表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
132/135

132


「連中の反応はどうだ?」 

 サンゴの影に身を隠しているコバルトには、ホットドッグの姿が見えないのだろう。

 僕はのんびりと答えた。

「何人か降りてきたよ。司令塔から出て集まった。甲板砲のところ。聞こえないけど、一人が何かを命令してる」

 甲板砲というのは、文字通り潜水艦の甲板に設置してあって、普通の大砲と大差ない。パイプのような砲身があって、上を向いたり下を向いたりする。

 コバルトの声が、どこか不安げになった。

「連中は、手に何かを持っていないか?」

「へえ、見えないのに、よく分かるね。円筒形の物をかかえてる。2つか3つ」

「バカ、それは砲弾だ。奴らは甲板砲を使うつもりだ」

 コバルトの言う通りだった。すぐに砲撃が始まった。

 もちろん攻撃目標は僕だ。

 ドンという破裂音。同時に砲口から白い煙が上がる。

「あんたがツンドラの名前なんか出すからだよ!」

「知るか。送信したのはお前だ」

 でも僕はそれ以上言い返さなかった。

 というよりも、できなかったんだ。

 信号灯をかかえて地面を走り、逃げるネズミのようにジャンプしなくてはならなかった。

 一発目の砲弾は何十メートルか離れた場所に命中し、サンゴのカケラをはじき飛ばしただけだったが、僕の神経を吹っ飛ばすには充分だった。

「もうやだ」

 自分でも驚いたが、コバルトの背中に飛び乗ると、すぐにそういうセリフが出た。

「だから言ったのだよ」

 とコバルトの訳知り風な声が聞こえたが、

「あんたは何も言ってないよ! 今すぐ逃げないと」

 コバルトにも異論はなかったようだ。尾を最大限に動かし、水を切り始めている。

「なあ、お人よし。この期に及んでも、まだホットドッグを助けてやるべきだとは、まさかお前でも言うまいな?」

「どうして?」

「いま聞こえ始めた別の音がある。ゴーストが魚雷発射管に注水したようだ」

「なんだって?」

「魚雷発射の準備完了。ヨーソロという感じだな」

「それじゃあまずいよ」

「ああ、まずいまずい。アメリカ海軍はまた一隻の潜水艦を失うのさ」

「だけど……」

「心配するな。この海は浅い。まともな艦長なら全速前進、船体をサンゴに座礁させることを考える。誰一人おぼれはしないさ」

「だったらいいけど」

 この頃には、コバルトの尾は最高速度に達していた。砲撃音も遠くなりつつある。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ