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眼の色を変え、サイレンたちは僕に迫ってくるが、円陣だから逃げようがない。
「僕は…」
サイレンの一人の伸ばす手が、もう少しで僕に触れるところだった。あの尖った爪につかまれてしまったら…。
ところがその瞬間、
「こちらですよ」
別の手が僕の腕をつかみ、上へと引っ張り上げたんだ。
だけど乱暴なのではない。海水から浮力を受けている僕の体は、ふわりと持ち上げられた。
でも僕の腕をつかんだのはコバルトではない。コバルトの姿は、少し離れたところにいるのが見えている。
僕の腕をとる者は、サッと泳ぎ始めたようだ。
甲板を離れ、僕はサイレンたちからギリギリで逃げることができた。見上げると、リリーと目が合った。
僕を助けてくれたのは、リリーだったんだ。
「リリー、何をする!」
「リリー、裏切るのか!」
もちろんサイレンたちは声を上げた。
だがもうリリーは本格的な加速に移っている。もちろんサイレンたちも泳ぎ始めるが、突然のことで、体勢を立て直すのに手間取っているようだ。
「邪魔だ」
「痛いよ」
急ぐあまりに互いに体をぶつけ、悲鳴をあげるサイレンもいる。
慣れた手つきで、リリーは僕を肩に乗せて水面を目指した。




