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「ふうう……」

 数分後、僕はヘルメットの中で息をつくことができた。

 ボビーは身をひるがえらせ、ライトの光の外へ姿を消したところだ。黒い体は、夜の海中へあっという間に見えなくなった。

 コバルトが感想を述べた。

「日本人も、あんな風に物分かりがいいとありがたいのだがな」

「でもボビーを退治したわけじゃないよ。漁師や水兵が攻撃を受ける可能性はまだあるよ」

「そうではなかろうよ」

 とコバルトは平気な様子だ。

「なんで?」

「奴の腹の中の胎児は相当に大きかった。一次的に食い物が足りなくて、ここらまで遠征してきたのだろう」

「じゃあ出産を済ませたら、子を連れて元の海域へ帰っていくのかい?」

「それを期待したいね」

「ふうん」

 僕がライトを消す直前、首を曲げてコバルトがのぞき込んできた。

「おやトルク、よっぽど不安だったのか、えらく安心した顔をしているな。あんな奴に私が負けると本気で心配したのかね?」

「偉そうなことを言っても、爆雷の衝撃で気を失ったことが2回ぐらいあるじゃないか。あんただって無敵じゃないんだよ」

「そうかい? それはそうと、さっきのジジイはどうしただろうな?」 

 それは僕もこの瞬間まできれいに忘れていた。

 やはりボビーへの恐怖で心が一杯だったのだろう。

「漁船のところへ戻れるかい?」

「少し難しいな。エンジンは壊れていて使えない。ジジイはきっと帆を張るだろうが、海流に流されもする……。おや?」

 コバルトは奇妙な表情をしている。何秒間かマスクを外し、海水の匂いを直にかいだようだ。

「どうしたんだい?」

「ボビーに体当たりされて、小舟から燃料が漏れたようだ。たどっていけるかもしれないぞ」

 この後はコバルトの言う通りになった。

 だけどすぐに、コバルトは変なことを言い始めたんだ。

「トルク、船はもうすぐそこだが、ライトはつけるな。少しまずい」

「どうして?」

「私の言ったとおり、ジジイは帆を張ったようだ。それでも港へ戻るのではなく、目的を持った航走をしている」

「目的って?」

「他船とのランデブーだ。どうしてこんな暗い夜に漁をすると思っていたが、そういうことか」

「なんで?」

「少し待て」


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