第四十三話 ベリー、また会う日まで
「これを彼女の取り分として渡す予定でした」
最後にリュウはそう言って、金銀を入れた袋を一つ
そっとルナの死体のそばに置いた。
私たちはお城をあとにした。
黙って大通りをしばらく歩いたところで
「待って」
とベリーが言った。
「あたし…やっぱりこの街に残る。
ルナがここにいる気がするし…。
カーラとセーラもここにいるし、大きい街だからきっと私の仕事もあるはず」
「迷いはないか?」
リュウが言った。
「うん。あたし決めた」
ベリーが答えた。
「じゃあ、最後に3人で食事しよう」
リュウが言って、私たちは少し高級そうな店に入った。
私たちは他の客と同じように静かに食事をした。
食べながら私はルナのことを考えた。
私が肖像画に気付かなければ彼女は死なずにすんだのだろうか?
だけど、生きていたとして彼女はどうしただろう?
また行き倒れになって、助ける人がいなければ今度こそ死んでしまうよね。
リュウは領主になるのだから、ルナは彼とは一緒に行けない。
ベリーはその時点ではリュウについていく予定だったから、ベリーと一緒に暮らすこともできない。
じゃあ私?
私についてくる?
たしかに私はこれからどうするか決めてないけど。
たとえば私がどこかの町で道具屋を始めるとして、ルナが手伝う?べつにそれでもいいけど、これは彼女にとって幸せな生き方じゃなくない?
かつて娘の死を知ったとき、英雄もこんな気持ちだったのかな。
きっと彼は私よりもっと悲しんだし、もっと後悔したよね。
ドラゴンの卵を海に捨ててしまうほどの悲しみと怒り。
その悲しみと怒りをようやく解いたはずなのに、同じ失敗を私たちはしてしまった。
食べ終わるころ、これからのことを私は考え出した。
これだけの金銀を持って動くのだから
私たち、じつは怖いくらい危険なのか。
汚い寝袋に隠したお金ごときで、おじさんが
気を失うほど殴られる事件もあったわけだし
私たちも殺されないように気をつけなきゃ。
漁師さんたちが取り合いをしないようにも、気をつけなきゃいけない。
「そうだ、今さらだけどベリーに頼みがあるの」
私は言った。
「なあに?」
「このあと、袋を80枚くらい買ってくれない?
あのとき手伝ってくれた漁師さんの人数をちゃんと数えてなかったけど、たぶん60~70人いたと思うんだ。
けんかにならないように、お礼を
前もって一人に一袋ずつ渡せるように
準備しておきたいと思って」
「そうね、それはいい考えだわ」
食事のあと私たちはふたてに別れた。
宿の部屋で合流することにして
ベリーが袋を買いに行っている間に、
リュウと私は部屋で金と銀の粒を数えた。
ベリーが部屋に来て、3人で急いで袋詰めした。
リュウがベリーの取り分を渡そうとしたら
「でも、あたしはいらないわよ。
袋を買ったあとのお釣りももらったし。
もともとあたしの取り分はない予定だったから」
と遠慮する。リュウは
「これから住むところを買うか借りるかしなきゃいけないし、財産を持っておいたほうがいい」
と言って彼女を説得した。
私もリュウに賛成した。
ベリーは
「わかったわ、二人ともありがとう」
と受け取った。
袋詰めが終わったら、本当にベリーとの別れの時がきた。
「ベリーがさ、声をかけてくれなかったらあのとき私たち、大雨の中で野宿するところだったよね」
「そうだよ、ベリーは僕たちの恩人だよ。
それにベリーと一緒に旅ができて楽しかったし
ベリーの優しい気持ちのおかげでルナにも出会えた」
「ありがとう、あたしもリュウとグレンと一緒に旅ができて、いろいろあったけどすごく楽しかった」
ベリーは目頭をそっと押さえて、リュウと私を順番にハグした。




