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あまりにひどい経験に、そのまま座り込んでいると、僕の姿を見つけて、中隊長が近寄ってきた。
「おいトルク、サイレンたちはどうした? 1匹もいないじゃないか」
「はあ」
「いや、そこにいるのはリリーか? 他の連中はどうした?」
「ストライキだそうですよ。もっとうまいものを食わせろと言ってます」
「ストライキ? サイレンどもが? 人間ですらないくせに」
僕は事情を説明した。
「サイレンたちはストライキ中で、要求が通らない限り、ここには戻らないそうです。沖の沈没船を臨時の本拠地にするとか。労働組合みたいなもんですかね」
「じゃあなぜ、リリーだけはここにいる?」
「リリーだけは、ストライキに参加しなかったんです。バカバカしいと言って」
いかにも呆れた顔で、中隊長は鼻を鳴らした。
「まともな神経をしているのは、リリーだけということか…。じゃあいい、お前とリリーで行って来い。ゾーン12で、正体不明の潜水艦が目撃された。ガセかもしれんが、万が一、本当に敵潜だったら困る」




