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第四十八話 ライの嘘

「ではこれから夕食の準備をしてまいります。用意ができたら声をかけます」


ライが言った。するとリュウはすかさず


「ライが夕食の準備をするのですか?書類の係なのに?」


と突っ込みを入れた。


鋭いと私は思った。

さっきの言葉は、うっかり自分がやると言ってしまったように聞こえる。

もし料理人たちがどこかに隠れていてこっそり食事を作ってくれるなら、あのような言い方をしないのではないか?


「はい」


ライは開き直ったように答えた。


「料理人は?」


「出払っています」


「病人を見捨ててどこへ行きますか?」


そうそう、その通りだ!

領主が病気だというのに、料理の下手そうな書類係に食事を作らせるなんてひどい。つまり、そんなはずはないってことだ。

嘘だってことだ。


リュウは食い下がった。


「そういえば医師は?なぜ医師もいないのですか?」


「さあ?知りませんよ」


「知らないって、おかしいでしょう。

領主さんは本当は、病気ではないですね?」


「疑い深い人だ」


ライは不快そうな顔をして、リュウの質問に答えなかった。


「つまり、トラブルが起きたのですね。

不在の皆さんはクビになったのですか?それとも怒って出ていったのですか?」


「何を言う」


ライは怒ったようだった。でも表情がさらに険しくなっただけで殴りかかったり怒鳴ったりはしなかった。


「領主さんの執務室を見せてもらいます。案内してください」


リュウが言った。


「ひとの部屋に勝手に入ってはいけません」


「では王様からの手紙を確認させてください」


「ひとの手紙を勝手に読んではいけません」


「でもライは勝手に読みましたね」


二人は睨み合った。


私にも言いたいことがあった。

たとえば今のやり取りで、ライが家来に変装した領主ということはありえないとわかった。もし領主本人なら、とっくに『私がじつは領主だ』と名乗っていなければ不誠実すぎる。

それに、ライが領主を尊敬していないこともわかった。もし領主を大事に思っているなら、留守の間に勝手に病気だとか言わない。留守なのに、いるふりなんかしない。


だけどライに従者と誤解されている私には、口をはさみにくかった。ライは私を見もしなかった。

私は黙っていたけど、リュウの味方だからねと

心の中で言った。


「ライが何を隠しているのか、僕に正直に教えてください」


ライは何も答えなかった。するとリュウは


「ライも疲れましたよね。どうぞ休憩してください」


と急に優しい口調で言った。


「…夕食の準備をします」


ライはそう言って建物の奥へ消えた。彼の姿が見えなくなるとリュウが振り返って私を見た。


「僕は彼の後を追ってみるよ」


「えっ?」


「彼が何をしようとしているかわからない。怪しいと思う」


「そうね。どっちみち、ここでじっとしているのは良くないね。

追いかけてみよう」


「うん。

でも僕だけで行くよ。グレンはお城の外に出てくれる?僕たち二人ともやられちゃったらまずいから。

僕が無事だったら、明日、門の外で合流しよう」


「わかった。気をつけて」


リュウを見送ってから私は城の外に出た。そっと門の外に戻りながら、ライが何度もリュウの質問をはぐらかしたことを思い出した。


王様が手紙を送らなければよかったのに。そうすればライは、私たちが来る前に準備できないのだから、もっと簡単に正体を暴くことができた。


でもしょうがないか。王様はこんなことになっているなんて知らないのだから。


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