機を窺う。
リタもまた手枷をされて地下への階段へ連れて行かれる。
「お前も運が悪いよな、お姉さんとはココでお別れだよく見ておけコレが最期だ。」
今までお世話になったのに一言を感謝の言葉を伝えられてない……。
確かこの国の言葉で。
「あ……りが……とう。」
発音に自身は無かったので小声になってしまったと少し後悔をする。
言葉はメアリーに届いただろうか。
階段を降りて通路の奥まで進む。
通路の途中あちらこちらの壁は崩れ足元も悪い。
奥まで進むと異様な匂いが立ち込める。
死臭と腐敗臭と……。
牢屋に入れられた時にやっと先程の盗賊の言葉の意味が分かった気がした。
見ての通りこのままでは自然に帰ることは明白だった。
ただ何かしないと出来ることを探して観察して考えて……。
生き残る方法とココから出る方法と、幸い時間だけは沢山あった。
手枷があるので自由は少ないが動けなくも無かった。
まずは牢屋の中で衰弱している人ともう間に合わない人を区別し始めた。
生きる気力を無くす者、食事が与えられず衰弱する者、衰弱した後に体調を崩した者、間に合わない者。
手持ちの傷薬とキノコ入りの傷薬なら前者の2人は何とかなるかも?後者の2人は未知数だった。
出れる方法が確立できたら前者の2人も助けようと考えた。
今下手に動いて見張りの盗賊に見つかるのは
得策では無いと思った。
今は意気消沈したふりをしてやり過ごす。
機会はきっとくると信じて……。
石で敷き詰まった床の目地に赤い光が走る。
光は強弱を繰り返し異変は体で感じる程になっていた。
一瞬光が止んだ瞬間に地下道の石組みが軋み始める。
……ガガガドドドグラグラグラ
地下道の天井が一部崩壊する。
巡回警備の地下道や水路に配置されていた敵兵達が慌てて出口向かって駆け上がる。
その様子を呆れながら見送る。
人気がなくなった頃を見計らって容態の軽い二人にキノコ少なめの傷薬を飲ませてみる。
暫く様子を見ているとみるみる血色がよくなり僅かに希望が見えた様だ。
一人はリタに駆け寄り御礼をする。
「わたしはエミリー、あなたが助けてくれたのね。ありがとう。あなたのお名前は?」
もう一人はまだ回復が追いついてないようだった。
「……リタ。」
一度手を止めて答える。
キノコの量を増やした傷薬を試してみる。
今まで魘されていたはずが穏やかな表情に変わる。
こちらも助かりそうだ。
3人目はキノコ多め傷薬に解毒薬を混ぜて飲ませる。
こちらも血の気が戻ってくる気がした。
牢屋の中で出来ることも少なくなって来たので脱出方法を考える事にした。
先程の地殻変動の影響で監視の敵兵達は帰ってこない。
リタはどこか出る方法はないかと檻の周りを歩き回る。
ズドン……
再び大きな地響きを感じる、牢屋の石組みの壁が壊れて通路が露わになる。
城の地下には水路のほかにも通路があり、その一つが牢屋の壁の向こう側存在した。
「ココから出れるかなぁ?」
エミリーが瓦礫を片付けながら安全を確認して通路の向こうへでる。
リタは回復途中の子を介抱しながら壁に開いた穴から出て行く。
エドガーは異様な檻の様子を一つずつ確認している時にまだ足音を感じる程の活気のある檻が眼に入る。
「まだ動ける者はいるか?」
声を掛けるエドガー。
力尽きた少女が横たわる、一足遅かった様だ。
檻の鍵を壊して壁の穴を潜り足音を追う。




