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第五十四話 完結

リュウが住む城のまわりは、あのときと変わらず明るくのんびりした空気に包まれていた。


城で冷たくされるのではないかと私はドキドキしたけど、みんなあたたかく迎えてくれた。

リュウのお妃さんや娘、息子も嫌な顔をしないから私は驚いた。いい人たちだと思えばいいのか?それとも???


まあいいか。


その晩、私はリュウと寝た。

彼とは初めてだったのに、懐かしい感じしかしなかった。

そのまま少し眠って、ふと彼に揺り起こされた。


「ドラゴンの卵が孵ったよ」


彼は私の体を抱きしめながら言った。


「どうしてわかるの?」


「僕がグレンとつながってるから。

グレンには見えない?」


「見えない」


「そっか。それなら、もうすぐ窓からでも見えるようになるかな…?」


彼は私の体を離さずに窓際までゆっくり歩いた。

私は落とされないように、しっかりつかまった。


「そろそろ下りたいけど」


「ダメだよ。僕はこのままがいい」


彼は私を抱えなおした。

しばらくして


「ほら、始まったよ」


窓から心地よい風が吹いてきた。

夜明け前の暗闇だ。

すぐ近くの畑も見えるか見えないか。そのとき


「すごい…」


たくさんの光の粒が空に吹き上げられた。

それは白とも言えるし、色がついているようでもあり何色と表現したらいいのかわからない光だった。

ともかく美しいことは間違いない。


光は広がり、夜空が月夜のように明るくなった。

一瞬後、人々のどよめきが遠く聞こえてきた。


田園の向こうにいくつかの街が見えて

遠く遠く、景色はぼやけていき

その先に、王様のお城があるはずだった。


そのあたりから再び光のしぶきが空に放たれた。


「産まれたばかりのドラゴンが、光のエネルギーを吐いているんだ」


リュウが言った。


「産まれてきて嬉しいと言っているんだよ」


「よかったね」


「火のドラゴンじゃなくてよかった。きっと王様にも飼えるよ」


「あんな光を浴びたら死にそうだけど」


「人に浴びせるような獰猛な子じゃないよ。めったに吹かないだろうし」


あとで聞いた話だけど、王様のお城では

ドラゴン誕生の直前、魔法使いがみんなに

目をつぶって耳をふさぐようにと言ったそうだ。

目を開けてしまった人は、あまりの明るい光に

目をやられたということだった。


だけど王様は、子ドラゴンを罰したりせず、かわいがっているという。

目をやられた人はかわいそうだけど、

動物に理解のある人が王様でよかったと私は思った。


ドラゴンはおとなしいお利口な子で、魔法使いによると雌だそうだ。ごはんをもらっているけど、鳥を見つけるとつかまえて食べちゃうらしい。


リュウが今度、王様に会いに行くときには

私も(愛人だけど画家として)一緒に行きたい。

そして子ドラゴンに会いたい。


かつて英雄が海に投げ入れて、リュウと私が

漁師さんと一緒に引き上げた卵から産まれたドラゴンだもの。愛着がある。


「そういえばリュウの先祖の英雄って、何をして英雄になったの?」


あるとき私は聞いた。


「知らない。村に来たときはもう英雄って言われてたそうだよ」


「有名だったの?」


「うん。王様の先祖の、兄さんだかおじさんだかだったらしいよ」


「なにそれ」


「本人の説明がいい加減だったみたいだよ。

同じ名前だから、どっちかわからないんだって。

二人とも戦死したと思われてたら、生きてたって。

ドラゴンをたおした話があるのも二人一緒」


「ドラゴンと戦ったから英雄じゃないの?」


「そうは言われなかったけどね」


「ちがうんだ。おじさんだかお兄さんって話は、誰に聞いたの?」


「おばあちゃんと王様。

おばあちゃんは王様のおじさんだと思うと言ってたけど、王様はお兄さんのほうじゃないかって。

おじさんの子孫がぜんぜん別の場所で見つかったらしいから」


「なにそれ」


リュウのやつは、先祖譲りでいつだっていい加減なんだ。

だけどそれでいいかな、と私は最近思う。




読んで頂きありがとうございました。

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