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「わあっ」

 くるくると回転するせいで、空中で僕の手足はヒトデのように広がるが、その後は重力に引かれて落ちてゆくしかない。

 と思ったら、その水面にリリーの尾が現れた。

 サイレンの尾びれは巨大で、十分に僕を受け止めるクッションになる。

 だがおとなしいクッションではなく、僕を受け止めたはいいが、どうやったのかリリーの尾びれは、そのまままるでコマのように、僕の体をクルリと3回転させたんだ。 

 ヘルメットの中で、僕は舌を噛んでしまった。 

「人を物みたいに投げるな。バスケットボールじゃないぞ」

 だが僕の文句になぞ、サイレンたちは関心がないようだ。

「器用だなリリー、水族館で雇ってもらえるぞ。イルカのショーよりは受けるかもしれん」

「それはそれは」

 と、リリーもニヤニヤ笑っている。

 ヒョイと手を伸ばし、コバルトはリリーの尾から僕の体を受け取った。その動作がごく自然なので、余計に腹が立つ。

「あのさコバルト…」

「うるさい。ゴチャゴチャぬかすと海溝へ投げ込むぞ」

 そのままコバルトは、当たり前のように泳ぎ始めるじゃないか。

 仕方ない、という表情でリリーもついてくるが、口は閉じなかった。

「海溝へ捨てるのなら私にくれ。ちょうど空腹になってきたところだ」

 そこで僕と目が合ったのだが、リリーは微笑んだ。

「ええトルク、これが冗談ではないところが、サイレンの恐ろしさなのですよ」


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