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 僕が怒って何も言わずにいると、コバルトは続けた。

「わかった、わかった。分かったからそんな顔をするな…。お前ににらまれても、痛くもかゆくもない」

「あの鯨はどうなった?」

「モービーディックか? あの後は本当に大変だったのだぞ…。だが今日はもう疲れた。おいおい話してやる」

「だって…」

「次のパトロールまで待て。どうせパトロール中は、時間つぶしにダベるしかないじゃないか。その時まで楽しみにしとけ」

 言い出したら止まらない。結局この日は、コバルトはもう何も教えてくれなかった。

 僕は好奇心で頭が爆発しそうになったまま、引きさがるしかなかったんだ。しぶしぶ僕は、食堂へと戻りかけた。

「おい待て」

 僕がジロリと振り返ると、コバルトは面白そうに笑った。

「お前に土産がある」

 そう言いながら、僕に向かって投げて寄こしたものがある。何も考えず、僕は反射的に受け取ってしまったけれど、

「何これ?」

 思わずそう言いたくなるようなものだった。

 大きさは石鹸ぐらい。小石のような見かけで、きちんとした形はしていないが、小石ほど重くはない。

 鼻のそばに近づけると、何か奇妙な芳香がある。

「それはリュウゼン香というのだよ。マッコウ鯨のクソの一種だ。モービーディックが偶然ひりだしたのを拾っておいた」

「えっ」

 驚いて僕が放り出したのを、コバルトはうまくキャッチした。

「これ1個で、お前の年収ほどの値段がつくのだぞ」

「いらないよ、そんなもの。鯨の肛門から出てきたんじゃないか」

 でもコバルトは強引だった。

「いいから持っていろ。でないと、お前の口にネジこむぞ」


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