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45(第3部 敵潜水艦)


「これは合衆国海軍に対する、我々サイレンからの正式な要求である…」

 コバルトが朗々と話し始めた時、正直に言って僕は目を見張った。普段から深みがあって美しいコバルトの声が、さらに張りを増していたのだ。

 だけど、その内容がいけない。

 きっかけは、僕の潜水服の調子が悪くなり、修理に出したことだった。

 数日して修理が完了して戻されてきたので、着用して試運転をすることにした。

 そのためにはもちろんコバルトの協力が必要になるが、珍しくも文句を言わず、二人で基地のゲートを出た。

 風がなく天気のいい日のことで、波がないせいで、まるでガラス板のように平らな海面下を、スムーズに進むことができた。

 潜水服の調子は悪くない。

「パーツを新品と交換したのが良かったのだな」

 僕はそんなことをつぶやいたが、コバルトは真っすぐに泳ぎ続ける。

「コバルト、もういいよ。基地へ帰ろうよ」

 ところがコバルトは尾の力をゆるめないのだ。

「せっかくだから、沖の沈没船のところまで行こう。ぐるりと回って戻ってこよう」

「いいよ」

 沈没船というのは、何十年も前に嵐で沈んだ貨物船で、平らで見通しの良い海底に、まるでエジプトのスフィンクスのように座り込んでいる。

 長いマストが水面から少し突き出していることもあって、基地のゲートにつながる目印として便利ではあった。 

 やがて前方にうっすらと沈没船が見えてきたのだけれど、どうも様子がおかしい。

 普段なら人っ子一人なく、せいぜい住み着いている小魚たちが群れているだけなのが、今日は甲板上に人影があるじゃないか。

 サイレンたちだ。

「あそこにサイレンがいるよ」

 その言葉に、コバルトの反応はない。

 サイレンの数は10頭ばかりで、近づくと見覚えのある顔だと分かった。

 なんのことはない。普段は地下プールにいる、ストロベリー所属のサイレンたちなのだ。リリーの顔だって見える。

 平らな甲板上に、サイレンたちは円を描くように座っている。まるで何かの集会でもしているみたいだ。


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