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 航空部隊が到着したのは、スノーマンが今度こそ横腹に穴を開けられ、水面下に姿を消した直後のことだった。

 白く泡立つ海面に響く耳慣れた爆音に僕は振り返ったのだが、その数に驚いた。

 ウンカのようにという言葉があるけれど、まったくそれがふさわしかった。

 やってくる飛行機がこれほどの数とは、僕も聞かされていなかったんだ。

 みな見覚えのある形の爆撃機で、腹面を明るいブルーに塗られているから、海軍所属機だと分かる。

 鼻の突き出した犬のような顔をして、エンジンと垂直尾翼がそれぞれ2つずつある。

 それが、おしよせてくるという表現が本当にふさわしく、数を数えるのも難しいほどなんだ。

「これがアメリカ海軍の本気というやつか」

 などと僕はつぶやいたけれど、こいつらが爆弾倉ドアを開き始めるまで、その真の意味には気が付いていなかった。

 もちろん僕のいる位置からは見えなかったが、前方の海面には、すでにコバルトの手でペイントが流されていただろう。

 上空から見ると、巨大なオレンジ色の帯のように見えたに違いない。

 爆雷は爆撃機を離れ、音もなく落ちてゆく。

 機内にいる照準手は、ただ何気なくボタンを押していただけかもしれない。

 投下された爆雷も、大型のものばかりだったようだ。

 海中で爆発すると同時に、轟音と共に水柱が上がるが、それが見たことのない高さと直径なのだ。

 海の真ん中に突然、白い小山が出現するようなものと思ってもらえばいい。

「司令部のやつら、コバルトのことなんか何も考えちゃいないんだ」

 僕は猛然と腹が立ってきた。

 そりゃあコバルトは、僕の恋人でもガールフレンドでもなかったかもしれない。

 軍人でもないし、アメリカ国民でもない。

 だけど、これはひどいじゃないか。

 爆撃機は次々に押し寄せ、まるで順番を待つように爆雷を投下していった。

 すさまじい波なんてものじゃない。まるで地獄のような眺めで、風に乗り、僕のところまでしぶきと火薬のにおいが届いたほどだ。

 コバルトはどうなった?

 ゴーストのことなんか、もはやどうでも良かった。コバルトさえ無事でいてくれたら…。


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