表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/135

35


 5分間かそこら、鯨は僕とリリーを引き続けた。

 ロープはピンと伸びて波間に消え、僕は僕で、まるでジェットコースターに乗ったような気分だったが、それもあっという間に終わりを告げた。

「あら?」

 当てが外れたような顔をして、リリーが声を上げたんだ。ロープにつながれていた手首を引き寄せる。

 もはやロープは力なくダラリとし、リリーが手繰り寄せると、すぐに終わってしまった。

「切れてるのかい?」

 リリーは、ロープの終点に目を近づけた。

「切断面から見て、コバルトが噛み千切ったようですね」

「どうして?」

 一瞬言葉を止め、リリーは僕を振り返った。さっきまであれほどスピードが出ていたのが、今はもう波にプカプカ浮かんでいるだけだ。

「これ以上あなたを巻き込まないためでしょう。コバルトなりに気を使っているのですよ」

「まさか」

「まさかも何も、これが真実ですよ」

「どうしよう?」

 2人とも何も思いつけないでいるままに波はやがて完全に静まり、見回しても、さっきの大騒ぎを思い起こさせるものは、もはや何もなかった。 

「…」

 しばらくして、リリーが口を開いた。

「船へ戻りましょう。ここにいても、できることは何もありません」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ