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 ゼブラが投下した5発の爆雷の音は、僕の耳にももちろん聞こえてきた。

 地上で聞く爆発音とはまったく違う響きで、鼓膜で感じるというよりも、体全体が揺すぶられると言うほうがいい。

「ゴーストに被害を与えたと思う?」

「まさか」と、コバルトはそっけない。

「じゃあどうするんだい?」

「アトラクションはこれで終わりさ。ゴーストは逃げ去り、ゼブラはどこやらへの航海を続ける。そして私は食事をする」

「おなかすいたのかい?」

「すいた?」

 ぐるりと首を回して、コバルトは僕をまっすぐに見た。

「なあトルク、一晩中、私は何も食べていないのだぞ。お前はコソコソと何か口にしていたが」

「軍用レーションだよ」

 気が付くとコバルトは尾の動きを止め、また水面に顔を出している。それだけでなく、尾を上手に使って、体をクルリと1回転させた。

 こうやって周囲を偵察するのだ。

「やはりそうだ」

「何が?」と質問したが、まったく同じ風景を見たにもかかわらず、僕の目は何もとらえることができなかった。ただ平らな海と空が広がっているだけ。

 もうゼブラは、水平線近くの小さな点でしかない。

「ゼブラの近くにいた時に気づいたのだよ。ゼブラのへさきが発する波に驚いて、トビウオが何匹か水上を飛んでいた」

「僕は知らないよ」

「あの方角に、まだ幾匹か飛んでいるのが見える。何かに追われているようだ」

 コバルトは泳ぎ始めた。

「追われてるって?」

「きっとシイラの群れだ。うまいぞ」

 シイラというのは、緑のような金色のような色をした頭でっかちの変な魚で、長さは2メートルほどになるから、コバルトの食事には、うってつけかもしれない。

「やはりシイラだ」

 やがてトビウオの群れを追い、本当に10匹ほどのシイラが固まって泳いでいる姿が僕の目にも入ってきた。

「どうするんだい?」

「見てろ」

 群れに追いついて、コバルトは横からヒョイとまぎれ込み、尾の力を使って、シイラたちをなぎ倒すように、大きく一発ブッたたいたんだ。

 すると、あっけないもので、シイラたちはすぐに気を失ってしまう。

 もちろん1、2匹は逃げ去ってしまったが、動かないシイラたちをかき集めるのに、コバルトの両手は忙しくなった。

「見てないで、お前も手伝ってくれ。内臓のカケラぐらいならやってもいいぞ」

「いらないよ」

 僕も両手を使って、1匹を引き寄せることができた。ずっしりと重く、いかにも肉が詰まった育ちの良い魚だ。


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