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出会いと別れと記憶の断片。
事なきを得て暫く茫然と座り込んでいると皮袋からキノコが自ら出てきた。
持ち帰ったときの半分もない大きさになっている。
どうも魔力を使い果たしたらしい。
近隣調査Ⅲ魔物編によれば魔石の核があるらしい。
そして著者の見解では歪んだ時間と森の地脈を流れる魔力を受けて魔物化したのではないかと推測している。
朗報なのは彼らは友好的だとか…。
サクッとした事に尚更申し訳ない。
罪悪感を払拭したく償う方法を探して頭の中を掻き回す。
お隣さんのお家には地下室があった。
薄暗く適度に湿気があり環境は良いはず。
そう思い小さくなったキノコを袋に詰め直しお隣さんの家の戸を開く。
「こんばんわ」
もちろん返事などない。
そうあの日以、来人と会う事は無くなった。
「兄さま…お師匠さま…。」
最後に別れた日もこの地下室だった。
急に寂しさが込み上げる。
想いを甦らせながら地下室の扉を開く。
あえて灯をはよしておこう。