表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/54

第四十四話 リュウと故郷

夕方になってしまったので、リュウと私は浜に向かって街道を急いだ。

だけど夕日がすっかり沈んだとき、リュウが急に立ち止まった。


「グレン、後ろにいると見えなくて心配だからこっちにおいでよ」


言われるまま私が隣に行くと、彼は

急に私を抱きしめた。


「どうしたの?」


私は彼を抱き返して言った。


「家や故郷がいちばんじゃないって

僕たち、わかっていたのに

同じ間違いを繰り返してしまったよ」


「ルナのことね」


「うん」


「私も同じこと考えてた」


リュウが私と同じことを思って

同じように傷ついていたことがわかって私は嬉しかった。

彼の手が私の背中を撫でた。


「グレンに、浜に着くまでに僕と一緒に考えて欲しいんだ。

僕が故郷に挨拶しに寄るべきか、それとも

直接新しい任地に行くべきか」


荷車を押す力は弱くなるけれど、私たちは

手をつないで歩き出した。


「考える余地がなくない?」


私は言った。


「どうして」


「リュウが帰ったらトラブルが起きる予感しかしない。

帰っても1日か2日しかいられないよね、任地に行かなきゃいけないから。

みんなと別れたくなくなるかもよ」


「そうだね」


「リュウが村を離れたくなくなるだけじゃないかもよ。

任地に、村の仲間が何人もついていっちゃうかも。

そしたら困るでしょ?」


「まあね」


「村を捨てるなって怒り出す人もいるかもね」


「たしかに。

実はね、旅に出るときに引きとめられたんだ。

ぜったい出ていかないでって言われたり、荷物を隠されたりね。

妨害するために僕の足を切ろうとした人もいたよ」


「えっ!

激しすぎる…」


「それでも僕は旅に出てきたけどね」


「うわー。リュウは強いな」


思わず感想を口に出したけど、リュウは

どうかな、と首をかしげた。

私は言った。


「結局、リュウが帰りたいかどうかだけだよ。

帰りたいなら、嫌な思いをするかもしれない覚悟で帰ればいい。

帰りたくないなら、帰らなくてもいいと思うし」


すると彼は意外そうに


「グレンは故郷が嫌いなのか?」


と言った。


「嫌だ。

こんなこと言ったら怒られそうだけど

みんな嫌いだし、二度と会いたくない」


私が正直に答えるとリュウは苦笑した。


「どうしてそんなに嫌いになったの?」


「妹が死んだとき、私しか悲しまなかったから」


「大切な妹だったんだね」


そう言ってリュウは私の手をぎゅっと握った。

そうして少し私の表情をうかがうようだったけど

彼が何を確かめようとして私を見ているのか

私にはわからなかった。


「リュウはさ、故郷で大切な人はいるの?」


私はなにげなく質問した。


「村の仲間は、みんな大切だよ」


「リュウならそうだろうけど、特別な人は?」


「グレンが妹を大切に思ったみたいに、だよね。

それはでも僕は、やっぱりみんなかな。

みんな家族みたいなものだったし」


「親とかきょうだいとかは?」


「僕は別のところで育ったからね、でも毎日会ってたよ」


「ふぅん?」


「まあ、いいよ。

決めた、僕は故郷に帰らないことにする」


リュウが決意したと言うから、私は

頷いてもうそれ以上は質問しなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ