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 トラブルの主は潜水艦の形をしていた。

 ただ日本艦ではなく、合衆国艦だったのがせめてもというところか。

 パールハーバーへ向けて帰投しつつあり、潜行していたのが、ここらで浮上する気になったらしい。

 コバルトが言うには、僕の自殺狂言で気が散り、かつ遠くにいるゴーストの音紋も気になっていたらしい。

 自分たちのすぐ真下にいる潜水艦には、まったく気付いていなかったのだ。

 あんなに大きなものが、モーターとスクリューをゴウゴウ回していたのにね。

「だが気が付かなかったのだから仕方がなかろう。ゴチャゴチャぬかすな」

 ゴーストを追えという僕の指示で、コバルトは嫌々ながら尾を動かしかけていたのだが、そこで、

「いやに突然、波が盛り上がり始めたぞ」

 と思った時には遅かった。

 潜水艦のへさきはナイフのような形をしている。その両脇にはアンカーがある。

 潜水艦が僕たちに追突し、潜水服とコバルトをつないでいるパイプがそのアンカーに引っかかってしまい、アッと思った時には、まるでワナにかかったタヌキのように身動きができなくなっていたんだ。

 アンカーとはちょうど釣針のような形で、尖った返しがついている。潜水服のパイプが、そこにハマり込むちょうどいい直径だったんだ。

「トルク、これはまずいぞ」

 僕とコバルトは、まるでゴミ袋のように潜水艦に引きずられる形になった。不自由なんてものじゃない。    

「パイプを外せないかい?」

 腕を伸ばし、コバルトは努力をしているようだが、

「だめだ。私の力でもどうしようもない」

「どうするんだい?」

「このままだとパールハーバーまで連れて行かれてしまう。また新聞記事になるぞ」

「そりゃまずいよ」

 僕もコバルトも、船首の波に、もみくちゃにされている。会話するのも難しいほどだ。


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