表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
93/135

93


 それでもコバルトは尾を動かし始め、トンネルを抜け出たところで口を開いた。

「これから我々はどこへ出かけるのだね? どこのゾーンだ?」

「あんたは海流をよく知ってるから、捜索場所は全面的に任せるってさ」

「中隊長がそう言ったのか?」

「うん」

「あの男にしては、まともなことを言うではないか」

 それは本当のことだった。

 コバルトは近辺の海流を非常によく知っており、どの方角へ出かける時でも正しい流れをサッと見つけ出し、尾をほとんど動かさずに体力を節約することができた。

 それはもちろん、スピードと時間の節約にもつながった。

「そういう事情ならトルク、あてずっぽうに探すよりも、もっといい考えがあるぞ」

「何さ?」

「適当に探すふりだけして、見つからなかったことにして帰還しよう」

 サイレンの責任感に期待した僕が馬鹿だった……。

「それはまずいよ」

「お前は真面目だな……。ではプラン2だ。爆発音が聞こえてから、その場所へ急行すればいい」

「それじゃあ遅いよ」

 だがコバルトは答えず、一瞬言葉を切り、耳を傾けてから続けた。

「一応は掃海艇そうかいていも出撃しているのだな」

「数は全然足りてないけどね」

 コバルトの聴力は船の存在を感知するだけでなく、種類までも聞き分けてしまう。

 掃海艇というのは、機雷を処理する専門の船舶。

 通常は敵が仕掛けた機雷を掃除するのが役目だが、こんな場合だから、もちろん駆り出されたのだろう。

「ところであんたは、どうやって機雷を探すつもりだい?」

 僕がそう言うと、コバルトが鼻から息をプッと吐き出した。泡になって水面へと登ってゆく。

「いま私が一番あきれているのは、そんな方法も知らずにお前が命令を受けていることだよ。お前の頭は本当に『新品の金庫』だな」

「どういうことさ?」

「空っぽということだよ」

「……」

「そんな顔をするな。人間の親たちが言うではないか。出来の悪い子ほど気になるものだと」

 僕とコバルトの間の差。つまり知性の差と体のサイズの差。

 この2つはどうしようもなくて、僕もそのままに認めるほかない。

 それでも腹だけは立つから、仕返しに腕を蹴飛ばしてやったが、痛みを感じるどころか、コバルトは平気な顔でニンマリしただけだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ