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第五十二話 十年後

「グレンは一人が好きだね」


リュウは言った。


「わからないけど」


私は答えた。


「お客さんも来るし、外に出れば人はたくさんいるし、一人って感じがしてない」


「森にいたときは?一人だと思った?」


「どうだっけ…覚えてないかも」


リュウはなにかと私の気持ちを聞こうとした。

ベリーが街の服屋のおじさんと結婚した話をしたら


「グレンは結婚したいと思う?」


と聞いてくるし、自称16歳になったセーラが

好きな人がいるって話をしたら


「グレンはどんな人が好きなの?」


と聞いてくるし。

答えようがない。

どんな人が嫌いか即答できるけど

どんな人が好きか言いにくい。


あれ?

なんで言いにくいんだろう?みんな普通に言ってるのに。


ベリーたちが話しているのをなんとなく聞きながら

私は考えた。


だって、私はうるさく言わない人が好きだから。それでいて本人には真面目でいてほしい。

そんなこと言えるわけないじゃない。


ていうか好きな人の前にまず、私は本当に一人が好きなのかどうか、リュウに言われて自分でも気になった。

一人が好きだなんて言うのは申し訳ないことだと思ったから、さっきはごまかしてしまったけど。


一人は快適だ。

快適を好きと言うなら一人でいることは好き。


でも私の絵を買ってくれるお客さんがいなければ

私は生活できないのだし、画材を売りに来る問屋さんが来なくなったら自分で調達しなきゃいけないから絵を描く時間が減ってしまう。


街に出ても食料品を売ってくれる人がいなければ

それもやっぱり生活できない。


家とアトリエを一人で借りられるだけのお金が入らなくなったら、誰かと一緒に住ませてもらうしかない。


だから私は一人が好きだとは言えない。

そんなことを言ったら、みんなに見放されそうだ。

見放さないでくれ!


だけど本当は、一人でいるのは苦ではない。

プライベートが確保されているのが好きって

言えれば、ぜいたくかな。


つまり、ぜいたくしたいって言うのと同じ気持ちで

私は一人で暮らしたいって思う。


いま私は、ぜいたくできているんだ。


カーラとセーラの成長を見ていると

私も子どもが欲しいと思ったりする。

そうしたらもう、一人じゃなくなっちゃうけど…。


カーラとセーラは、魔法の勉強を始めてからは

私のことをグレンと呼ぶ。

良い変化だ。

パパと呼んでいたのは旅の間だけだった。さんざんたかりやがって。


あの旅は何だったのだろう?と時々思う。


その度に、あれは無駄ではなかったと

私は自分に言い聞かせる。

嫌な故郷から出るきっかけになったから。


盗賊村を出て森で一人、自給自足の暮らしをしていた私は、一人で森の外に出る勇気がなかった。

なぜなら当時の私は、森から一番近い町しか外を知らなかったから。

外とは、その町と同じ意味だった。


だけどその町は妹を過労死させた町で、私はそれを恨んでいた。憎んでいた。故郷の盗賊村よりもっと嫌っていた。


まさか、その町を通らずに外へ行けるなんて

思いつきもしなかった!リュウがいなければ。


私はリュウに感謝している。


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