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偵察機は、僕たちの姿をすぐに見失ったようだ。やがて機銃の音は消え、エンジン音も遠くなった。
「もう大丈夫かな?……」
「そのようだな」
「ふうう」
バタバタしながら、僕は潜水服の中へもぐり込むのに成功した。
「ねえコバルト、スコーピオンのクルーは大丈夫かなあ?」
「偵察機と遭遇した瞬間にSOSを発信しているさ。すぐに助けがやってくる」
「……」
「もっとも、お前と私を助けてくれるわけではないがな」
その言葉に、僕は再びゾッとしなくてはならなかった。僕たちが本格的に反逆者になったということだから。
「トルク、キャンディでもなめたらどうだね? 少しは気が落ち着くだろう」
「2個あるから、あんたにもあげようか?」
コバルトは首を左右に振った。
「やめておこう。小さすぎて食った気がしない。正直に言うと、サイレンは甘みを感じる能力が弱いのだよ。食ってもよく理解できない」
「へえ」
「そのかわり血の味はよく分かるぞ。例えばシャチとマッコウ鯨では、はっきりと味が違う」
「人間の血はどんな味?」
するとコバルトは黙ってしまった。そして、おかしなことを言うやつだ、という顔をして短く答えた。
「リリーにきけ」




