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こんなことになっても、まわりが暗くなれば眠くなる僕というのは、自分で思うよりも図太い人間かもしれない。
もちろんまだ夜ではない。ただコバルトがちょっと深くまで潜水しただけなんだ。
水は太陽光をよく吸収するから、100メートルも潜れば本当に暗くなる。
そういう暗闇で僕はぐっすり眠っていたが、コバルトにチョンチョンとつつかれて目が覚めた。
もちろん何も見えはしないが、声だけは聞こえる。
「トルク、何時になった?」
寝ぼけ眼で僕はスイッチを押し、時計を光らせて驚いた。いつの間にか時間がたっている。
「19時20分だよ。聞きたいラジオ番組でもあるのかい?」
「寝ぼけるな。出かけるぞ」
「どこへ?」
「ストロベリー基地さ」
僕は一瞬で目が覚めてしまった。
「僕たちはお尋ね者として手配されているんだよ」
「首に賞金がかかっているかもしれないな。海中でサイレンと出会うのもまずい」
「じゃあなんで?」
「様子を見ておきたいことがあるのさ。黙ってついてこい」
そうまで言われてしまうと、僕にはどうすることもできなかった。
コバルトは前進を始め、水流がヘルメットをなぶってゆくのを感じた。




