝福なのか?)
(輪をかけて偉そうになる祝福はごめんこうむりたい)
(大人しくなる祝福ならいいのに)
(これ以上傲慢になったら目も当てられないぞ)
今、サラスの頭の中には会場の外に居る奴らの声が反響していることだろう。人が多すぎて何を言っているのかは聞き取れないだろうがね。
「何なのだ! 頭の中に声が響いて気持ち悪い!」
「それがお前に与えてやった祝福さ」
「祝福だと!? こんなの嫌がらせではないか!」
耳を押さえ大声で怒鳴り付けるサラス。大いなる祝福を嫌がらせとは……まぁ、ある意味あっているな。
「莫迦な子だね~ただの声じゃないよ?」
「どうせ遠くにいる奴の声が聞こえるだけなのだろうが!」
「クックックッ! それも違うよ」
「はぁ?」
「心の声が聞こえてきているのさ」
「えっ……?」
「今聞こえてきているのは外の連中の心の声さ」
アタシは扉の向こうに視線を送り肩をすくめた。今度は聞き取れるようにひとりひとり拾い上げてやる。
(どんな祝福なのか分からないが偉大だと言ってご機嫌取りしなければ)
(それよりいつまで待たせるのだ? 早く帰って仕事がしたい)
(あーーーー面倒くさい! 我儘王子の祝福なんかどうでも良い!)
声が聞こえてくる度、顔色を悪くしていくサラス。今にも泣きそうな顔でプルプル震え出した。
「嘘を吐け! 外の連中が僕に対してそんな事言う筈が無い!」
「いいや、嘘じゃ無い。信じるか信じないかはお前さん次第だけど?」
「そんな……」
十歳にも満たないガキにはちょいと辛い現実だったか? だが、コイツは将来国を背負って生きなければいけない存在だ。
親バカな両親が息子を更生させるために心を鬼にしてアタシに託したんだ、それなりの祝福を与えてやったさ。
ただ、一歩間違えば心が壊れる祝福だが……創世主の加護があれば何とかなるだろう。
「良い事を教えてやろう」
「……良い事?」
「ああ。今はアタシの魔法で拡張して聞こえてきているが普段は同じ部屋の中に居る奴の心の声しか聞こえないよ」
全世界の心の声が聞こえたら一瞬で気が触れてしまうからね。
「それから、この手の祝福は特別だから他人に知られる事は無い。お前の安全のための措置さ。誰にも知られたくないだろう? 心の声が聞こえる事をさ」
心の内を探られて気持ちいい奴は居ない。誰もがサラスから離れていくだろう。逆に悪用しようとする輩が近付いて来て利用されるのが目に見えている。
「そして……」
これが一番大事な事だからちゃんと心に刻むんだよ。
「信頼に値する奴の心の声は段々と聞こえなくなっていくよ」
「えっ?」
「同性なら側近に異性なら伴侶にすればいいさ」
「側近と伴侶……」
「最初から聞こえない奴なら、それはもう運命と言っていい。もしもそんな人に出会ったなら一生大事にするんだよ?」
「運命……」
「大事にしないと、嫌われて逆に聞こえ始めるかもしれないからね」
「えっ……」
「よーく心に刻んでおきな」
アタシはそう言い残し会場を後にした。
その日からサラスの耳には家族以外の心の声が聞こえるようになった。口ではサラスを褒め称える言葉を発し、心では罵る者が殆どで段々と人間不信に陥るサラスだったが、創世主の加護のお陰か落ち着きを取り戻し、逆に心の声を利用して近付いて来る不埒な輩を上手く排除するようになった。
そうこうしている内に数人の者たちの心の声が聞こえなくなり側近として傍に置いた。
そして異性で心の声が聞こえなくなったのは生まれた時からの婚約者でありサラスが唯一嫌っていた人物、リューシュアだけだった。
何を隠そうリューシュアはサラスの家族と同じように最初から心の声が聞こえなかった一人だったのさ。
「何故、お前なのだ!?」
「わたくしが何か?」
「何でもない!」
建国の時代からこの国を支えてきた重鎮、セバノン侯爵家の長女リューシュア。生まれた時からサラスの婚約者として厳しい教育を受けサラスに負けず劣らずの才色兼備。彼女もまた紫の瞳と白金の髪を持って生まれていたのだ。
その事がサラスは気に入らなかった。傲慢にも特別は次期王の自分だけであるべきと思っていたのさ。小さい頃は喧嘩が絶えず取っ組み合いになる事もしばしば。
同族嫌悪と言うやつかね~?
一足早く精神的に大人になったリューシュアの大人対応で取っ組み合いの喧嘩は無くなったが、サラスの嫌がらせは続いたのさ。
「サラス殿下は急用で……おいでになれないそうです」
「また……ですか」
「大変申し訳ございません!」
「謝罪はいいわ。側近の貴方にも迷惑かけているのだから」
月に一度の二人だけの茶会には来たためしがない。勿論サラスは急用など出来ていないしコッソリ覗き見して落胆するリューシュアの顏を見てほくそ笑んでいた。
とか。
「今度の舞踏会は隣国の王女にエスコートを頼まれた。よってそなたのエスコートは出来ない」
「それはまた……急ですね」
「そなたは兄の小侯爵にでもエスコートしてもらえ」
「畏まりました。サラス殿下」
舞踏会の直前になると何故か現れる諸外国の王女や要人の令嬢たち。不満そうな顔のリューシュアが見られたサラスはご機嫌だ。
とか。
「僕は父上に呼ばれているから少しだけ席を外す。そなたは僕の婚約者と言う自覚をもって羽目を外す事の無いようバルコニーに待機していろ」
「バルコニーに待機ですって? この夜会は他国との交流を目的としたもので……」
「それは僕が戻ってからすればいい!」
「……畏まりました」
他国との親睦を深める夜会では国王との用事が終わっても放置し、リューシュアは誰とも挨拶を交わすことなく夜会を終えてしまっていた。
そんな事が度々起こり周りは婚約解消になるだろうと囁いていたよ。
実際、息子の横暴さに王妃がキレて婚約解消になりかけていたが、リューシュアが王妃を宥め事なきを得たのさ。
運命の伴侶と認めたくなかったのか? 運命の伴侶と確かめたかったのか? どっちにしてもガキだね。
そんな中、隣国から語学留学で訪れたのが第三王子のマルセイだった。
マルセイはサラスと違い温厚で女性を大切に扱う男だった。見目も良く微笑みを絶やさず誰にでも優しく接する好青年。年頃の令嬢たちはマルセイを見掛けては黄色い声をあげていた。
そして一年の留学期間で要人たちとの通訳を務めたのがリューシュアだったのさ。
女性に優しいマルセイと完璧な淑女のリューシュア、周りから見れば仲睦ましく見えただろう。実際は社交辞令を社交辞令で返すだけの関係だったとしてもね。
「リューシュア嬢はサラス様よりマルセイ様と居る方が幸せそうですわ~」
「サラス様も他国の王女様たちを優先していらっしゃるから、もしかしたら婚約解消になるのでは?」
「おい聞いたか? サラス殿下とリューシュア嬢の婚約破棄は秒読みらしい」
「反目し合うお二人ならその方が良いかもな」
その噂は心の声が聞こえるサラスには当然届くわけで……冒頭へと続くのさ。
「出て行け!」
「殿下……」
「僕の事は放っておいてマルセイの世話でもしていたらいいだろ!」
「だから違うと……」
「嘘だ! 僕の事が嫌いなのだろうが!」
「……」
はああああぁぁぁ……と大きな溜息を吐いたリューシュアが、自室の寝台でシーツを被り丸くなっているサラスにツカツカツカと近寄りガバっとシーツを剥いだ。
パーーン!
小気味いい音が部屋に響く。
「サラス! 駄々っ子が顔を出していますわよ!」
「いっ、痛いぞリューシュア! それにお尻を叩くなんて淑女としてどうなのだ」
「うるさい! 人の話を聞かない駄々っ子はお尻ぺんぺんと昔から決まっておりますわ!」
「そなたのはお尻ぺんぺんと言う可愛い物では無いわ!」
ムゥッと口を尖らせ不貞腐れたサラスが寝台に腰掛けてリューシュアを見上げた。
「さっき婚約解消できないと僕に言っていた時、違う事を考えていただろう?」
おいおい。心が読める事を暴露するつもりかい? 今まで隠していた事が水の泡になるぞ?
「あら? 顔に出ていましたか?」
「えっ?」
「妃教育で動揺を悟られない訓練を積んでいたのに!」
「動揺?」
動揺?
「わたくしの事が大好きなサラスの口から婚約解消と言う言葉が出たのですもの!」
「ななな、何を言っているのだ、使用人の前で!」
あらあら、真っ赤になっちゃって。否定もしないし。
「大好きでしょう? わたくしの事」
「何故そう思うのだ! 茶会はすっぽかすし、エスコートはしないし、夜会では放置するし……」
自分のしでかした嫌がらせを尻つぼみに語るサラスにリューシュアがプッと吹き出した。
「茶会は……食べられなかった菓子を、その日の内にサラス自ら持参して謝り倒した後、夕食まで一緒に食べて帰るじゃないですか。茶会の時間より長い時間我が家に居ますよね?」
「うっ……」
「王女のエスコートは……親善には欠かせないものですからしようがないとして、事前に贈られてきたドレスや宝石はサラス色で統一されていましたわ。わたくしと微妙に色が違いますから見る人が見れば独占欲丸出しです」
「ううっ……」
「夜会の放置は……わたくしに変な虫が付かないように隔離していた事を知らないとでも? バルコニーに王家の影が十数人潜んでいましたよね?」
「うううっ……」
ベタ惚れじゃないか! まぁ、覗き見ていたから知っていたけどね。
「ですから……陛下に頼んで辞めようと思うのです」
「辞める!? まっ……まさか婚約を……?」
精神的に大人なリューシュアはサラスがガキに思えてしようがないのだろうさ。おまけに独占欲丸出しの暴君だ。マルセイに乗り換えてもサラスは文句は言えないだろう。
「何故そうなるのです? 莫迦なのですか」
「むぅ……何を辞めるのだ?」
むぅ……何を辞めるのだ?
「決まっているでしょう? マルセイ殿下の通訳の公務ですよ」
はいはい。そう言う事だったのかい。
何せリューシュアはサラスにとっての運命の伴侶…………と言っても過言では無い相手だ。さっきの心の声の「辞める」は婚約ではなく通訳の事だったってオチかい。
種明かしをしよう。
実はサラスには全ての人間の心の声が聞こえているのさ。
段々聞こえなくなるって事は話す内容が心の声と一致しているのさ。即ち、嘘偽りない事を言っていると言う事さ。多少は違っていても真逆でない限りアタシの魔力で修正される祝福なのさ。
真逆……さっきのリューシュアは『この婚約は政略的な意味合いを持つものなので惚れた晴れたで解消する事は出来ません』と言いつつ『国王が決めたことだからどうしようもない』と思ってしまった。その後も『こうなったら国王陛下に頼んで辞めさせてもらおうかしら』と言う風に。
アタシが聞いても婚約解消の話だと思うわな。
まさかそれが通訳の話とは……偉大なる魔女も騙されたよ! 騙している訳じゃ無いけどね。
「だったら最初からそう言えばいいではないか!」
「最後まで聞かずに逃げ出したのはサラスでしょうに」
「むぅ……」
あの時は初めて聞いたリューシュアの心の声に絶望したんだろうよ。運命の伴侶じゃなかったって。真相を教えてやらなきゃいけないようだね。
ポンッ!
「きゃあ!」
「リューシュア!」
おやまあ。身を挺してリューシュアを護っているじゃないか。
「久しぶりだね、坊や」
「お前は……魔女!」
「えっ? 魔女様」
「お嬢ちゃんは初めましてだね~」
「あっはい! お初にお目に掛かります、偉大なる魔女様」
うんうん。敬うその姿勢良し。
「何しに来た!?」
相変わらずアタシをぞんざい扱うガキだね。このまま真相を話さずモヤモヤさせておこうか。
「お嬢ちゃん、坊やと二人きりで大事な話があるから部屋から出ておくれ」
「はぁ? 今更何の用だ!?」
「畏まりました。皆さん、心配いりませんからお二人だけにいたしましょう」
「おいこら、リューシュア!」
「直ぐに終わるよ」
音もなく閉じられた扉に捨てられた仔犬のような視線を向けるサラス、既にリューシュアの尻に敷かれているようだ。
「お嬢ちゃんの心の声が聞こえたみたいだね?」
ピクリと肩を揺らし泣きそうな顔をするサラスが認めたくないのか黙っている。
「アタシは魔女だから何でもお見通しだよ」
サラスは溜息を吐きポツポツと語り出した。
「今まで心の声が聞こえていた令嬢たちは僕を嫌っているか、どうでも良いと思っているか、権力が欲しいと擦り寄ってくる者たちばかりだった」
「それで?」
「リューシュアだけは最初から心の声は聞こえなかったのだ」
「ほう?」
「でも僕は彼女ととても仲が悪くて……でも声が聞こえないと言う事は、リューシュアは僕の事が好きなのだと言う事で……」
「その通りだな」
アタシの言葉にぱあっと笑顔を見せた後、現実を思い出し再び暗い顔になってしまった。
「リューシュアは僕が嫌いになったのか?」
薄っすらと瞳を濡らし下を向くサラス。あの日の暴君は何処へ行った?
「実はな、サラス……」
アタシは心の声の真相を話しサラスの罵声を浴びながら帰って行った。
その後、リューシュアは婚姻の準備の為と理由をつけマルセイの通訳を辞めたみたいだ。
「リューシュア。僕は公務が立て込んでいるから晩餐会は中止だ。今日は侯爵家に帰れ」
月に一度の二人だけの晩餐会。サラスは婚姻の準備に時間をとられ王太子としての仕事が溜まってしまっていた。心の中で「リューシュアに手伝って貰いたい。一緒に食事がしたいと」叫んでいるよ。
「分かったわ。今日は王宮に泊って仕事の手伝いをするわ。明日の朝食は一緒に食べられるでしょう」
むむむ!? リューシュアも他の魔女に祝福を貰っていたのか?
「リ、リューシュア? そなた……心の声が聞こえるのか?」
クスリと笑ったリューシュアがサラスの手を取り顔を覗き込んだ。
「そんな訳ないでしょう? 魔女様じゃあるまいし」
「じゃあ何故僕の考えていた事が分かったのだ?」
「サラスの顔を見れば何を考えているかなんて直ぐに分かるわよ?」
「えっ?」
「何年一緒に居ると思っているの? バレバレよ!」
なんとまあ、偉大なる魔女の祝福も愛し合う二人の以心伝心には及ばないと言う事かね~。
おしまい。
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