おっさん、幼女に絡まれる
【36番目の婚約者候補が同僚の師団長だった件】でのイグニスとアリシアローズの出会いのSSSですが、別のサイトのお題で一人称と三人称の視点の混在というもので書きましたので、好まれないようでしたら、そのまま閉じていただきたいと思います。
検索除外をしておりますので、検索できませんが、シリーズ物としてはマイページから読めるようになっております。
◆おっさん、幼女に絡まれる
ここ近年、魔物の被害が拡大し、国はその対策として、騎士となる者の増員を決めた。普通であれば、最低の身分として貴族位が必要だが、この度国は重い腰を上げ、身分問わず騎士となるものを求めたのだ。
そのことにより、後に英雄と呼ばれる者が出てくることになる。
では、その英雄と呼ばれる者の物語を語ることにしよう。
後の英雄イグニスは冒険者として生計を立てていたが、冒険者とて全てが上手く事が運ぶ訳では無い。時を同じくして冒険者になった者たちの中でも、突出した者たちは既にAランクやSランクに昇級し、その名を国中に轟かしていた。
方やイグニスは未だにCランクだ。その年30歳。冒険者としては、進退を考える岐路に立たされる歳だと言っていいだろう。
Cランクの稼ぎなどその日暮らしがいいところだ。これが、あと10年若ければ、まだ己の成長に希望が持て、そのまま突っ走ることもできただろうが、イグニスの歳はすでに30歳。一流の冒険者であれば、30歳を超えてもまだまだ第一線で活躍できるであろうが、30歳でCランクとなれば、田舎に戻って畑でも耕した方がいいのだろうか、それとも王都で日雇いのバイトでもすればいいのだろうかと、悩むところだ。
ただ、イグニスに冒険者の才がなかったのかといえば、そうではない。イグニスが扱う剣は幼い頃に田舎に引っ越してきた老人が教えたものだ。それもその人物は騎士団長にまで上り詰めた御仁であった。奥方である老婦人は魔導師長を務めていた人物であった。その二人から教えを受けたイグニスは一流の冒険者になって当然だった。
だが、今現在のランクはCランク。これはどういうことなのだろうか。実はイグニスはとてつもなく不運を背負った男なのだ。
例えば今日は外せない大事な日という日に限って、土砂降りの雨が降っていたり、今日は思ってみない獲物を遭遇し大金を得れば、スリに遭い全額失ってしまったり、冒険者ギルドの昇級試験がある日は朝から鳥に糞を頭の上に落とされ、黒猫が目の前を横切り、大荷物を持った老婆が道端でうずくまっており、老婆を目的地まで届けてギルドに向かおうとすれば、道が突如として陥没し、地下道に落とされ、地下をさまようこと3日、やっと地上に出られたという感じで、昇級試験を受ける事ができなかったのだ。
運が悪いにも程がある。
そして、騎士になるために試験会場に向かっているイグニスがどうなっているかと言えば、どうやら人に絡まれているようだ。
短髪の赤髪に金色の目を困惑気味にオロオロとさせている躯体のガッシリとした男がイグニスである。
そのイグニスに文句を言っているのは金髪の長い髪を縦ロールに巻き、長い金色のまつげに縁取られた青い目を大柄なイグニスをにらみつけるように鋭い視線を投げかけている10歳ほどの幼女。
そうイグニスは幼い子供に絡まれているのだった。
◆
まじかよ。勘弁してくれよ。
俺は金髪碧眼の幼女の前で項垂れている。はっきり言って、これはお互い様だ。
確かに試験会場であるコロッセオの入り口に入ろうとして、入り口にある受付しか目に入っていなかったこともある。
俺に文句を言っている幼女が小さすぎて視界に入らなかったこともある。
それで、コロッセオから勢いよく出てきた幼女とぶつかって、その反動で幼女がひっくり返ってしまったことも事実だ。
その後直ぐに幼女を抱え起こし、土埃を払い、怪我の確認をして髪が乱れた事以外は問題ないことも確認した。
だが、幼女にとってはそれが大切だったらしい。
「わたくしの髪が乱れてしまいましたわ!責任をとってくださいまし!」
と言われてしまったが、この幼女の保護者はどこにいるのだろうかと辺りを見回しても、それらしき人物は見られない。
「このわたくしをこのように辱めて、ただで済むと思っていますの!」
どう見ても貴族の令嬢とお見受けする。面倒な子供に絡まれてしまった。
俺はこの状況を誰かに助けて貰えないかと辺りを見渡すが、俺と目が合えば、誰しも視線を直ぐ様反らし、足早に去って行く。
ああ、もうすぐ受付終了の時間だというのに、今回の機会を逃すわけにはいかない。
「悪いんだけどさぁ。俺は試験を受けにきたんだよ。話は後でもいいか?」
「よくありませんわ!」
駄目なのか。受付の人がもうすぐ終了だと叫んでいる。俺はこの幼少を無視することに決めた。
幼少の横を通り過ぎようとすれば、幼女は俺の足を掴んできて引き止める。俺は負けじとそのまま足を進めれば、どこにそんな力があるのか、幼女は俺の足を掴んだまま離れなかった。
「すみません。受付をお願いします」
俺はそのまま受付をしている男性に声を掛けると、勿論視線は俺の足にくっついている幼女に向けられる。これは人攫いではないからな!
「このオジサマがわたくしの保護者よ!これなら文句はないですわよね!」
俺の足を掴んでいる幼女からとんでも無い言葉が出てきた。ほら受付の男性も困っているじゃないか。もしかして、この幼女は騎士に成るための試験を受けようと、一人でここに来たのだろうか?
この幼女の親は誰だよ!さっと引き取りに来い!
◆
イグニスは己の足に逃さないと言わんばかりにしがみついている金髪の幼女の頭をガシリと掴み、思い切り投げ飛ばした。子供の扱いとしては如何なものか。だが、イグニスは幼女の周りに結界を張り幼女が傷つかないように気を使っている。
その時、幼女が飛ばされなからくるりと体勢を整えて、足から着地をする。イグニスを見る瞳は蒼の炎を宿しているかのように、光を帯びていた。
◆
許しませんわ!公爵令嬢であるわたくしをこのように扱うなんて!聖騎士の剣を持つ者のする行動ではではないですわ!
しかし、聖騎士の剣を持っているとなれば、それなりの家の者のはずです。この者を逃がすなど愚の骨頂。何が何でもわたくしの保護者として認めさせてやりますわ!
私は浮遊の魔術を使い赤髪の男に突進し、受付を終えてコロッセオの中に入っていく男の背中に張り付きます。
「ぐっ!首が!」
逃しませんわ!!
◆
斯くして、後に英雄と呼ばれることとなる男と魔女と呼ばれる幼女が出会った。出会いから普通では無かった彼らは更に嵐を呼び込み国を巻き込んで行くのであった。さて、続きは別の日に語ることにしよう。
アリシアの外見がおかしいという件につきましては、黒髪、黒目ではアリシアとバレてしまうので、変装してしている状態です。
普通であれば、作品として怒られるような書き方ではありますが、お題にそったものとして、ご容赦いただきたく存じます。
読んでいただきましてありがとうございました。




