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「あの潜水艦は?」

 僕は指さした。

 いくら僕だって、すぐ目の前を潜水艦が走っていれば、気づかないわけがない。

 形から見て明らかにアメリカ海軍の船で、司令塔もすべて水に沈めて潜航している。

 僕とコバルトは船尾側にいて、あとを追う形になっている。スクリューが盛んに回転しているのが見える。

「コバルト、あれはどういう潜水艦だい?」

「なんということのない標準型さ。アメリカ海軍の基地ならどこにでもいる」

「それがどうかしたのかい?」

「考えてごらん。もうここはパールハーバーが近い。アメリカ潜水艦であれば、潜航したまま走る必要はない。とっくに浮上してモーターを止め、ディーゼルエンジンを騒がしく動かしているはず」

「あっ」

 やっと僕も気が付いた。

 この時代の潜水艦というのは『潜航したまま走る船』というよりも、『潜航することもできる船』という程度の性能しかなかった。

 だから海に出ても、大部分の時間は浮上したままでいる。いざ敵を発見してから、やおら潜航を始めるわけ。

 それがパールハーバーへ帰投しつつあるのに、なぜかまだ浮上していない。

「どうしてだろう?」

 僕は首をかしげたが、コバルトはと言えば、腹が立つぐらい、いつでも答えを知ってる。

「あの潜水艦は日本軍だけではなく、アメリカ軍からも身を隠しているのだよ」

「友軍から? どうして?」

「あの進路から何かを感じないか?」

「進路?」

 そう言われて、僕は方位磁石を取り出した。

 もちろん軍用品で、一般で使われている物よりも正確で頑丈。水にも水圧にも強い。

「いまどこ?」

 僕が海図を取り出すと、コバルトはため息をつき、それでも尖った爪の先で示してくれた。

「ここだよ。あの潜水艦が、ここまでまっすぐに北上してきたと仮定してごらん。真南には何がある?」

 僕は海図に目を走らせた。

「南方には何もない……、あった。でも四角環礁だよ」

 環礁かんしょうというのはサンゴの塊で、島と呼ぶにはあまりにも小さい。それでも水上に顔を出し、何かの目印ぐらいにはなる。

 かといって、船をつけるほどの面積もない。

 この環礁はパールハーバーの50キロ南にあり、ブロックのように四角い形をしているからこの名がある。


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