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そうやって僕は夢も見ずに深く眠り込んでしまったのだが、その目を覚まさせたのは低いモーターのうなりだったかもしれない。
それがヘルメットの中に響き、僕の鼓膜を刺激したのだ。
モーター? 何の船だろう、と思いつつ目を開くと、コバルトの横顔が目に入った。
いつの間にか深度100メートルから、もっと明るく浅い海へと移動していたのだ。
コバルトは目を閉じ、まだ耳に神経を集中させている。
あの頭の中には、どんな考えが渦巻いているのだろうと思うことがある。
きっと陸上の人間には想像もつかないことがらに違いない。
「トルク、目が覚めたのか?」
僕はもちろん何も言わず、コトリとも音を立てていないのに、コバルトは気づいたのだ。僕と視線を合わせた。
「うんコバルト、潜水艦を見つけたんだね。起こしてくれればよかったのに」
「邪魔だから、寝かせたままにしておいたのだよ」
「忘れたのかい? 僕は小隊長なんだよ」
「おお、これはこれは小隊長殿。失礼をばいたしました」
とコバルトは言ったが、棒読みもいいところだ。
「現状を報告してよ」
「我々は、あれから10キロばかり北西に移動している。そして小隊長殿は『戦闘的お昼寝』からお目覚めになったばかりだ。コーヒーはいかがです? それともオレンジジュース?」




