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 僕とコバルトを待っていた船は、船名をゼブラといった。

 表向きはフリゲート艦の一種とされているけれど実態は違って、艦底部には竜骨を避けて大きなドアがあり、そこからサイレンが出入りできるようになっている。

 要するにサイレン専用の輸送艦なんだ。

 あきらめた風にため息をついて、口から大きな泡を吐き出し、コバルトは再び前進を始めた。

 やがて、ゼブラの艦底を直接見上げることができる場所までやって来た。

 B29の爆弾倉ほどもあるドアがあり、僕とコバルトを待って大きく開いている。

「この入口を見るたびにカンオケのフタを思い出すのは、私だけかね?」

 そんなことを言いながらも、いざドアをくぐり抜ける時には、僕が頭をぶつけないように、コバルトは片手でそっと押さえてくれた。

 ドアを通り過ぎると、すぐに四角い部屋になる。サイレンを入れるために、ここには常に水があるのだが、それだけじゃなくて、今日は先客がいた。

「リリー」

 ゆったりと尾を伸ばして水に体を預け、リリーはリラックスしていた様子だ。僕が声をかけると振り向いた。

「あらトルク、なんだか知らないけれど、また一緒にお仕事をすることになりましたね」

「そうだね」

「人間の肉はうまかったか?」

 というセリフは、もちろんコバルトの口から出た。

 機嫌を悪くするふうでもなく、リリーはコバルトに場所を開けたが、2頭がいて狭い場所ではもちろんない。

「また後で来るよ。僕はブリッジへ出頭しなくちゃならない」

 そう言って僕がハシゴを登ろうとすると、コバルトが僕の足をつかんだ。

「待てコラ。私を人食いサイレンと二人きりにする気か?」

「…」

 僕は困ってしまったが、リリーが助け舟を出してくれた。

「トルク、気にすることはありませんよ。私はグルメですから」

「グルメだと?」とコバルトがにらむ。

「運悪く今日はマヨネーズを忘れてね。そうでなければ味付けのしようもあったろうがね」

 コバルトが何かを言い返す前にエンジン音が高まり、船が動き始めた。


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