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僕の方は、ここからが大変だった。
爆撃が終了する頃、スノーマンの乗組員たちと一緒に救援の飛行艇に乗り込むことができたが、僕だけはそのまま艦隊司令部へと連れて行かれた。
というよりも、連行されたんだ。
そして、待っていたのが長時間の尋問だった。
「ゴーストを沈める作戦が失敗したと考える根拠は? そういう物的証拠があるのか?」
「海面に、油膜や漂流物を本当に目撃しなかったのか?」
コバルトの身のことなど、一言もきかれはしなかった。
もちろん、僕の回答の歯切れが悪かったことは否定できない。
だが、どれだけ真面目に答えても、ツンドラ少将は頑固で、僕の説明などハナから信じようとしないのだ。
あれだけの物量を投じた作戦が失敗だった、とは認められないのも分かるけれど。
数時間後、やっと僕は解放されたが、艦隊司令部が納得したとはとても思えなかった。
僕が連行されたことは、ストロベリーの耳にも入っていたらしい。
司令部の玄関を出ると、迎えの自動車が僕を待っていた。
ストロベリー基地に帰りつき、もちろん僕はすぐに地下プールへ降りていったが、コバルトのストールは空っぽのままだった。帰ってきた気配はない。
どうしようもなくて、僕は突っ立ったままでいたが、すぐに気付き、リリーが話しかけてくれた。
「コバルトはまだ戻りません」
「そうらしいね」
「新人の訓練教官としての仕事は、解任してもらおうと思います。コバルトがいなくても、これからは私がお供できますよ」
「うん…」
ところが、
「おいトルク」
背後から話しかけられて、僕は振り向いた。
そこには中隊長がいたが、僕のところへ駆け足でやってくるところだ。
地下プールへ降りてくること自体が珍しい人物なのだが、どこか顔色がおかしい。
「はい大尉」
僕が敬礼をすると、何を思ったのか、リリーが目玉をクルリと動かした。
中隊長はすぐに口を開いた。
「トルク、おまえ何をやらかしたんだ? あと1時間で、ツンドラ少将がやってくるぞ」
「ここにですか?」
「抜き打ちの査察だと。お前、何を言ったんだ?」




