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 ヘルメットのガラス越しでもわかるほどに、僕はゲンナリした顔をしたに違いない。リリーはクスリと笑った。

 ところがコバルトは静かなのだ。会話に反応もせずに前進を続けるだけ。

 たしかにゾーン12は遠いから、しばらく泳ぎ続ける必要がある。それにしても…。

 やがて、尾の動きをゆるめたコバルトに、リリーが追いついてきた。

「どうしたコバルト」

「あれが聞こえるか?」

 リリーは耳を澄ませ、

「…おや潜水艦か…。気づかなかったな」

 もちろん僕の耳には何も聞こえない。

 ストロベリー部隊が設立された当初には、サイレンたちの聴力はソナーと同程度だと考えられていた。

 ところがそれは、サイレンたちのいつものやり方、つまり『能ある鷹は…』というやつだったらしい。

 この頃の研究では、サイレンの聴力はソナーをはるかに上回っていることが実証されつつあった。

「距離は?」僕は、やっと口をはさむことができた。

「まだ遠い。ゾーン12よりは近いが」

 ここでリリーの声の固さに、僕は驚くことになった。

「それだけではありません。あれはゴーストですよ」

 コバルトも静かに答えた。

「ああそうだ。スクリュー音に独特のクセがある。羽根の一枚がわずかに曲がっているのだな。当の日本人もまだ気づいていないことだが」

 僕には訳が分からない。

「ゴーストってなんだい?」

「船体番号のない謎の潜水艦だ。日本艦であることは間違いない。アメリカ船めがけて魚雷を発射するのだから」

「それで?」

「それでもなにも、それ以外、詳しい所属も乗員も一切不明だ。ただ分かっているのは神出鬼没、現れたと思えば消えて、手に負えないということだけさ」

「じゃあどうすんのさ?」


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