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忘れられし都の錬金術師。  作者: 暁
目的を持たない旅人は居ない。
20/61

一夜を越えて。

眠い目を擦りながら朝露を集め消えかけた焚き火には薪の代わりの枝をくべる。

火が大きくなるまでお茶の準備をする。

メアリーはまだ夢の中だった。

皮でできた水袋を鞄から取り出す。

大きな葉の上にできる玉水を集めて皮袋に集める。

コレで2〜3回分のお茶ができそうだ。


焚き火の枝がはぜる音とともに目を覚ますメアリー。

ふと辺りを見回すと焚き火と切り株にティーセットが並ぶのを見てホッとする。

昨日まで散々だったと落ち込む。

気持ちは滅入りがちなのに傷の痛みだけでなく体力もすっかり快適になっている。

やっぱりリタの姿がない事に少し心細くなる。

目に見えるものを観察していると石碑には読めない文字が刻まれている。

別の国の言葉なのか駆け出しの冒険者にはよく分からなかった。

ティーセットの置いてある切り株に見覚えが…。

思い出すと少し青ざめる。

葉のついた枝を見つけたので生命力を感じて採取したはずが魔物化して追われる事になる。

まさかここにその切り株がある訳が…。

開いた口が塞がらない。


程なくしてリタが茂みから帰ってくる。

果物と木の実をスカートの集めて持って帰ってくる。

「おはよう!」

それに反応して頷くリタ。

相変わらず反応が薄くなる。

気にせずお茶と果物で朝食を済ませる。

まずは森の出る道を探さねば。

そう思いながら鞄にティーセットを詰め込む。

とにかく来た道をと反対の道を進む事に。

特に険しい道もなく森を抜ける。

そこには平原が広がり所々に大小の岩が露出している。

メアリーは鞄から地図を取り出す。

「ココは…どこだろう。」

目印になるものを探そうにも見当たらない。

リタが太陽の傾きを見て地図に指差す。

見上げて左手に太陽、森は左手。

背中が北とすればこの辺りではと推測した。

「どうして分かるの?」

メアリーが不思議そうに頭を傾ける。

説明したくてもこの国の言葉が上手く話せないので黙り込む。

「まぁ、いいか、この地図によれば北西に王都があるはずよ、まずは街道を探しましょう。」

メアリーはそう言いながら森に背を向け西に歩むを進める。

不安だ…。

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