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それでもまだ笑い続けているので、僕は腕を軽く蹴飛ばしたほどだ。
「ああトルク、わかったわかった。ジャンケンとはこの場にふさわしく、真に真剣な勝負だな」
「うるさい」
「ジャンケンでいいとして、何回勝負をするのだね?」
「ええと……、3回」
「おやおや、人の生死をたった3回で決めていいのかね?」
だが何回やっても同じだ。勝つのなら勝てるし、負けるのなら負ける。
僕はライトのスイッチを入れ、コバルトの顔と手元を照らし出した。
コバルトのやつは、まだ笑っていた。
そして3回の真剣勝負。だがあっけなく、僕は連続して負けてしまったんだ。
続くコバルトの言葉は、まさに勝利宣言というところ。
「これでボガート大佐は、海の藻クズになると決まった」
「うるさい」
思わず僕はわめいたが、腹立ちまぎれにライトも消してしまった。
周囲は再び真っ暗になった。
しばらくの間、僕は、暗闇の中で自分の息の音だけを聞いていた。
魚雷の爆発音とは大きなもので、相当に離れていても耳に入る。
ホープ号の位置は、せいぜい10キロほどしか離れていなかったはずだから、まさか聞き逃すことはない。
じっと耳を澄ませていると、耳の底で耳鳴りでも始まりそうな気がしてくる。
爆発音はまだ聞こえないが、とうとう僕は我慢ができなくなってしまった。
「ねえコバルト」
「どうしたね?」
「もう一度勝負しよう」
それに答えるコバルトの声は、意外なほど穏やかだった。
「何度でも」
「じゃあ次は……」
「どんな勝負をするのだね?」
「クイズだ。この答えが分かったらあんたの勝ち。分からなかったら僕の勝ちだ」
「よかろう」




